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107話 感情


 浅い眠りから目を覚まし、ここはどこだと一瞬不安になる。そしてすぐに寝る前に話した事を思い出して、心臓を落ち着かせる。

 ベッドの横にあるテーブルには、これでもかと果物やお菓子が積んであった。


 こんなに食べられる訳がない。そう思いつつ美味しそうなお菓子に手を伸ばすと、気付けば全て食べ切っていた。

 もう無くなってしまったのか。そう思う程の余裕があり、夢中で食べていた自分を想像して顔を熱くする。両手で頬を抑えると慣れない自分の手の感触で身体が違和感を感じ、熱くなっていた顔、身体まで寒気がして鳥肌が立つ。


「……」


 少し気分転換でもしようとベッドから降りて、窓から外の景色を覗き込んだ。一面真っ白のその景色は、自分の心までをも白く清らかにしてくれるような気がして、不思議と不安が無くなった。


「冷たい」


 足の裏に冷たいという感覚を感じ、ベッドの方を見ると緑のスリッパが置いてあった。ちゃんと履かないと足も冷えるだろう。

 シンシアは素足でペタペタとベッドに近付き、足元のスリッパを履いて廊下の方に視線を向けた。


 あの扉の奥にサラさんやカゲイさんが消えていった。シンシアにとっては未知の世界だが、心の中にある好奇心が進めと騒いでいる。

 この部屋に誰もいない事を確認し、ゆっくりと足音を立てないよう扉へと近づく。もしも誰かに1人で彷徨いているのを見られてしまえば、安静にしなさいと言われてベッドに寝させられそうだ。


「そ〜っ……」


 扉に手を伸ばすのと一緒に、口まで動いてしまう。しかしシンシアは音を立てないよう扉を開けることに集中していて、声が漏れていることに気づいていない。


──ガララッ

「ひゃうっ!?」

「ん?」


 突然扉が開いて大男が現れた。カゲイさんだ。

 シンシアはびっくりしてその場に尻もちをついた。


「何してたんだい」

「……何も……」


 カゲイは子供のイタズラを見守るような目でシンシアに手を差し伸べた。


「……ありがとうございます」


 その手を掴んで立ち上がったシンシアは、お尻についたホコリをペシペシと払ってカゲイに頭を下げる。


「うん、やっぱり礼儀正しいな」

「……え?」


 その様子を見たカゲイは満足そうに笑った。シンシアにはそれがどういう事なのか理解できず、頭をチョコンと傾ける。


「この施設探検してみる?」

「探検……しますっ!」


 探検と聞いて、先程までの好奇心が再び熱を持った。


「よし、行こうか」

「はいっ!」


 カゲイが手を伸ばすと、シンシアは無意識にその手を握ってワクワクしながら廊下の外に出た。


「……? 行かないんですか?」


 手を握ってくれたシンシアに驚き、ぼんやりとしていたカゲイにシンシアが声をかけて意識を戻してやった。


「どっちに行きたい?」


 カゲイが選択肢を出すと、シンシアは右と左の廊下を交互に見てう〜んと唸る。

 どちらも見ただけでは何も変わらないただの廊下なのだが、シンシアはどちらを選ぶだろうか。


「あっち!」


 シンシアが指を差したのは左の廊下。


「おぉ〜流石だな。あっちには食堂があるんだ」

「えへへ」


 どうやらシンシアの物欲センサーが見事的中したようである。


 2人はまるで親子のように手を繋いで廊下を進んでいる。シンシアは目に入った物で不思議に思った物や気になった物が何なのか質問しながら、カゲイはそれに笑顔で答えながら、施設の中を探検していた。


◆◇◆◇◆


「シンシアちゃん笑ってる」

「記憶を失って歳相応の感情表現ができるようになったみたいっすね!」


 向かいの建物から、シンシアとカゲイの様子を見守るサラとルー。2人は笑顔で探検する2人の様子を見て穏やかな気持ちになっていた。


「平和っていいですね」

「記憶戻るといいっすね」


 フワフワと振り始めた雪がシンシアとカゲイの姿を隠してしまい、サラは立ち上がった。


「どこいくんすか?」

「お腹空いたから食堂に行くの」

「ウチも行くっす!」


 いつもよりテンションの低いサラを見て、ルーはテンションを上げてやろうとサラの腕を抱きしめて一緒に食堂へ向かった。

ちょっと描写を意識して書いてみました! 小説っぽくなりましたかね?

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