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59話 貴族の坊ちゃん


「沢山食べるね〜」

「凄〜い」


 シンシアは今、サラとアイリに見守られながら先程の戦闘訓練で失った魔力を食堂で補給している。


「んぐっ、そんなに見られるとっ、食べにくいんだけど」

「気にしないでいいよ」

「うんうん。私達は見てるだけだから」


 2人がジッと見つめてくる為、シンシアは食事を中断して2人を睨む。


「……2人も何か食べればいいじゃん」

「あっそうだね! アイリちゃん一緒に何か食べようよ!」

「分かりました! 何にしましょうかね〜」


 2人はやっと席を離れてくれた。


「やっと気にせず食える」


 2人のいない間に料理をバクバクと口の中に詰め込んでは飲み物で流し込む。別に早食いをしている訳ではないのだが、早く食べた方が短時間で沢山食べれる。

 最近のシンシアは食べる事が趣味になりつつあり、元々少食だったのが今では大食い。しかも身体が成長しない為に太ることもない。なんて素晴らしい身体なのだろう。


 大体1人分の定食を10人前くらいは食べ終えて、残ったお盆を食堂のおばあさんの元に戻す。


「あら〜! 沢山食べたわね〜!」

「あ、ああいえ」

「もっと沢山食べて大きくなるんだよ!」

「は、はい」

「またいらっしゃい」


 俺が不老だという事を知らない人は本当に知らないんだな。


 シンシアは少しだけ複雑な気持ちになり、サラとアイリの元に向かった。


「あれ? シンシアちゃんもうあれ全部食べたの?」

「ああ。2人はまだ何にするか悩んでるのか?」

「ううん。実はちょっと向こうに気になる生徒がいてね」


 アイリに気になる生徒? 誰なのだろう。気になったアイリが指差す方向に目をやる。


「お坊ちゃま、お次はどこに向かわれますか?」

「そうだな〜特別クラスとやらに挨拶にでも行こうか。案内してくれ」


 そこにはお坊ちゃま服を着た金髪の男の子、11歳くらいだろうか。結構小さい男の子と日焼けした褐色のメイドさんがいた。


「新入生?」

「だと思う。貴族なんだって」

「へぇ〜メイドと一緒に来てるのか」


 貴族を見るのは初めてかもしれない。予想通り偉そうな態度というか、親の地位が自分の実力だと勘違いしている典型的なバカ貴族みたいだ。

 相手の事を何も知らないのにこんな事言うのは酷いと思うけど、素直な意見である。


「あのメイドさん美人だったね〜」

「あぁ〜俺と同じ銀髪の。胸もでかかったし」

「まあシンシアちゃん程じゃないけどね! アイリちゃん、何か頼んで食べよう」

「っはい!」


 貴族のお坊ちゃんを目にしたからといって特に何かある訳でもなく。サラとアイリは普通に食事を始めた。


◆◇◆◇◆


 教室に戻ってくると先程の貴族の坊ちゃんが来ていた。


「ん?」


 教室の中を見ると、何やら生徒達が坊ちゃんの所に集まっているようだ。


「おぉ〜! 本当にくれるのか!?」

「その代わり僕の言う事を聞くんだ」

「こんなに貰えるならなんだってするぜ!」


 アデル達がお金を貰って大はしゃぎしている。


「アデルの馬鹿……何やってんだアイツ」

「他の皆も……お金なんてサラ先生が沢山持ってるのに。注意してくるわね」

「ああ」


 アイリが皆を注意しにいくと、坊ちゃんがアイリに話しかけた。


「君も特別クラスの人? これ好きなだけあげるから僕のお願い聞いてくれる?」

「あのねぇ……私はお金で簡単に人の下に付くような人間じゃないの。アデル達も、そんなんじゃ特別クラスの恥よ」


 流石元FBIだ。


「わ、悪い……ごめんな坊ちゃん。やっぱり俺達、そういうのはいいや」

「っ……じゃ、じゃあ何したら僕の言う事を聞いてくれる? 家でもなんでも買うよ?」

「何も貰わなくても俺達はなんだって聞いてやるよ。新入生だろ? 案内してやろうか?」


 おっ、今日のアデルはいつもと違ってカッコイイぞ。


「いっ……いいのか……?」

「お前まさかお金使わないと友達が出来ないと思ってたのか? はっはっはっ! 俺達はむしろ金払って友達が欲しいくらいだ。仲良くしようぜ」

「わわっ!」


 アデルは貴族の坊ちゃんの手を掴んで学園の案内を始めた。

 なんか一気に距離を近づけすぎて逆に気持ち悪い気もするが、ああいうのがアデルだな。


 残ったメイドさんは、連れていかれた坊ちゃんに着いていこうか教室の皆に挨拶をしようかと迷ってアタフタしていた。


「こんにちは〜」

「っ! 初めまして。私はアラステア家で働いているコリンと申します。先程はお坊ちゃまが失礼をしまして申し訳ございません」

「いえいえ、コリンさんものんびりしていってください。この学校はそこまで厳しい場所ではありませんから」

「御気遣いありがとうございます。では、これで失礼します」


 メイドのコリンさんは、綺麗に一礼をしてさっきの坊ちゃんが歩いていった方向へと向かっていった。


「本当に綺麗な人だね」

「なんか懐かしい匂いがしたんだけど……なんだろうな。まあいいや、教室でのんびりしてようぜ」


 それからシンシアは教室でウトウトしながら時間を潰していた。


◆◇◆◇◆


「シンシアちゃんヨダレ」

「…………」

「ほら、机に垂れてるよ」

「んぁっ? あ、ああぁ〜ごめん寝てた」

「目開いてたよね……」


 アイリがハンカチでヨダレを拭いてくれて、申し訳気持ちだ。

 そんなつまらない教室にクラリスがやってきた。


「もうすぐ一般クラスが水泳の授業を始めるそうよ。見学しに行きたい人は一緒に行かないかしら?」

「私行きます!!」

「あ、じゃあ俺も」


 手を挙げたのはアイリとシンシアのみ。


「イヴ様は行かないのか?」

「うぅ〜ん僕はいいや。眠いし」

「分かった」


 シンシアとアイリはクラリスについていって一般クラスの水泳の授業を見学しに向かった。


◆◇◆◇◆


「私達と違って普通に泳ぎの練習してるね」

「皆下手だな。あっ、コリンさんも見に来てる」


 プールサイドにメイドのコリンさんが来ていた。しかしあの坊ちゃんはいないようだ。別のクラスなのだろう。


「コリンさんこんにちは〜」

「っ! こんにちは。皆様もご見学ですか?」

「暇だったんでね。コリンさんは坊ちゃんと一緒にいなくていいんですか?」


 するとコリンさんはグラウンドの方に目をやった。


「お坊ちゃまはアデル様達と一緒に遊んでおられますので。私は遠くから見守っているだけです」


 どうやら仲良くやれているようで、コリンさんも安心している。


「ああして子供達が仲良く遊んでいるのを見ているのが私好きなんです」

「へぇ〜、子供好きなんですか?」

「はい。実は昔可愛い弟がいまして、たまに一緒に遊んであげたりしていたんです」


 コリンさんに弟か、想像すると微笑ましいな。

 シンシア達はしばらくコリンさんと話をしながらプール見学をしていた。

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