40話 女神+悪魔=
「ここらへんで爆発音がしたんだけどな〜」
「よく分かりますね」
爆発音がした場所までやってきたシンシアとイヴは、周囲に何かがないか周りをキョロキョロと見渡した。
「でも何かが爆発したような形跡は無いですよ」
「う〜ん……あっ、近くに何かいる」
「えっ?」
咄嗟に自分の魔力を薄く周囲に広げて、その範囲内にいる生物を探す魔力探知をした。するとここから少し離れた場所にそれなりの速さで逃げていく生き物の を探知した。
「ここに生き物がいるのは初めてだよ」
「何なんでしょう……追いかけてみますか?」
「追いかけよう!」
2人は魔力で身体強化をし、木々の上を渡って飛びながら逃げていく生き物を追いかけていった。
このまま追いかければあっという間にその生き物の姿を見ることができるだろう。
常に魔力探知を発動しながら追いかけ続け、ついにその生き物の後ろ姿を確認する事ができた。
「人?」
「裸だね。それに髪も長い」
「女性……っぽいですね。何かから逃げている、というよりただ走っているだけのようです」
さっきの爆発音との関連性は分からないものの、あの人が何者か、どこに向かって走っているのか知る必要がある。なんせここはイヴの部屋の中だ。
「話しかけてくる!」
「あっ! まだ尾行をっ……行っちゃった……」
イヴはあっという間に前を走る女性の元まで追いつき、話しかけた。
シンシアは遠くからその様子を眺めているのだが、何を話しているのか分からない。
「っ!」
突然裸の女性が頭を抑えて苦しみ始めた。
シンシアはすぐに二人の元までいって、イヴが何をしたか確かめる。
「イヴ様! 何したんですか!」
「ぼ、僕は何もしてないよ。突然苦しみ始めたんだ」
女性の方を見ると、何かに怯えている様子はない。混乱というか、疑問というか。そんな感じのモノに苦しんでいるようで、ブツブツと何かを呟いている。不気味だ。
「あ、あの……」
女性に話しかけると、ゆっくりとこちらを見上げて目が合った。
「アナタハ……ダレ……? ドウシテココニ……?」
「えっと…………俺はシンシアです。ここは魔王イヴ様の部屋で、遊んでいたら貴女を見つけて──」
「ワタシハ……ワタシハ……?」
突然肩を掴んできて、意味不明な事を言い始めた。それがあまりにも不気味過ぎて、一歩後退りした。
「えぇっと〜……その……貴女は……何故ここにいるのか分からないです。爆発音がして……たまたま貴女を見つけたので」
すると、その女性は少しだけシンシアから離れて下を向いた。どうやら冷静を取り戻したようだ。
「……そう……私……死んだと思ったの……でも生きてる……ここがどこか分からないけど……家族を探してる……」
その言葉は先程までのカタコトではなく、嘘を言ってるとは思えない。ただそれがどういう事なのか理解ができない。
「この人混乱してるみたいだし、ちょっと落ち着いてから話そうよ」
「そ、そうですね。ちょっとこっ……」
ちょっと怖い。そう言おうとしてしまったが、それはこの女性に対し失礼だと思い口にするのをやめた。
シンシアとイヴはその女性を、近場の休める木影に移動させて休ませる事にした。
◆◇◆◇◆
「来たわよ、クラリス」
「来たわね、エドウィーナ」
二人の魔女は、この城に近づいてくる1人の女性に目を向けていた。
その女性は二人の魔女を視認すると、魔力を解放して威嚇した。
「シンシアを返せ」
その言葉は感情など篭っておらず、まるで機械のようだ。
「サラ、貴女にはガッカリしたわ。どうして悪魔なんかに手を貸したの?」
クラリスは素直な疑問を投げかける。しかし、サラはそれに受け答えることはなかった。
ただ無言で殺意をクラリスに向けている。今にも襲いかかってきそうな程の殺意は、クラリスでも一歩引いてしまう程だ。
「今の貴女にはシンシアちゃんを会わせることはできないわ。悪魔なんかと──」
「うるさいっっ!!!」
サラは初めて感情を顕にし、それに驚いたクラリスとエドウィーナに襲いかかった。それは一瞬の隙をついた強力な一撃。
「「っ!」」
クラリスとエドウィーナはその攻撃をまともに受けた。かと思われたが、二人の身体には何重にも重ねられた結界が貼られていた。
「2人だけで楽しもうなんてズルい!」
「そいつの中の悪魔を食えばいいんだな」
嫉妬の魔女、そして暴食の魔女がやってきたのだ。その2人はクラリス達の横に立つと、嫉妬の魔女がサラの動きを謎の力で封じた。
「悪魔だけを殺すのよ。サラは無傷で返すんだから」
「クラリスは優しいんだよ……まあ仕方ねぇか」
◆◇◆◇◆
しばらく木影で休ませると、女性は落ち着いたようでシンシアとイヴに説明を始めた。
「家族を探してるの……多分、もういないんだけど……」
「そうだね。ここにはこの3人以外誰もいないよ」
その女性は悲しそうな表情をして、下を向いた。
「私は以前、小さな村でお父さんと一緒にお店を経営していたんです」
「ここに来た原因って分かりますか?」
「……どうしても忘れられないんです……突然村にオークの群れが攻めてきてっ……」
その女性は身体を震わせて、自分の身体を抱き寄せた。恐怖の感情だ。
「家族は殺されて……村の女の子達は連れ去られて……死ぬまで子供を産まされたんです……」
「っ……死ぬまで……」
俺も思わず背筋がゾクッとしてきた。
「それで私、死んだと思ったんです。でも気づいたらここにいて……アレは夢なの……? なんで誰も助けてくれなかったの……?」
「お、落ち着いてください……」
また興奮してきた女性を落ち着かせて、シンシアは深呼吸をした。
聞くだけでも辛い話。それを実際に経験した人が目の前にいる事が、かなり精神的に来るものがある。
「まあ簡単な事だね。オークの住処にいるメス達がハンターの手で殺されたから、なんとか繁殖させる為に人を襲ったって事。ここにきた理由は分からないけど人間のせいだよ」
「イヴ様……それは最もなんですけど、少しは気遣いというのをですね……」
苦しんでいる女性がいるのに、それを更に追い詰めるような事を言うのは流石魔王といったところか。
「っ……シンシア、何か来る」
「えっ?」
その時だった。突然空に巨大な亀裂が走り、空間が割れた。
「なっ、何っ!?」
「シンシアちゃん!!」
なんと、そこから現れたのは女神サラだった。
「サラ!?」
「ん? 知り合い?」
イヴは知らないだろう。しかし何故サラがここに……?
「サラ、どうしてここに?」
「助けに来たよ」
サラはそういうと、地面に降りてシンシアの元へ近づいてきた。
「誰なのか知らないけどさ、僕の部屋を壊して入っ──」
「っ!? イヴ様っっ!!」
イヴがサラに一歩近づいた。ほんの一瞬シンシアが瞬きをした瞬間には、サラの手がイヴの腹を貫いていた。
「うぶっ……がっっ………っ…」
イヴは口から血を吐き、腹から血を流し痙攣している。それを見た女性も、恐怖で頭を抑えていた。
「サラ! なんでっ……!」
「助けに来たよ」
サラは笑顔でそう言ったが、そこに感情がなかった。
◆◇◆◇◆
「くそっ…………あんな……」
「魔王様……すみま……せん…………」
城の庭では、血だらけになり倒れた4人の魔女が今にも力尽きそうな程弱っていた。
魔王軍幹部が4人でかかっても手も足もでなかった。女神の力を奪った悪魔は、今ならあっという間に世界を支配できる程の力を手にしたのだ。
昨日に引き続き申し訳ありません。
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あ、勿論これ以上ここでTwitterを宣伝する事はありません。しつこいと嫌われるから程々にと言われましたんで……これからも応援よろしくお願いします。




