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63話 精神的ダメージが取れない


「……はぁ〜〜…………」


 無駄に疲れたせいでシンシアはまだ元気が出ない。

 体調不良として学校を休んで、しばらくベッドの上でボーッとしていた。


「まあ、そういう事だサタナキア。やりすぎ」

「やりすぎかな〜?」

「二人共部屋から出ていってくれ……疲れてるから……」


 ゼウスとサタンがシンシアの部屋で談笑している。物凄い状況ではあるのだが、シンシアは本当に疲れている為1人になりたいのだ。


「うちのサタナキアがすまなかった。何か簡単な願いを叶えてやろう」


 簡単な願い……か。

 シンシアは少し興味が出て考えた。


「じゃあ最強の魔法使いにでもしてくれよ」

「ん? もうなってるじゃないか。この世界で神とか悪魔を除いたらシンシアちゃんが世界一の魔法使いだぞ」

「俺が?」


 自分がこの世界で最強の魔法使いだと思った事はない。クラリスの方が魔法では長けているだろうし、そもそも世界一の魔法使いになっていたら今頃色んな人から尊敬されている。


「凄いけど知名度が低いんだろうな。それにまだ魔法を完全に使いこなしている訳でもないし、そろそろ旅に出てみても良いんじゃないか?」

「旅かぁ……」

「使い魔が居れば楽だと思うぞ」


 確かにベネディの背中に乗れば楽なんだけど、というかベネディがいるだけで食料にも困らないし寝床にもなるから困る要素が見当たらない。

 しかし、今の状況で旅に出るのは少しキツい。というのも精神的ダメージを負っている今、しばらく休みが必要だ。


「まあそれはいいとして。願いは何も思い付かないから何か俺に得がある事してよ」


 気だるげに寝返りを打ってゼウスの方を向いた。


「サタナキアの胸でも揉むか? デカいぞ」

「……やめとく」


 期待した俺がバカだった。

 シンシアは壁の方に寝返りを打って眠りについた。


◆◇◆◇◆


 昼頃に目を覚ますと、ゼウスが昼食を作っていた。


「なんで……?」

「ん? 家に誰もいないんだし、作ってやろうと思ってな」

「いいよ別に。適当に買いに行くから」


 大人に変身して買い物すれば何も問題は無いのだから。


「まあまあ。作ったら帰るからゆっくりしよう」


 仕方なくリビングの椅子に座って、ボーッと天井を見上げる。まだ昨日の気分が抜けないようだ。


「やぁ」

「っ!?」

「へぶっ!?」


 突然サタンが上から現れて、反射的に殴ってしまった。


「酷いな〜」

「俺……貴女の事嫌いです」

「残念だな〜……」


 飯食ったらまた寝るか。一人になりたい。



「じゃあシンシアちゃん気を付けるんだぞ」

「分かってる……」


 二人が家から出ていったのを確認して、シンシアは再びベッドに横になった。

 まだ精神的な無力感が抜けない。サラとアイリは無事だって分かってるのに、いつになったら元に戻れるのだろうか。


「シンシア、大丈夫か?」

「大丈夫だよベネディ。昨日は無理に走らせてごめんな」


 横に寝ていたベネディが目を覚ました。


「謝るな。結局悪かったのは悪魔じゃないか」

「ゼウスの友達だから、ってだけであの悪魔許されてるんだよな。俺が神だったら消し去ってた。無理だけど」


 例え神になった所で大悪魔には勝てないだろうな。


「おやすみ」


 シンシアは考えるのも面倒くさくなりそのまま眠りについた。


◆◇◆◇◆


「たっだいま〜!」


 家中に響くサラの声で目を覚ました。


──ガチャッ


 ……来た。


「シンシアちゃん体調大丈夫〜?」

「サラが来てから余計に悪くなった」

「そんな〜!」


 部屋の外ではクラリスがこちらの様子を見てニコニコしていた。昨日の事を引きずっているのは俺だけのようだ。


「……そうそう、ゼウスと話したんだけどさ。そろそろ旅に出た方が良いんじゃないかって言われたんだ」

「旅に? 早くない?」

「でもそろそろ良いんじゃないかな〜って俺も思ってるんだよね。サラも一緒に来るんだし」

「アイリちゃんが寂しい思いするよ?」


 うっ、そう言われると何か悪い事をしようとしているような気がして気が引けるじゃないか。

 しかしシンシアは自分の目標に尊敬される大魔道士になる、という夢がある。可愛いを卒業する為には絶対な条件である。


「……そうだ! シンシアちゃん、一般クラスの魔法の教師してみなよ」

「ま、魔法の教師!? 俺が?」

「そう! 特別クラスは教師としての権限も持ってるから、授業を行うこともできるんだよ。だから明日教師やってみない?」


 俺が教師。皆の前で教師として話している自分の姿は想像出来ないな。


「今からどういう事を教えるのかとか、一緒に考えようよ! クラリスさんも一緒に!」


 サラはクラリスも巻き込んで、シンシアが教師をする前提でどんどん話を進めていった。


「よし! 明日が楽しみだね!」

「まだ教師するとか言ってないけど」

「えぇっ!?」

「まあ……頑張ってみるよ」


 不安しかないが、とりあえずやってみるしかない。

 シンシアは明日の為に気合を入れた。

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