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58話 水上戦闘訓練


全員がプールに入ると、サラがスタートのカウントダウンを始めた。


「5! 4! 3! 2!」


 バトルといっても、ただ水魔法で相手を無力化するだけの事。

 危険なのはイヴだ。イヴだけに意識を向けて最初は生き残る事に専念しよう。


「1! スタート!!」


 サラがピョンと跳ねてプール内でのバトルが開始した。


「シンシアちゃん! 最初は一緒に戦おう!」

「ア、アイリ。分かった!」


 人数が多いのなら誰かと組んだ方が強力だ。


「アデル君を水圧で無力化するから、シンシアちゃんは他の人達を無力化して」

「分かった」


 アイリは真っ先にアデルに向けて詠唱を始めた。


「水よ 自然の理から外れ 意思に従いて動きを封じたまえ」


 その隙にシンシアはゴム弾程の威力の水の玉を他の生徒に打ち続ける。

 地味な攻撃とはいえ痛いものは痛い。マシンガンのように打ち続けることでアデルを無力化しているアイリの邪魔をすることはできない。


 しかし、目立つ行動をしている2人を狙ってイヴがやってきた。


「させないよっ!!」

「あぐっ……!」


 突然下から水が突き上げてきて、顎に当たって意識が飛びそうになる。流石魔王、する事はそれなりに強い。


「あれを試すか……」


 シンシアは1度水の中に潜った。


 その隙にイヴはアイリに向けて大きな波を起こした。その大きさは避けることができない程の大きさで、強制的に魔法を封じられた。


「ありがとうイヴちゃん! 助かったぜ!」

「協力してアイリとシンシアを倒すよ!」


 サッカー仲間のアデルとイヴもチームを組み、お互いに離れないように1箇所に集まった。


「そこっ!!」


 突如水の中からシンシアが飛び出してきて、水で両足が覆われた両足で2人の身体を蹴り飛ばす。

 どうやらこのバトルは単なる水遊びではなく、水上戦を想定した戦闘訓練のようだ。


「くっ……あれ? シンシアが消えた?」


 蹴りを与えられたイヴはすぐに体勢を立て直しシンシアに魔法を打とうとするが、そこにいるはずのシンシアが消えていた。


「っ!」


 背後から気配を感じたイヴは、咄嗟に体勢を低くして上を見る。そこにシンシアが立っていた為、イヴはシンシアにタックルをして押し倒す。


「捕まえっ……いない?」


 またしてもシンシアの姿が消えた。確実に両手でシンシアの身体を掴んだはずなのだが、いつの間に逃げたのだろうか。

 イヴはすぐに起き上がり、周りの状況を確認する。


 アイリとアデルが戦っており、そこに他の生徒も集まって漁夫の利を狙っている。

 しかし中にはこちらも狙っている生徒がいる。


「倒すしか……っ!」


 イヴが腕に魔力を込め始めた所で、異変に気づいた。

 シンシアが突然水の中から現れて、生徒達の背後を襲って気絶させている。元々そこにいた訳では無い。本当に突然現れたのだ。

 数名の生徒を気絶させると、再び姿を消した。


 それに気を取られていると、イヴの横腹に衝撃が加わった。


「っ……シンシア!」

「俺の秘策だ。イヴ様を集中的に狙うから油断するなよ」


 イヴの横腹に蹴りを加えると、シンシアは再び水の中に潜った。

 シンシアの秘策というのは自作の魔法陣である。基礎知識を完璧に覚えたシンシアは1人で転移魔法の魔法陣を改造し、地面に設置してシンシアが触れるとその場所に転移できる仕組みになっている。

 転移の時のように周りの水も一緒に転移してしまい、すぐに位置がバレてしまう。ということはない。何故なら転移の対象を自分のみに絞っているからだ。


 完全隠密に特化した設置型の転移魔法は、シンシアのオリジナル魔法でありこの戦いでの秘策。

 それをイヴが見抜けなければこのままシンシアの勝利は確実だろう。


 もしもの時に作っといて良かった〜!


 そんな事を思いながらプールの中を移動するシンシア。しかし大人の状態で何度も転移を繰り返したシンシアの残り魔力はかなり少ない。このまま戦闘が長続きすればシンシアの魔力切れがやってくる。


 一気にイヴ以外を片付けるか。


◆◇◆◇◆


 ある程度の魔力を残しながら、アデルや他の生徒、アイリも含めて水の壁で包み込む。


「何っ!?」

「な、なんだ。身体が浮いてるぞ!」


 四角の水の中に入った皆をプールの外に運ぶ。このバトルのエリアはプール内。つまりプール外に出せば勝利でもある。


「アイリ、ごめんな」


 そう言いながら残ったイヴと向かい合う。

 今の魔法でかなりの魔力を消費してしまった。早めに決着を付けた方が良い。


「よし、じゃあ僕は本気で行くよ」


 イヴは軽く手足のストレッチを始めた。


「肉弾戦か」


 シンシアの魔力を考慮したのだろうか。

 しかし、イヴとシンシアの力をほぼ互角。このままイヴが時間稼ぎさえすればシンシアの魔力が尽きて負けてしまう。

 しかし、イヴはそんなずる賢い事はしない。


──ドウンッッッ!!!

「っっ…………水の中なのに流石だな。イヴ様」


 イヴは動きづらい水の中でも、一瞬でシンシアの目の前に移動して拳を突き出していた。しかしシンシアはすぐに拳を受け止めて、背後にはイヴの移動による衝撃で水が弾け飛んでいた。

 まるで無反動砲の衝撃のようだ。


「シンシアは水の中での素早い動きは苦手みたいだね」

「まあな……」


 イヴはニヤリと笑った。シンシアは一瞬何故笑っているのか分からなかったが、すぐに自分の状況を理解する。

 両足が動けないように拘束されているのだ。


「これで動けないね」

「でもまだ策はある」


 その状態で身体を後ろに倒し、近くにある転移魔法陣に触れる。

 このプールの底には大量にシンシアが設置した魔法陣があり、今イヴが立っているその背後にも、魔法陣は設置してある。


 再び姿を消したシンシアに困惑しているイヴ。そのがら空きの背中にシンシアの頭突きが与えられる。


「……なっ!?」


 しかし、イヴのその攻撃を受けてもビクともしなかった。


「どこから攻撃が来るのか分からないなら、防御する事が大事って覚えたよ」


 イヴが振り返りシンシアの腹に手を当てた。


「僕の勝ちだ」


 その笑顔はまさに魔王らしい笑顔だった。

 シンシアの身体を大きな水の渦が包み込み、溺れさせようとしたのだろう。


「あっ……つい威力を強くしちゃった……」


 水の中にいるシンシアの水着が水によってボロボロに切り刻まれる。


「あぁっ……み、見えちゃう!」


 イヴは咄嗟に両目を隠すも、指の隙間から破れていく水着を着たシンシアを直視する。

 この魔法は1度発動させると一定時間経過しないと消えないのだ。


「はわわわわわわわっ……」


 イヴだって男の子。女性のそういう姿には興奮だってする。

 他の生徒、そしてサラとクラリスさえもその姿に興奮していた。美少女が刺激的な格好にされていくのを見て興奮しない者はいないだろう。


 ついに水が収まりイヴの勝ちかと思われた。しかし。


「げほっげほっ……まだ戦え……な、なんだこの格好!?」


 意識を保っていたシンシアはすぐにボロボロの布に気付き身体を隠す。


「ち、違うんだっ! 僕そういうつもりじゃなくてっ!」

「っ…………どこ大きくさせてんだゴルァッッ!!!」


 シンシアの渾身のアッパーがイヴの顎にクリーンヒットし、イヴはプール外へと飛ばされて意識を失った。


「し、シンシアちゃんの勝ち!!」

「ぁ……やべぇ、魔力切れ……」


 シンシアが勝った。しかしそれと同時にシンシアの魔力も切れてしまい、子供の姿に戻りながら意識を失った。


「あぁっ!! その格好で元に戻るのは色々とまずいよっ!」


 サラがすぐにプールに飛び込み、シンシアを救助した。

私に絵を描く技術があれば……サービス画像沢山描いてるのに……うぅ〜……

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