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98話 魔道士育成計画


 次の日の朝、シンシアとサラは準備を済ませてルーさんの元に向かった。


「おっ! それじゃあ行くっすか?」

「ルーさんの好きな時に出ていい」


 ルーさんは自分の荷物を抱き抱えると、ゆっくりと立ち上がり部屋の真ん中に立った。


「それじゃ、行くっすよ!」

「何をするんだ?」

「転移っす!」


 ルーさんが地面を軽く足で蹴ると、床に大きな魔法陣が現れて3人を光で包んだ。


◆◇◆◇◆


「さ、寒いっ……」


 転移先はあの写真で見た施設と同じ建物。そして白い雪が降っていてとても寒い。


「すぐ中に入るっすよ〜、中は暖かいっすから」


 ルーさんの後ろをシンシアとサラは周りの景色を見ながら付いていった。

 分厚い扉の中に入ると、確かに外よりは確実に暖かい。入ってすぐは玄関になっており、その横に小さな受け付け窓口がある。ここで訪問者の管理やらなんやらをしているのだろう。


「セシリータさ〜ん! 居眠りしてないで起きるっすよ! じゃないと新しい入居者が逃げちゃうっすよ〜!」


 窓口の奥で椅子に座って眠っている茶髪の女性が見える。ルーさんの声にピクンと反応して少しずつ身体を動かし始めた。


「んん〜……もう……その手には乗らないよ……」


 と思いきや、再び別の方を向いて眠ってしまった。


「あの人はセシリータさんっす。いつも寝てて不真面目な人っす」

「ちょっ!? ほ、本当にいるの!? 勝手に変なイメージ植え付けないでよっ!!!」


 悪意のある紹介に飛び起きたセシリータさんは、窓口まで飛び込んできてシンシアとサラを見つめて硬直した。


「……本当に来たのね」

「どうっすか?」

「まさかルー、アンタ詳しく説明しないでここに連れてきたんじゃないでしょうね?」


 ルーは口笛を吹きながらどこか遠くを見つめ始めた。


「はぁ……アンタっていつもそうね。

 ごめんなさいね、2人共。私が代わりに説明すると、この施設は優秀な魔法使いを目指す人を育成する施設なの。それで具体的にどういう活動をするのか、なんだけど……」


 そこでセシリータさんは言葉を止めて玄関の外を見た。


「あ、丁度今帰ってきたわね」

「?」


 振り返るとボロボロのローブを着た2人組がセシリータさんに手を振っていた。


「あんな感じで、戦争が行われている地域の最前線に行って被害を最小限に止めつつ、戦争を終わらせる事も目的なの」

「戦争を終わらせるって……たった2人で?」

「一流の魔法使いを目指す者としてはそれくらいできないと、ってこの計画を立てた人がね……それでも物好きは参加してくるんだけど」


 なるほど。ということは俺とサラは何も聞かされずにルーに連れてこられた可愛そうな人達、ということになっているのだろう。


「引き返すとしても止めないわ」

「いや、俺はこの計画に参加する。強くなりたいんだ」

「……最悪死ぬのよ?」

「構わない」


 どうせサラがいるんだし、それに他にも強い魔法使いは沢山いるのだろう。それで生きて帰ってくるのが当たり前の世界ならば、俺はそれに従うだけだ。


「命知らずね……若いのに……お母さんはそれで大丈夫なんですか?」

「お母さんっ……!」

「ちがっ、この人も参加者! 俺のお母さんではないから!!」

「そ、そうだったんですか!? すみませんっ!」


 まあでも……お母さんと間違われても仕方ないよな。だって大人と子供がいるなら親子としか考えないし。


「この子はシンシアちゃんで、私は保護者のサラです」

「サラさんは女神なんすよ!」


 ルーが何の躊躇も無く、サラが女神だということを明かしてしまった。

 その瞬間、セシリータさん含め後ろを通っていたボロボロのローブを着た2人組まで時が止まったように動きを止めた。


「……女神……?」

「そうっす! だから主人サマに伝えた方がいいと思うっすよ?」

「…………」


 セシリータはしばらく硬直したままだった。


◆◇◆◇◆


「す、すみません。すぐ伝えてきます」


 やっと思考を取り戻したセシリータが引き出しを開けて何かを探し始めた。


「えぇっと……こ、この部屋がシンシアさんの部屋の鍵になります。それと……女神……様……は…………」

「ほらまた寝てるっす!」

「ね、寝てる訳じゃないから!」


 流石に大きな衝撃を受けたみたいだな。


「女神様は……その、ルーについていってください」

「分かりました!」

「おぉっ! 良い返事っすね!! 主人サマの元に早速行くっす!」

「おぉ〜! それじゃシンシアちゃん! 元気にしててね!」


 ルーとサラはトタタタ〜とどこかへ走っていった。


 その場のシンシアとセシリータ、そして背後で未だに固まっている2人組はその後ろ姿をただ見つめていいた。


「あっ、じゃあ俺はこの部屋に行けばいいんだな」

「う、うん。番号が書いてあるから、その部屋の鍵を開けてね」

「ありがとうございました」


 一先ず意識を取り戻して自分の部屋に行くことにした。

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