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25話 お花畑


 クラリスさんと出会い、俺とアイリとアデルとサラは花畑へ向かった。

 クラリスさんは後ろ姿もとても綺麗で、ローブの下から少し見える足だけでも美人と分かる歩き方。きっとどこかの貴族の方だろうと俺は思った。


「クラリスさんはこの国に住んでるんですか?」


 アイリがそう聞くと、クラリスさんはこちらを振り向いた。それだけでも綺麗だ。


「住んではいないけれど、よくこの国に遊びに来るからオススメの場所は知り尽くしてるわ」

「じゃあ私達にオススメの場所とか案内してもらってもいいですか!」


 サラは相手の迷惑を考えずに……。


「ええ、いいですよ。シンシアちゃんとも仲良くなりたいですし」

「っ……」


 クラリスさんは俺の目を見て微笑んだ。それだけで言葉を失ってしまい、クラリスさんの綺麗な笑顔に見惚れる。


「もうお花畑に到着しますよ」


 そう言われて我に返った俺は、目に映る花畑に気づいた。

 花畑をバックにクラリスさんの後ろ姿が更に映える。


「結構広いんですね〜」

「お花の手入れをする人が1度に4人も来るのだけど、それでも少ないくらい広いんですよ」


 緩やかな坂道に赤と薄桃、そして白の綺麗な花がグラデーションを作って並んでいる。まるでそれぞれの花で一つの絵が出来ているようだ。


「シンシアちゃん中に入ってもいいみたいだから入ろ!」

「あ、うん」


 アイリと手を繋いで花畑の中へ向かった。


「気をつけてね〜!」


◆◇◆◇◆


 花畑の中に入ると、先程から少しだけ感じていた花の匂いが更に強くなった。


「この花なんて名前なんだ?」

「ん〜書いてないね」


 不思議な匂いだ。多分今までの人生で嗅いだことのない初めての匂い。この世界にしかない花だろう。


「触っていいのかな」

「他の人も触ってるし、千切らないなら良いんじゃないか?」


 アイリは薄桃色の花に触ると、ビクンと手を引いた。


「どうした?」

「う、ううん何でもない。変な感触だったから」

「変な感触?」


 俺も花に触ってみる。


「……うっ、なんか……なんとも言えない感触だな」

「ね?」


 毛虫のような、バッタの背中のような、ゴキブリのお腹のような感触だ。そのどれも触った事がないのだが想像するならそんな感じである。

 自分で想像して気持ち悪くなってきた。あまりこの花に触れたくない。


「鳥肌立ってきた」

「戻るか」


 見た目は綺麗な花だけど、触ってみると表面が気持ち悪いという事が分かった。すぐにサラとクラリスさんの元に帰る。


「ほら、すぐ帰ってきたでしょ」

「ほんとだ〜! どうして分かったんです?」


 何やら俺達が帰ってくるのを分かっていたかのようにクラリスさんは話している。


「この花は特殊なんです。身を守る為に不思議な匂いを放出して、その匂いを嗅いだ人が花に触れるとその人が苦手な感触。食べたら苦手な味を与えるんです」

「最初から教えてくださいよ〜!」

「うふふふふ、体験する事も大事なのよ」


 だから鳥肌が止まらなかったのか……俺あの花嫌いだ。

 しかし、クラリスさんは悪戯っ子なのかな。そこもまた可愛いな。


「私も触ってくる!」


 サラが1人で走っていって、花に触れた。


「ギャアアアアアアア!!!」


 触れた瞬間、サラは大声で叫んで触れた手をぶんぶんと振り回していた。そして先程とは明らかにテンションの落ちたサラが帰ってきた。


「す、凄かった……」

「一体どんな感触を体験したんだ……」


 ある意味気になるところだ。サラが叫ぶほど嫌いな感触なんて想像すらできない。

 まだチラチラと触れた指先を確認しているし、相当酷かったんだな。


「アデル、お前も触ってこい」

「お、俺はいいよ! 花とか興味ねぇし……」


 アデルは俺達の反応を見て怖気付いているようだ。


「じゃあクラリスさんですね。花の効果を知っていてシンシアちゃん達に教えなかったですし」


 サラがニヤリと笑ってクラリスさんにそういった。


「確かにクラリスさんが触ってないのはズルイですよ」


 アイリまでそういうと、クラリスさんは困ったような表情をした。


「わ、私は触ったことありますし。ほ、ほら! 次の観光場所に案内しますよ」

「えいっ」


 サラは地面に落ちていた花を集めた物をハンカチで持って、クラリスさんの顔にペタンと当てた。


「あっそれは流石に……」


 クラリスさんはしばらく硬直した後、涙目になりながら白目を向いて倒れた。


「クラリスさんっ!?」

「失神してる……」

「サラ、後で謝れよ」

「うぅ〜……とりあえずどこかに連れてかないと」


 サラは失神しているクラリスさんを抱えると、どこか座れる場所を探すようにしばらく彷徨いた。

 お、俺の位置からだとクラリスさんのローブの中が見えて……美脚と黒のパン──


「あうっ」


 アイリに抱き抱えられて絶景を堪能する事が出来なくなってしまった。


◆◇◆◇◆


 なんとか団子屋のようなお店の前の椅子に座って、サラはクラリスさんの意識を取り戻させた。


「ぅ……」

「クラリスさんごめんなさい……」

「だ、大丈夫ですよ。ただ顔に来るのは予想外でした……」


 クラリスさんが自分の頬に触れて身震いをした。


「シンシアちゃん、お口直しにちょっといいですか?」

「ん? っ!?」


 突然クラリスさんが自分の頬を俺の頬に合わせてきた。

 柔らかいクラリスさんの肌が直に…………。


「シンシアちゃんの頬はとても触り心地が良いんですね」

「そ、そっすか……」


 可愛くて良かった! 幼女で良かった! こんな美人なお姉さんのほっぺを堪能できるのは幼女だけ! 今だけはこの身体に感謝しなければな。

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