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少女

 次の日の朝、目が覚める。

 何もすることがない。

 出血のためか未だに頭がボーッとする。

 

 看護師が朝食を運んできた。

 ついでに看護師に話しかける。


「あの、いつ退院出来ますか?」   


「1周間は入院してもらう形です」 


「長くないですか? 俺はもう大丈夫なんですけど」


「安静にしておかなければいけませんので」


 クソ、なんでこんな何も無いところで時間を過ごさなきゃいけないんだろうか。

 あーあ、何時からだ?俺の人生が狂ったのは。


 それからなんだかんだで俺は看護師から話を聞いた。

 俺がこの病院に運ばれた経緯は長い間部屋に引きこもっていた為、何かあったんじゃないかと心配した大家が鍵を開けて入った。

 そこで風呂場に倒れている俺を発見して、この病院に緊急搬送されたようだ。

 

 まったく余計なお世話だっつーの。

 入院費払わないくせに無責任なことしやがって。

 

 話を聴き終えて、看護師は部屋を後にする。

 外の景色を眺めていると少女が目の前に現れた。

 その少女は俺と同じく点滴が打たれていた。

 移動式の点滴スタンドが手に握られ、直方体の様なものを脇で抱えていた

 

 「なんだ? 餓鬼んちょ」


「お兄さん一緒にゲームしない?」


 少女はそう言ってジェンガを見せてきた。

 ゲームか。

 ――悪くない

 俺は特にすることもなく暇だったため少しだけ付き合うことにする。

 体を起こして、横に置いてあるテーブルにジェンガを積み重ねた。


「なんで此処に来たんだ?他に人もいただろう?」


「さっき話声が聞こえたから」


「お前何歳だ?」


「11歳」 

 

 元気よく言った。

 その年で入院か。

 重い病気なんだろうか。

 何故か少しだけ不思議な気持ちになった。

 いや、気のせいだろう。

 

 それから少女とゲームを進めていくが大人気なく俺は勝った。


「あーあ、負けちゃった。もう一回!」 


 しばらくゲームに付き合った。

 少女は勝つことが出来ず、負けるたびに再戦を申し込んでくる。

 ――飽きたな。

 これは一回負けてやらないと永遠に付き合わされるパターンだ。

 俺はバレないように、さり気なくジェンガのタワーを崩した。

 

 すると少女はニッコリと笑顔でいった。


「やった! 私の勝ちだ!」


 その表情は本当に嬉しそうだった。


「もう一回!」 


 あれ?

 困ったものだ……。

 だから子供は好きじゃないんだ。

 流石に俺は新しいゲームを提案をする。


「飽きたな。他のゲームをやらないか?」


 そう言うと、少女は何か考えるような素振りをして、病室から出て行った。

 

 しばらくして少女は小さな手に何かを握りしめて戻ってきた。

 

 トランプだった。


「おいおい、2人でトランプやるのか?」


「うん。大丈夫だよ。1人でもできるし」

 

 あぁ。一人トランプな。

 俺もよくやってた。

 ってそうじゃなくて、こいつはずっと一人で遊んでいたのだろうか。

 親は居ないのだろうか。


「仕方ないな。少しだけだぞ」


 少し複雑な気持ちになり、ゲームに付き合うことにする。

 それに良い時間潰しにもなるしな。

 

 しばらくして休憩をとることにした。


「そういやお前、名前なんて言うんだ?」


「高本 さき」 


「お兄さんの名前は?」


「朝比奈 そうだ」


「蒼お兄ちゃんだね! ねぇ。明日も此処に来ていい?」


 変に懐かれてしまった。

 どうしたものか。


「お前友達居ないのか?」


「去年、死んじゃったんだ……」


 咲は少し悲しそうな表情を浮かべた。

 俺はなんだか聞いてはいけないことを言ってしまったようだ。

 この病院に歳の近い子供もそう多くはいないだろう。

 周りの入院患者は歳を食った老人がほとんどだった。

 

「変なこと聞いたな、悪いな……」

 

「いいよ。大丈夫。気にしてない」


 彼女は無理やり笑顔を作ったような顔をしていたのが、少し心に刺さった。

 

 あぁ! もう! しょうがねぇな!!


「――いいぞ、いつでも来い」


 咲はとびっきりの笑顔を見せた。

 それから咲は鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。

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