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13話 動けない


「シンシアちゃんとアイリちゃんは何にする?」

「パフェで。でも本当に食べさせてもらっていいんですか?」

「いいのよ。だってアイリちゃんはシンシアちゃんと一番仲が良いんだもの」


 はぁ……こんな恥ずかしい格好で人が沢山いる飲食店に……それも友達のアイリに見られて……黒歴史確定だ。


「シンシアちゃん何食べる?」

「ハンバーグ……」


 しかしお腹を空いているのでしっかり食べる。

 客に顔を見られないようテーブルの上に伏せて食事が運ばれてくるのを待機している。しかし、どうしても俺について話している客の話が耳に入ってくる。


「あの子可愛いね〜」

「眠いのかな?」

「可愛い服着てるよね」


 可愛いなんて言葉この世から消えてしまえばいいのだ。俺は可愛くなりたいとはこれっぽっちも思っていない。


「シンシアちゃん起きて〜」

「起きてるよ……サラは何食べるんだ?」

「私もシンシアちゃんと同じハンバーグにしたよ」


 そうかい、どうでもいいや。

 食事が運ばれくるまでしばらくアイリと話そうと思ったのだが、やはりこの格好だと話しずらいな。


「な、なぁアイリ」

「うん?」


 アイリの方を見ると、こちらをニコニコとした顔で見ていた。その目は周りの大人が俺を可愛いと言っている時の目と同じだ。


「そんな目で見ないで……」

「だって可愛いんだもん。サラ先生が羨ましいですよ。こんなに可愛いシンシアちゃんと一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしてるんでしょう?」

「そうなの〜! お風呂で身体を洗ってると、シンシアちゃんったら擽ったいのか身体をピクピクしちゃって、もう可愛すぎて死んじゃう!」


 それは他人に洗われるのに慣れてないから擽ったくなるのは仕方ない事だ。でもそんな少しの動きで可愛いなんて言ってたら俺はこの先一生動かないぞ。


「あのさ、俺可愛いとか思われたくないんだよ」

「大人に見られたい気持ち分かるわよ」

「明日はクールなファッションで学園に行こうね!」


 あぁ……俺が喋ったらまたこいつらの遊び道具になってしまう。しばらく黙っているか。



「お待たせしました〜」


 話しかけられても無視して耐えていると、やっと店員さんが3人の料理を持ってきてくれた。さっさと食べてさっさと帰ろう。


「頂きます」

「どうぞ〜」


 早速ハンバーグを小さく切り分けて食べやすいサイズに切り分ける。見た目も匂いも、とても食欲をそそる。この世界ではどんな肉を使われているのだろうか。

 と、食べる前に。


「あの〜……店員さん、いつまでそこにいるんですか? それとアイリとサラはなんで俺の方をずっと見てるんだ?」

「ん? それはシンシアちゃんがモグモグしてるところを見る為だよ」

「そうだよシンシアちゃん。店員さんだってシンシアちゃんが気になるのよ」


 俺は食べる時でさえも細かい動作を見られるのか……こんな事なら誰にも見向きもされないブサイクになった方が幸せに生きられるのかもしれない。


「お願いだからゆっくり食べさせて」

「仕方ないなぁ〜……すみませんね、店員さん」

「いえいえ、ごゆっくりどうぞ」


 なんで俺が悪いみたいになってるんだろうね。


◆◇◆◇◆


「満腹!」

「シンシアちゃん綺麗に食べるね。残したら私が食べようと思ったのに」


 まあ昔から残さず食べなさいって言われてきたからな。これでも結構無理して食べた方だ。


「口の周りにも着いてない……」

「そこ残念な顔するところじゃないよな?」

「サラ先生達はこの後どこかに行くんですか?」


 アイリが水を一口飲むと、荷物をまとめながら質問してきた。


「う〜ん、どこに行こう」

「俺はもう帰りたいんだけど」


 そういうと、サラは少し考えた後に一度頷いた。


「そうだね。シンシアちゃんは今日沢山動いたし、帰ってのんびりするよ」


 よっしゃぁ……やっと帰れる。帰ったら横になって本でも読むか。


「じゃ、じゃあ私も家に行っていいですか!?」

「うんいいよ〜」

「え゛っ……アイリ家に来て何するんだ? 俺は寝るけど?」

「ちょっとサラ先生とお話したいし、今の内に家の場所が分かれば遊びに行けるかなって」


 あぁ、なるほど。それなら別に俺には問題ないだろう。


「分かった。じゃあ帰ろう」

「シンシアちゃんの寝顔一緒に見ようね!」

「やっぱりそうなるのか……」


◆◇◆◇◆


 久しぶりに外に出た気がする。太陽の位置もここに来る前よりかなり移動しているし、もうすぐ空が赤くなるのではないだろうか。


「はぁ〜っっ……眠い」


 軽く背伸びをして店内で支払いを済ませているサラを待機する。


「あ、そうだアイ……リ?」


 ふとアイリに話しかけようと横を見ると、そこにアイリの姿は無かった。

 ついさっきまで家に来る気満々だったアイリが突然いなくなる? まさか誘拐?


「んぐっ!?」


 そう思った瞬間だった。突然背後から口を塞がれ、魔法か何かであっという間に眠らされてしまった。


◆◇◆◇◆


「────ん! シンシアちゃん!」

「んっ……っ!? アイリ! ここは?」


 目を覚ますと、俺とアイリは手足を拘束されて薄暗い部屋にいた。暗くて周りがよく見えないが、アイリの姿だけははっきりと見える。


「分からない。突然背後から眠らされて気づいたらここにいたわ」

「お、俺もそうだ……誘拐?」

「かもね。でもサラ先生がすぐ助けに来てくれるわ」


 そ、それもそうだな。アイリは知らないけどサラはあれでも女神だ。すぐ俺達の居場所を見つけて助けに来てくれる。

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