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104話 魔眼


「うぅ寒っ……っくしゅんっ」

「そ、それじゃあそろそろ行きましょう」


 シンシアがくしゃみをしたのを見てセシリータさんが歩き始めた。



 施設の裏側に来ると、上に登るハシゴが掛けられていた。ここからこの建物の屋上に登れそうである。


「屋上に登って魔法の練習をします」

「こ、怖いな……ハシゴちゃんと抑えててくれよ」

「大丈夫だよ。私が支えてあげる」


 これだけ高いハシゴだと途中で倒れないか心配だ。

 シンシアはゆっくりとハシゴに手と足を掛けて登っていく。サラのお陰で安定してはいるものの、上に登っていくとどんどん恐怖が膨れ上がってきた。


「ふ、ふぅ〜……大丈夫……大丈夫だ」


 そう自分に言い聞かせながらなんとか屋上に登りきると、その高さに驚いて足の力が抜けてしまった。


「あっぶな……」


 2階もある施設の屋上だ。ここから飛び降りたら足の骨折だけで済めば良い方だ。死ぬかもしれない。


「よいしょっ」


 下からサラも登ってきて、その後に続いてすぐにセシリータさんもやってきた。


「あれ? シンシアちゃんもしかして高い所苦手なんですか?」

「ど、どうだろう……柵が無いからかな……」


 前世では高い所なんて大丈夫だったのだが、この屋上は小さな段差があるだけで柵が一切ない。

 少し凍った足元で滑ってしまえばそのまま落下してしまう。


「大丈夫だからね、シンシアちゃん」

「あ、ありがとう」


 なるべく屋上の真ん中に立つようにした。


「それでは早速ですけど、戦う時に便利な魔法のイメージや、難しいイメージの練習。魔眼の練習もしてみましょうか」


 魔眼と聞いたシンシアは、先程怯えていたとは思えない程目をキラキラと輝かせていた。

 中二病心を擽る『魔眼』という響き。これこそが大魔道士への道の第1歩だ。


「魔眼を先に教えてください!」

「そうですね。魔眼を覚えれば魔力の流れを見れるようになるので、イメージなんかも簡単になりますからね」


 魔力の流れが見える、ということは魔法陣を作り時なんかはとても便利だ。どのように魔力が吸い込まれて、どのように魔力が流れていくのか目視で確認して新しい魔法作りに役立つかもしれない。


「まず魔眼には様々な種類があるの。それは人それぞれなんだけど、シンシアちゃんならきっと凄い魔眼が使えるようになると思う」

「どうするんだ?」

「魔力の通り道に目を繋げるんです」


 そう言われてもさっぱり分からない。


「努力あるのみです! 詳しく教えるので頑張ってください」


 それからシンシアは、セシリータとサラの保護を受けて魔眼の取得の為に全力を尽くした。


◆◇◆◇◆


「うぅぅぅ目が痛い……」

「そこまで来たらもうすぐです」

「頑張って!」


 サラに背中を撫でられながら、必死に目に魔力を通す穴を開ける。

 といっても実際に穴が開く訳では無い。鬼門のような物だ。


「っっっ…………ッ!?」


 突然両目が破裂するような激痛が走って、喋る事ができない程全身に力が入る。

 両目を手で抑えてその場で小さくうずくまり、必死に痛みに耐える。


「くぅぅぅっっ……」


 喉奥から変な声が漏れる程力を入れすぎている。それ程の激痛が両目に来ているのだ。失明するのではないだろうか。


 しかし、その痛みも段々と和らいできてシンシアの呼吸も落ち着く。


「……あ……霧みたいなのが見える」

「そう! それが空気中の魔素! 自分の手足を見てみて!」


 セシリータさんに言われて自分の手を見ると、まるで血管のように青白いオーラのような線が指先まで流れていた。

 実際に目に見える、という訳ではなく。脳に直接情報が入ってくるのだ。まるで目でスキャンして中身を脳で分析しているようだ。


「シンシアちゃん目が黄色くなってる!」

「それにネコ科動物のように細くなってるでしょ? この魔眼は暗闇でも小さな光を集めて視界を良くできるみたい」


 ん、夜は基本的に寝てるから必要ない。


「その魔眼に更に魔力を込めてみて」

「い、痛くならないか?」

「大丈夫よ」


 ビビりつつも、言われた通り魔力を流し込む。


「……おぉっ!?」


 その時、シンシアが見た光景は周りの動きがスローモーション。いや、完全に停止している光景だ。

 ただの魔眼。しかし、その能力は世界にまで影響を与えて完全に自分以外の時を止めた。


 試しにサラの頬を抓ってみるが、反応する様子はない。


 すぐに魔眼の能力を止めてサラ達に報告する。


「時が止まった!」

「時が……相当珍しい魔眼ね」

「よっしゃぁっ!!」


 この能力があればバレずに美人の胸を触る事ができる!

 シンシアはこっそりと別の喜びを感じていた。

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