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30話 剣術か魔術か


到着したダンジョンの近くには、キャンプ地のようにテントが複数張られている。元はハンター達がここで宿泊する為に使われていたのだろう。

 俺達に付いてくる生徒達は、もう一つの特別クラスのグループがダンジョンに入ってから時間差で入る事になった。


「よっしゃシンシア、剣術の練習一緒にしようぜ」

「OK」


 一応俺は昔、剣道をカッコイイからという理由でやっていた時期がある。剣道着が臭くてすぐに辞めたけど、基本的な構えとかはそれなりにできる。


「あの〜シンシアさん!」

「うん? どうした?」


 一般クラスの生徒が突然手を挙げて質問してきた。


「おーけー? って、どういう意味ですか?」


 あぁ、こいつらは英語を知らないからOKが分からないのか。


「了解、とか問題ないとか。同意の意味で使うよ」


 これが本当に正しいのは分からないが、俺はそんな感じで使っている。


「カッコイイ! 私達も使ってみよ!」

「お〜け〜!!」


 早速女子達はOKを使い始めた。こうして流行語が完成していくのだな。


 と、そんな事を話す女子達を横目に、俺は重い剣を構える。

 普通に持てば重くて大変な剣でも、竹刀のように持てばそれなりに安定して持つ事ができる。


「俺が教えようか〜……って思ったけど、問題無さそうだな」

「いや魔物と戦う場合この構えは弱いと思うんだけど」


 アニメや漫画で得た知識では、魔物は色んな方向から襲いかかってくる。正面しか警戒していないこの構えでは、不意に背後を突かれると弱いのではないだろうか。


「良いんじゃね? そのまま勢いよく後ろに突いてみなよ」

「ふっ! ……おぉ」


 自分でも驚く早さで身体を回転させ、ブレる事なく背後に突きを入れることができた。これはもしや、魔力で身体能力が強化されているという事か。本で読んだぞ。


「でもやっぱ技術的には一般クラスより劣ってるな。ただセンスは良い。練習すればあっという間に強くなる」

「うぅ……そうか」

「ちょっとアデル、シンシアちゃんを虐めないで」


 アイリが駆けつけてきて、俺に抱きついてきた。

 そんな様子を一般クラス達は真剣な目で眺めている。凄く恥ずかしい。


「良い? シンシアちゃんは魔力SSよ? 魔術を鍛えないでどうするのよ。シンシアちゃんは魔術さえ練習すれば良いのよ」

「剣術だって良いじゃねぇか。剣術もS、最強クラスだぞ? 戦闘経験がないからまだダメだけど、ここからあっという間に強くなるんだ」


 魔術やら剣術やら、俺を挟んで面倒な争いが繰り広げられている。


「とりあえず魔術も練習してみるよ」

「よし! じゃあ空に火の玉でも打ち上げてみて」


 よし、って……アイリはそんなに俺に魔術を教えたかったのか。


「どのくらいの強さが良い? イメージとしては」

「そうね。とりあえず軽めからでいいわ」

「OK」


 軽めな火の玉をイメージして、片手を上に向けて魔力を集中させる。そして一気に放出!


──ドンッ!!


 その瞬間、辺りは明るくなり一気に気温が上がる。

 上を見上げると大人3人分くらいはある大きな火の玉が高速で空を登っていた。


「……ちょっと魔力込めすぎたか」


 アイリを見ると、唖然と口を開けて火の玉を眺めている。

 しばらくして、大きな爆発音と共に空の火の玉が弾け飛んだ。まるで花火のようで綺麗だが、流石にこれはやりすぎてしまった。


 周りからは小さな拍手が上がっている。


「アイリ……その……」

「……シンシアちゃん凄い! 今の威力なら魔物の群れを一掃できる!! 少し練習して威力を調節できるようになれば最強よ!」


 アイリは成長した我が子を抱きしめるように両手で俺を締めてきた。苦しい。


◆◇◆◇◆


 その後、アデルとアイリはサラに軽く怒られた。シンシアちゃんの魔術は凄いんだからもし威力がおかしくて怪我したらどうするの。だそうだ。

 しっかり反省した後にダンジョンに突入する事になったのだが、さっきの俺の魔術を見た生徒達は戦わなくても安心というような顔で後ろから着いてきている。


「皆! 今日は強化訓練だからしっかり魔物と戦うように!」

「「は〜い」」


 皆は既に俺に対する恐怖心はなく、アデルやアイリに人形や玩具のように扱われている俺を見て癒されているようだった。

 恐怖心で嫌われるよりは可愛いと思われた方が良い。


「シンシアちゃんはいつでも訓練に行けるから、今日は一般クラスに戦わせるのを優先した方が良いね」

「分かった。ダンジョンの最下層に行けば地上に転移するんだよな」


 ここはかなり簡単なダンジョンではあるが、魔物は常に一定の数湧いてくるようになっている。どういう現象で魔物が生まれるのかは分からないが、とにかく最下層まで行けばクリアだ。

 それを後数回……大変だ。


◆◇◆◇◆


 初めて見る魔物。

 緑色の体をしたゴブリンは鎧や武器を装備して襲ってくる為、対人戦闘とあまり変わらない。

 バブルと呼ばれる魔物は、丸くてスライムのようにプルプルしている。剣で切れば弾け飛んで倒すことができる。

 その他にもスケルトンなんかが襲ってきたりしたが、そのどれもが弱い。

 安全に最下層まで降りてくる事ができた。


「はい皆お疲れ様〜!」

「サラ先生!?」


 最下層にはサラが待っていた。いつの間に来ていたんだ。


「皆簡単だったでしょ?」

「「簡単でした!」」


 一般クラスも無事に到着した事だし、この程度のダンジョンを往復するならさっさと終わらせられるな。


「それじゃあ地上に送るよ〜」


 俺達の足元に巨大な魔法陣、そして頭上にもグルグルと回る魔法陣が現れる。


「凄い……」


 その魔法陣を見たアイリは思わず声を出していた。


 身体が浮遊する感覚が一瞬やってきて、いつの間にかキャンプ地に到着していた。

 ここから待機していた一般クラス達をまた連れていかなければならない。


「はぁめんどくさ」

「頑張ろう」


──────

────

──


──

────

──────


「やっと終わったぁぁ……」


 俺はキャンプ地の真ん中でうつ伏せに倒れていた。

 流石に両足が疲れてもう動けない。ダンジョンの中は坂道になっていて、それなりに楽だったものの身体への負担がでかい。

 その場に倒れていると、サラが俺の元にやってきて俺を人形のように抱き上げた。


「お疲れ様」

「……」


 抱き上げられた事に対しての不満を目線でサラに示すと、サラはニコッと笑って俺に治癒魔法を掛けてくれた。


「おぉ……ありがとう」

「よく頑張ったね」


 あれ、なんかサラいつもより真面目だ。


「ふあぁ〜〜っ……」

「眠いだけかよ」

「ふふっ、最下層にずっといて湧いてくるボスを常に倒してないといけなかったから疲れちゃった」


 それは……なんとも大変なお仕事だったようで。


 キャンプ地に全生徒が集まると、先生が大声を出した。


「では皆疲れているだろう! サラ先生が転移で旅館まで送ってくれるからな! 帰ったらしっかり休むように!」

「「はい」」


 生徒達の掛け声も最初の頃と比べてかなりテンションが低い。それぞれ暇で暇で疲れてるんだろう。


 さっさと帰って風呂入って、飯食って寝る。そして明日は帰る。これで終わりだ。──これで終わりのはずだった。

ダンジョン内での戦闘を詳しく書いていこうかなと思ったんですが、ここのダンジョンの敵はシンシアにとって蟻のようなもので対して苦戦する訳でもないので省きました。

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