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2話 生活の始まり


「……ぅ……ん? ここは……?」


 目を覚ますと知らない天井を前に暖かいベッドで眠っていた。とても寝心地が良くこのまま二度寝したいところだが、まずは起きて状況確認だ。

 確かあの女神が俺の保護者になるとか言って……そこから記憶があまりない。というか手を掴まれた瞬間に気を失ったのだろう。


──ギシッ

「シンシア起きた!?」


 ベッドから外に出ようとした時の軋む音に気づいたのか、あの女神が扉を勢いよく開けて部屋に入ってきた。


「あぁっ愛しのシンシアッ! 今日から私がシンシアの保護者、お母さんよ」

「あ、あぁそう……お母さんね」


 あの女神の神々しいオーラはどうしたのだろうか。今じゃ本当にただのお母さんのような雰囲気で、そこまで緊張する事なく話す事ができる。


「貴女の為に世界を少し弄ったの。今の貴女はこの世界じゃ最強クラスの魔術を使えるわ」

「……マジか……」


 口に出す言葉が思い浮かばず、ただ今の状況に驚くことしかできなかった。


「素っ気ない態度も素敵よシンシア。私はこれから貴女の保護者として共に生活する事になったから、よろしくねっ」

「っ……よ、よろしく」


 この女神、見た目や笑顔は良いんだが頭が少し残念だ。しかしこんなに強力な味方がいるのであれば異世界生活も満喫できそうだな。


「今何時?」

「元の世界で言うところの8時よ。朝ごはんにする? それともお散歩? 今から学校に転校しにいく? 私の手にかかれば予定なんて簡単に調節できるわよ」


 本当に凄いなこの女神。俺の言うことなんでも聞いてくれるのか。


 ……ふむ。なら少しは夢を見ても良いってことだな、神様。


「じゃあ一緒に寝よう」

「っ!? よろこんで! 子守唄を歌ってあげるわね」


 女神は俺をベッドに寝かせると、一緒の布団の中に入ってきた。やはりなんでも言うことを聞いてくれるらしい。

 それなりに大きいベッドではあるが、女神の胸はかなりの大きさを誇っている。寝返りを打った勢いでパフパフしてもらえる程だ。これは偶然を装って触るしかない。

 って、女神が子守唄を歌う為に喉の調子を整えてる……。歌はいい。


「子守唄は良いから話したいんだけど」

「あらそう? どんな話が良いかしら」


 んふふ〜と微笑みを浮かべる女神は本当に女神だ。こんなに女神的な女性が前世の俺の恋人だったらどれ程幸せだった事か……。


「名前とかあるのか?」

「私の名前はサラティーナ。サラお母さんでもママでも、好きに呼んでいいわよ」

「じゃあサラ」

「はぁ〜っっ……幸せ」


 名前を呼んだだけで身震いをして頬を赤く染めている。どんだけ俺の事好きなんだ……。


「サラは俺の言うことってどの範囲まで聞いてくれるんだ?」

「ん? そうねぇ〜……」


 人差し指を立ててじっくり考えている姿も女神並みに美しい。女神なんだけど。


「世界を滅ぼすとか、人を殺すとか以外なら基本的になんでもいいわね。あ、私より強くするなんていうのは不可能だからそれも無理かな〜」

「ってことは……本当になんでもいいのか?」


 ガードが薄いというか、俺が元男なのを分かっていて言っているのに凄いな。


「胸とか興味あるでしょ」

「うっ……」


 ニヤニヤと笑いながら大きな胸を近づけてきた。


「触ってもいいのよ?」

「……ね、寝る! おやすみ!」

「うふふふっ、遠慮しなくていいのに」


 やはり俺にはそんな勇気なんてない。

 なんとか寝返りをして逆方向を向いて目を瞑ると、サラは俺の横腹らへんに手を当ててリズムよくポンポンと軽く叩いてきた。

 本物のお母さんにされているみたいで、とても安心する。


「今日から私と生活するんだから、緊張しなくていいのよ」

「……分かった……」


 このポカポカと心から温まっていく感覚。これは女神の力なのだろうか。しかし、家族の暖かさにも感じる。

 安心感に包まれて眠くなってきた俺は、瞼を閉じて再び眠りについた。


◆◇◆◇◆


「んん〜……」

──ふにっ


 ……んっ? 寝返りを打ったら何か柔らかい物が……ほっぺたに当たってる……。


 嫌な予感を感じつつ目を開けると、そこには眠っているサラの豊満な胸が俺の頬を優しく受け止めていた。


「っ!!」


 お……お、お、おおおおっぱいってあんなに柔らかいのかっ……。

 初めての胸の感触に感動を覚えると同時に、とんでもない事に気づいてしまった。


 この女神、ノーブラだ。


「あら……おはようシンシア」

「おっ、おはよう……」


 胸を触ってしまったのはバレていないだろうな。いくら見た目が可愛くてサラになんでも許されるような存在だとはいえ、中身が男である限りプライドという物が存在する。俺は自分のプライドを最後まで守り抜く。


「サラはまだ寝てていいよ」

「そう……? じゃあお言葉に甘えて……」

「この家探検してきていい?」

「うんいいよ……危ない物には触らないでね」


 眠そうなサラを寝室に残し、これからサラと共に過ごすこの家を探索することにした。

 天井で分かるのだがこの家は木造だ。耐久性は……まあ大丈夫だろう。


 寝室を出てすぐにはリビングがあった。向かい合って座る大きなソファと小さなテーブル等は、明らかに俺とサラ二人専用の家具ばかりだ。

 リビングとキッチンは同じ部屋にあり、意外と前世と同じような料理道具が置いてあるが、調味料や食材なんかは少ない。


「ん〜?」


 キッチンに立ってリビング全体を見渡して何か足りないなぁ〜と思っていたのだが、テレビか。流石に異世界にテレビはないもんな。

 その代わりに壁の棚には沢山の本が並んであった。その殆どが日本語で、子供向けの本ばかり。


「日本語は女神のことだからそういう世界なのだろうが、子供向けの本しかないのは問題だなぁ……」


 もっとしっかりとしたような本を買いに行きたいな。この世界に本屋はあるのだろうか。


 更に家の探検を続ける。

 リビングから外に出ると、短い廊下が現れた。真っ直ぐ行くと玄関があり、途中には扉が二つ。


 片方の白い扉を開けるとそこはトイレだった。


「そういや俺女になったんだけど、トイレってどうしたらいいんだ……?」


 そもそも実際に女の身体なんて見たことがない。


「まあ、行きたくなったらその時で対処するか」


 今度は反対側の扉を開ける。どうやらトイレの向かい側にバスルームがあるようで、入ってすぐは洗面台。そして目の前には透明で中身丸見えの浴槽。結構広い。


「シャワーは無いのか」


 魔法でどうにかなるからだろう。


◆◇◆◇◆


 家の探検を終わらせた俺は、再び寝室に戻って寝ようと思ったのだが……。


「あ、私もうすぐそっちに行こうと思ってたの」

「なっ、何してっ!?」


 寝室に入ると、そこには上半身裸で今から服を着ようとしているサラの姿が……。

 初めてこの目で見る美人の裸に、俺はその場で気を失ってしまった。

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