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33話 メイドの仕事とは


部屋に戻ってきた後、メイドのグリゼルダさんに呼ばれて別室へと連れてこられた。

 グリゼルダさんは女性なのに短い髪をしており、身体がガッシリとしている。


「シンシア、貴女には今からメイド服に着替えてもらう」

「メイド服っ……ですか」


 どうやらここはメイド服や燕尾服(えんびふく)──執事が着る服。後ろに二つピロピロしたのがある。──が沢山ある部屋らしい。


「スカートの長さが選べるが、それによって仕事も変わる。短い方が色んな仕事に対応できるけど、どうする?」


 グリゼルダさんの鋭い目つきに睨まれながら、俺はひとまず長いスカートを選んだ。


「ロングスカートの場合、出来る仕事は掃除や庭の花の水やり、街に買い物に行く事、そして食事の用意だ」


 それでも仕事はかなり多いのか。

 グリゼルダさんは短いスカートで、黒いニーソックスとガーターベルトがセクシー……ではない。結構筋肉がある。


「短いのだと仕事が増えるんですか」

「城への侵入者対策に周りを歩いて監視。これは武器の扱いが必要だからすぐにする必要は無い。他には庭の手入れ全般。魔王様のペットの餌やり、ブラッシn──」


 大量にあるようで、全部覚えられそうにない。


「どうする。早く選べ」

「うっ、じゃあ長い方で……」


 グリゼルダさんは厳しいな。いや、これが普通の扱い方なのだろう。今まで俺に接してきた人達が異常なだけだ。


「それではまず、着替え終わったらシンシアが担当する掃除場所を決めよう」



 それから俺はメイド服に着替えさせられ、メイドにとって常識の礼儀作法を習った後に、メイド達が集まって休憩する部屋に案内してもらった。そこには数名のメイドが既に休んでいるが、俺の姿を見ても特に反応は示さない。


「掃除の場所決めなら一先ず自分の部屋だけにしてあげたら? いきなり沢山の部屋は大変よ」


 1人のメイドさんがそういうと、グリゼルダは壁を向いて右手で顎を撫でた。

 その壁には、白全体の見取り図。そして掃除担当の人の名前や部屋にいる人の名前、他にも色んな場所が分かりやすく描かれていた。

 メイドさん達はこれで城の中を迷わずに歩けているのか。それでも覚えるのが大変そうだけど。


「そうだな。シンシア、自分の部屋の場所は分かるな?」

「えっと……はい」


 壁を見て自分の名前が書かれた部屋を見て、大体の場所は分かった。


「次からは見ないでもすぐ分かるように覚える事だな」

「はい……」

「グリゼルダ〜、新人に厳しいんじゃない?」

「これくらい出来ないとメイドとしてダメだという事だ。厳しくしている訳では無い」


 すると1人の女性が俺の元にやってきた。


「ごめんね〜まだ小さいのにこんな堅物が教育者なんてね〜」

「何だとっ! 誰が堅物だ!!」

「……た、確かに筋肉は硬そうですね」


 何か危ない雰囲気になったので、恐る恐る冗談を言ってみた。

 するとグリゼルダさんは固まって俺の方を見つめてきた。ま、まさか……冗談だと伝わっていない……?


「流石だなぁ!」

「へ?」

「よく見抜いた。私は日頃から身体を鍛えていてな。見ろこの筋n──」


 俺はしばらく、この部屋から他のメイドがいなくなるまで筋肉についての話を聞かされた。それはもう永遠かと思う程長い時間だった。


◆◇◆◇◆


「ふぅ……随分と話した。すまないな」

「い、いえ。グリゼルダさんの筋肉に対する熱情が伝わってきました」

「ははっ、そうか! もっと話してあげたい所だが、これ以上は魔王様に怒られてしまう。部屋に帰って掃除でもするといい」

「分かりました」


 最後に感謝の言葉を言ってから、この部屋を出る。

 それと同時に東西南北。城の見取り図を全て忘れてしまった。

 部屋に戻ろうかとも思ったが……。


「この話、もう1度魔王様に聞かせないとな。きっと次こそは分かってくれる」


 グリゼルダさんがいるので、これ以上あの人と2人きりにはなりたくない。そうして廊下の右か左か、どちらに進もうか迷った時だった。


「シンシアちゃん。きっと迷ってるだろうと思って迎えに来たよ」

「あっ……ありがとうございます、クラリスさん」


 本当に迷いそうだったからクラリスさんに会った瞬間物凄い安心感がやってきた。サラなら一緒に迷ってただろうな。


「私とは部屋が別々だけど、寂しかったら私の名を呼ぶのよ。すぐに行くから」

「分かりました」

「じゃあ部屋に転移させるね」


 クラリスさんは白い手で俺の肩に触れると、視界が真っ暗になった。その暗闇が霧のように消えていくと、いつの間にか廊下とは違う部屋の中にいた。

 クラリスさんの転移はサラと違うんだな。


「ここがシンシアちゃんの部屋よ。何か聞きたい事があるならなんでも聞いて」

「ん〜……一人の部屋にしては広くないですか?」


 まるで高級ホテルのスイートルームだ。シャワールームも付いてるし、かなり充実している。


「魔王様のお城だもの、魔王様の部屋はこれ以上よ。他に質問はある?」

「いえ、もう無いです。ありがとうございます」


 グリゼルダさんに教えてもらった礼の仕方で、感謝を伝える。


「ふふっ、メイド、似合ってるわね」

「仕事も頑張らないといけませんからね」

「それじゃあ私は部屋に戻るわ。まだ初日だから無理しないようにね」

「はい」


 そう言い残して、クラリスさんは部屋から出ていった。


 今日からここが俺の部屋。自由に使っていい。なんて最高なんだこの城は。

 今まで俺1人の部屋なんてなかった。それに部屋には内側から鍵が掛けられるようになってるし、完全に1人の空間が完成する訳だ。


「くくっ……」


 嬉しすぎて変な笑い方をしてしまったが、早速この部屋を自由に使うとしよう。

 まずメイド服を脱いで、部屋のクローゼットにあった普段着用の服に着替える。それから大きなベッドの上に飛び乗りっ!


「おぉっ! 凄い!」


 ベッドの上で飛び跳ねるだけ。それなのになんて楽しいんだろうか。凄い高さジャンプしているぞ!


「はぁ……はぁ……」


 しかしすぐに疲れて横になる。そのままベッドの上でゴロゴロしていると、ふとベッドの下に何か隠されているのが分かった。


「……? これは?」


 近くに紙も置いてあったので、それを取って書いてある内容に目を通す。


 これを使って発散するといい──魔王イヴより。


 発散……? 何をするのだろうか。

 とりあえずベッドの下の物を取り出す。


「……これは……」


 それは前世でも見たことのある形状のマッサージ機であった。うむマッサージ機。疲れた筋肉をマッサージして、疲れを取れという事だろう。そういう意味だよな。

 しかし、他にも下に何か隠されているようだ。


「今度はちゃんとした物を頼むぞ……」


 そう願いながら手に掴み、持ち上げて確認する。


「……」


 俺はそれをそっとベッドの下、その更に奥へと隠した。あれは見せられない形状の物であり、確実にR18となってしまう物だ。

 ベッドの下……恐ろしい。


「…………鍵閉めてるよな」


 しかし俺はマッサージ機を片手に、興味本位でそれを本来の用途とは違う使い方をした。それはもう凄かった。

 9歳の身体に何をしているのか、なんて事は一切考えていない。

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