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60話 小プール掃除


 コリンさんと別れたシンシア達は、教室に戻ってサラが来るのを待機していた。


「そういえばイヴ様、最近使い魔のウルドは何してるんだ?」

「プールに誰もいない時に泳いでたりしてるし、最近は僕と一緒にサッカーしてるよ」


 ウルドでもああいう遊びには興味があるのか。意外とイヴと似ているのかもしれないな。


「シンシアちゃんの使い魔は最近見ないけどどこにいるの?」


 猫のルナを頭の上に乗せたアイリが聞いてきた。


「ベネディは最近は国の外の森に行って狼達と遊んでるよ。俺が今どういう状況なのかはどこにいても分かるみたいでさ、何かあったらすぐ駆けつけてくる」

「それって凄いわね」


 そんなことを話していると、教室にサラが戻ってきた。


「皆今日もお疲れ様〜! 明日もプールあるから水着忘れないようにね」

「もう大人には変身しないからな」

「そんなぁ!」


 プールの授業の度に魔力切れでぶっ倒れていたら命がいくつあっても足りない。

 それに、またイヴに水着破かれたら嫌だからな。


「えっと、じゃあ小さいプールがあるから解散した後にプール掃除します! 暇な人は手伝ってください」

「「は〜い」」


 仕方ない。手伝ってやるか。


「じゃあ解散! 掃除する人は教室残ってね!」


 そうして教室に残ったのはシンシアとアイリとサラとクラリスのみ。


「イヴちゃんは?」

「掃除嫌いだから帰る。と言っていました」


 イヴのヤツ……正直過ぎるだろ。


「じゃあこの4人で頑張りましょうか。濡れてもいいように水着に着替えてください!」


◆◇◆◇◆


 全員が水着に着替えて、小さいプールがある場所にやってきた。それでもシンシアが入れば肩までは入るくらいの大きさだ。

 それぞれ倉庫から掃除道具を持ってきて、今汚いプールの底を見てやる気をガクッと落としているところである。


「まずはホースで水流すからね〜」


 サラがホースを持って水を出し始めた。


「冷たっ! ちょっ、なんで人にかけるんだよ!」

「えぇ〜? 楽しいじゃん! ほらクラリスさんも!」

「ひゃんっ!」

「「ひゃん?」」


 冷たい水にビックリしたクラリスが変な声を出した。


「な、なんでもありませんっ!」

「サラ先生! もっとかけてください!!」

「分かった!!」


 クラリスに再び冷たい水を肩からかけた。


「やっ! やめてくださいっ!!」


 するとクラリスは魔法で必死に水を弾き返した。


「もしかしてクラリスさん、冷たいの苦手ですか?」

「急に冷たくなるとビックリするじゃないですか……」


 クラリスさんの新たな弱点を見つけて、少しこの掃除で得した気分になったシンシア達であった。


◆◇◆◇◆


「うぇぇ〜……ヌメヌメしてるぅ……」

「頑張って綺麗にしようね。シンシアちゃん」

「アイリはよくズンズン歩けるな」


 プールの中はかなりヌメヌメしていて、今すぐにでも上がって足の裏を洗いたい気分だ。


「うわっ! あっ……ぶね」


 足を滑らせて顔から床に当たろうとしたが、なんとか横に掴むところがあり助かった。


「ぁ……シンシア……ちゃ……」

「うん? 何掴んで……」


 シンシアが掴んでいた場所を見ると、それはアイリの水着だった。ギリギリ見えていないが、胸元がほぼ見えてしまっている。


「あぁっごめん!!」

「だ、大丈夫だよ。触りたいなら言ってよね」

「いやいいっす……」


 そんなハプニングもありつつ、4人でプールを綺麗に掃除していく。

 先程まで黒くて汚かった床が綺麗な薄水色に変わっていくのは見ていて楽しい。しかしたま〜にサラから水の放水攻撃がやってくる為、常に警戒しないといけない。


 クラリスさんは集中して床の掃除をしている。真面目だからしっかりやっているのだろう。サラにとっては絶好の攻撃チャンスである。


「ふへへっ」


 サラが悪い笑みを浮かべてホースをクラリスに向けた。

 その瞬間、クラリスは魔法陣を生み出しサラに大量の水を真上から被せた。


「サラ先生、真面目に掃除してください」

「はい……」


 どうやらついに怒ったようだ。


「ほらサラ先生も一緒に中に入って」

「あ、わ、私バケツ持ってくる〜」

「……俺が持ってくるからサラやってて」


 中に入りたくないサラが話を逸らそうとした為、シンシアが代わりにバケツを取りに行った。



 帰ってくるとサラはしっかり床の掃除をしているようだ。このまま真面目にやってくれると嬉しい。


「はいバケツ」

「あっ、ありがとうシンシアちゃん」


 水の入ったバケツにデッキブラシの先を付けて、再び床の掃除をする。魔法で濡らすよりもこちらの方が濡らしやすいのだろう。


「帰ったらしっかり風呂入らないとな〜」

「そうだね〜」


 それからしばらく、シンシア達は黙々と掃除を続けた。


◆◇◆◇◆


「皆さん、天気が悪くなってきているようです」


 クラリスに言われて空を見ると、雲が灰色になっていた。ほんの少し雷の音も聞こえる。


「雨が降ってきたら終わろっか」

「もし今日終わらなかったら明日の朝からにでもしますか?」

「うん。とりあえず今日できる限り掃除して、明日の朝に残りをまとめてパパッとやろう。皆急ぐよ〜!」


 雨が降れば自然と汚れも落ちるだろう。多分。

 急いで掃除を再開させて、床の3分の2の掃除が完了したところで大粒の雨が降ってきた。ゴロゴロと音もなっているし、これ以上ここにいるのは危険だろう。


「皆急いで道具を倉庫に片付けるよ!」


 皆で倉庫に使った道具を片付けに行き、シンシアは最後まで倉庫に残って道具の整理と鍵閉めを担当した。


「はい、これで最後だと思うわ」

「ありがとうクラリスさ──」


 その時、すぐ近くで大きな光と共に轟音が響いた。


「きゃっ!」

「うわっ!!」


 シンシアとクラリスはその場で耳を塞ぎ、雷の音が収まるまで静かに立っていた。


「近くに落ちたわね」

「停電してるし……とりあえずサラ達の所に行こう」


 倉庫から出てプールの方に向かう。


「サラ〜アイリ〜大丈……あれ? どこいった?」

「いませんね」

「サラ〜? アイリ? 大丈夫か〜?」


 プールの底を見ると地面が黒く焦げていた。


「さっきの雷はここに落ちたみたいね」

「もしかしてサラ達、ビックリして先に帰ったか?」

「かもしれません。帰りますか」

「ああ」


 それからクラリスと家に帰ったのだが、サラとアイリの姿は無かった。

 イヴに聞いても誰も帰ってきていない、だそうだ。


「おかしいわね」

「……どこに行ったんだ……?」


 その日、サラとアイリの姿を探したが見つからなかった。

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