始まり
血の表現が少しあり、苦手な方は注意です。
「つまんね」
自分しか居ない狭っ苦しい部屋で一人呟いた。
パソコンをシャットダウンして、後ろに倒れる。
長時間座っていたため足が少し痺れるが、特に気にもしない。
午前5時。
昼夜逆転した生活をおくっていた。
少し前に摂取したアルコールの酔いはすっかりと覚めていた。
カーテンの隙間から見える朝の日差しが鬱陶しい。
体を起こし、昨日買ってきておいた菓子パンの袋を開けて齧る。
一口、二口噛むと、口の中の水分を持っていかれた。
コップを取り出し、水道から水を汲む。
首都圏の水はいくらか苦味があり、不味かった。
パンを食べ終え、散乱した部屋の中から服を見つけ、ジャージに着替える。
すると玄関の扉を叩く音が聞こえた。
恐らくここのアパートの大家だろう。
きっと家賃をしばらく払って居なかったため取り立てに来たのだ。
そんなことも放って置いて俺は寝ることにした。
――どれくらい寝ていただろうか。
頭が痛い。
俺は玄関に行きポストの中身を見た。
数々の請求書をみて俺は愕然とする。
だらしなく小銭で膨れた財布の中身を見るが、千円も残っていない。
「疲れたなぁ」
狭い部屋に声が響いた。
このまま生きてもどうしようもないな。
いっそ終わらせちまうか。
俺は命を経つ覚悟をして、キッチンに向かい包丁を取り出す。
――思えばつまらない人生だった。
右手首に包丁の刃をあてる。
ふう……。
人生最後のため息を吐き、包丁をそのまま勢い良くスライドさせた。
右手首の組織を大きく傷つけた包丁は、カランと音を立てて落ちる。
痛みを堪え、ポタポタと血を垂らしながら風呂場へと向かい、残り湯に右手を腕まで突っ込む。
――何故か気持ち良かった。
湯船はすでに大量の血で赤く染まっていた。
目を瞑り、やがて薄れていく意識に流された。