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112話 ありがとう


 サラと一緒に眠って、久しぶりに充実感を感じていたシンシアはバッチリと眠れた。

 サラの匂いや身体のシルエット、そこに存在しているというだけでシンシアは満たされる。それだけ今までサラに依存していたんだなと思う程に、シンシアはサラの事を考えていた。


 夜中に目を覚ますと、サラはシンシアの腕をキュッと握って幸せそうにその感触を感じている。

 しかしその顔はどこか寂しそうでもあった。何故か目元が赤くなっており、シンシアの手を握ったまま離さない。


 サラの手を優しく撫でるとサラの表情も少しだけ優しくなる。そしてまたシンシアは眠りについた。


◆◇◆◇◆


 その日の朝、シンシアが目を覚ますとサラの姿が無くなっていた。

 早起きだな〜と思いつつ身体を起こすと、枕元に1枚の紙が置いてある。それを手を取って見てみると、目を疑うような事が書かれていた。



──私はシンシアちゃんのお父さんに頼まれた事、シンシアちゃんを無事にお父さんの元に届けるという役目を果たしたので、もうここに居る理由が無くなりました。

 本当はもっとシンシアちゃんと一緒に居たいです。色んな所を旅して、いつかシンシアちゃんが大魔導士になって。身体は成長しないけれど、人間として立派に成長していくシンシアちゃんの姿を見届けたかったです。

 でも、私は女神の仕事に戻らないといけません。シンシアちゃんと、その家族。お父さんとお姉さん。他にも沢山の味方が付いています。きっとお母さんを見つける事もできるはずです。

 遠くから応援しています。──サラティーナより



 それはサラからの別れの手紙だった。

 最初、シンシアはこの手紙が何かの冗談。サラの悪戯だと思って施設の中を探し回った。鼻の良いルーさんにも協力してもらったりしたが、結局サラはどこにも居なくなっていた。

 荷物も、何もかも全て。


 階段に座って頭を抱えるシンシアと、その横で背中を優しく撫でるルー。


「落ち込む気持ちは分かるっすよ。ウチもまだ女神様とは沢山遊びたかったっす」

「…………なんで……記憶が戻ったばっかりなのに……」


 もっと早く記憶が戻っていればもっと沢山サラと話して、もっと遊んで、サラの笑顔が見れたというのに。

 なんで何も言ってくれなかったんだ。


「シンシアちゃんの記憶が戻ったから女神様は帰ったんだと思うっすよ」

「……サラとは……本当にもう会えないのか?」

「それは分かんないっす」


 会いたい。サラがいない人生なんて寂しすぎるし、何も面白くない。


 サラがいなくなってやっと気付いたこの気持ちで、シンシアは今まで何もしてこなかった自分を恨んだ。

 何度も助けてくれて、いつも一緒に居てくれて。お父さんに会うまで保護者として守ってくれて。それなのに俺は何もしてこなかった。

 もう1度会えるなら、せめてありがとうという気持ちを伝えたい。


「シンシアちゃんどうしたの?」

「セシリータさん……」


 たまたま通りかかったセシリータさんに、サラがいなくなった事を伝える。


「それは……大変ですね。上手く言えませんが……サラさんの代わりになるような存在って、居ますか?」

「いない、いる訳ない……俺はもう……」


 サラが居ないと生きていけない。

 そう言おうとしてサラが書いた手紙を読み返した。


「……代わりはいないけど、ここには味方が沢山いるんだよな……」

「そうだね。ここにいる皆シンシアちゃんの味方だよ」

「…………でもやっぱり無理だよっ……俺っ……サラが好きなんだっ…………」

「シンシアちゃん……」


 シンシアはその場で泣きながら、ルーとセシリータに本音を語った。

 今までの感情を全て吐き出し、それを親身になって聞いてくれている2人が凄く暖かかった。


 泣きながら喋るシンシアの背中を優しく撫でて、涙を拭いてくれて。そこまでしなくていいのに2人は優しくしてくれる。今感謝するべきなのはこの2人なのかもしれない。


 全てを吐き出したシンシアは息を整えた。


「……2人共ありがとう……」

「良いんだよ。何かあったらいつでも相談して」

「そうっすよ! ウチらはシンシアちゃんの味方っすから!」


 泣いて少しスッキリした。頼れる人も出来た。

 でも、まだサラがいなくなったという現実を見ることができない。嘘であってほしい。


 シンシアは泣き顔を見られないよう、仮面を付けてローブを深く被り。自分の部屋に帰っていった。

サラは今後必ず登場させます。この物語のほぼ主役と言ってもいい存在ですから、安心してください

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