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3話 学校に行った方がいいかな


「────ぐすんっ……シンシア……」


 誰かの泣き声がする。この落ち着く匂いと暖かい枕、頬に当たる柔らかい感触……俺はサラの膝枕で寝ているのか。


「なんで泣いてんの……」

「あっシンシアッ! 良かった……生きてるのに目を覚まさないから心配になって……」


 ちょっと気を失っただけだというのに心配しすぎだ。それに女神なら俺が死んでも生き返らせれるだろ。


「痛てて……」

「倒れた時に頭打ったの!? すっ、すぐに治してあげる!」


 触ると小さなたんこぶが出来ていた。やはり幼い身体は弱いんだな。

 サラが魔法か何かで頭を治してくれたようで、あっさりと痛みが無くなった。


「ありがとう」

「うん……どうして急に倒れたの?」

「えっ?」


 まさかこの女神、ずっと人間界で生活してないから羞恥心だったりの常識が無いのか? ……まあいいか。


「そんな事よりご飯にしよう」

「っ! そうよね! すぐ作るからリビングに行きましょ!」


 サラは俺を人形のように抱き上げてリビングに向かった。ソファに俺を座らせると、キッチンに立った。


「────」


 ん? 何か呟いた?


 と、次の瞬間。キッチンが眩しく光って思わず目を瞑る。

 ゆっくり目を開けると、サラがニコニコと美味しそうなスープとサラダを持って俺の横に座っていた。


「……いつの間に……」

「これは神様にしか使えない創造魔法なの。シンシアの為にある魔法なのよ」

「あぁそう」


 サラの事だし、ツッコむのはやめておくか。


「頂きま〜す」

「どうぞ〜」


◆◇◆◇◆


「ご馳走様。美味しかったよ」

「やったぁっ!」


 無邪気に喜ぶサラの姿を見て、俺の方が大人なんじゃないかと思ってしまった。最初に会った時は知性溢れる大人の女性に見えたのだが、女というのは全世界共通で可愛い物には目がないのだな。


「なぁ、俺が今から学校に行くとしたらどうなるんだ? 転校生? 必要な物とかは?」

「学校に行くの?」

「うん行った方が良いかな〜って」


 この世界についての知識集めだ。それに異世界の学校というのも気になるし、前世じゃ友達ができなかった俺も楽しい学校生活をやり直せると思ったからだ。


「全部私に任せて!」

「本当に大丈夫?」

「うん!」


 いつもよりニコニコしていて怪しいな。嫌な予感がする。


◆◇◆◇◆


「今日から特別クラスに編入する事になったシンシアです……よろしく」

「そして今日からこの特別クラスの先生になるサラティーナです!」


 どうしてこうなった。


 いや、そうか。俺は不老という能力を持ってて、サラにこの世界じゃ最強な魔法を使えるように改造されてるから特別クラスに入ったんだ。

 問題はサラだ。何故サラが先生になっている?


「早速ですけど、皆で自己紹介しますよ! シンシアからお願い!」


 その前にサラが先生になった経緯を聞きたいのだが……それも女神の能力だとか言うんだろうな。


「はぁ……えっと、どういう自己紹介したらいいんだ?」

「自分の能力、自慢できることとか何でも!」


 本当にサラは適当だな。


「俺は不老って言って歳を取らない人間だ。精神年齢で言えばこのクラスで〜……大体3番目くらいには高い。戦闘経験はない。よろしく」

「はいっ! 皆拍手〜!!」


 教室にいる生徒6人が俺を見て拍手をしてきている。そのどれもが今の俺の年齢よりも年上、9〜18歳までいる。

 男が5人に女が1人。そこに俺が入って合計7人の特別クラスになった訳だ。


「次は〜じゃあ1番の人から!」

「はい」


 どうやら異世界の学校にも出席番号というのがあるようだ。


「転生者のウル。能力は空間を操れる、よろしく」


 んっ……んっ!? 転生者!?


「てっ、転生者……?」

「ああ。この特別クラスはほとんど転生者とか転移者しかいないよ。よろしくね」


 転生者のウルはニコッと微笑んでそういった。

 なんだこの爽やかイケメンは……どうせ前世は冴えないデブ男だったんだろ。この野郎、俺だってイケメンに生まれたかったよ。


「あっ、シンシアちゃんも転生者だから仲良くしてあげてね!」


 サラが思い出したように皆に告げた。


「じゃあ次は2番!」


────


◆◇◆◇◆


 こうして個性の強いクラスメイトの自己紹介が終わり、俺は自分の席に肩がけリュックを置いて座る。


「よろしくねシンシアちゃん」

「ん、あ、ああ……よ、よろしく」


 隣の席はこのクラスで唯一の女の子、アイリーン。清楚系というよりクール系だろう。キリッとした目付きはどこか頼れる雰囲気を醸し出している。

 しかし女の子と話すのはどうしても緊張してしまう。


「気軽にアイリって呼んでくれて構わない」

「あぁうん、よろしくアイリ」

「ふふっ、小さくて可愛い見た目なのに落ち着いてるね」

「っ……」


 マズい。アイリに惚れそうだ……しかし今の俺は女。同性恋愛なんてしてしまったら学園中に薄い本が出回るに違いない。


「は〜い注目!」


 サラが手を叩いて生徒の注目を集めた。


「シンシアちゃんはこの学園に来たばかりだから、学園の案内も兼ねて色んな説明してあげてね。えっと〜……じゃあアイリーンちゃん、シンシアちゃんをよろしくね!」

「分かりました」

「私は今から学園長に挨拶しにいくから! 自由時間!」


 学園長に挨拶してなかったのか……というか挨拶すらしてないのによく先生になったな。


「シンシアちゃん、今からこの特別クラスについての説明と学園内の施設の紹介をするから行きましょう」

「よ、よろしくお願いします」

「緊張しなくていいよ」


 緊張するに決まってるだろ……だ、だって今から初めて女の子と2人きりで歩くんだ。まるでデートみたいで、意識せざるを得ない。


「身体が小さいから迷子にならないように手を繋ぎましょう」

「手っ……」


 心拍数が異常な程にまで高まっている。寿命が縮んでしまう。

 不老だから寿命とかはないんだけど。

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