説明回かよチクショウメ!!
私はフィ・ロートと言う魔術師である。
此度私は、母国のイシス帝国からサンティール王国へ向かって旅をしている途中である。
何のための旅か、それはイシス帝国からサンティール王国への魔法技術提供である。
イシス帝国は魔法文明により栄えた国である。そしてサンティールは蒸気機関文明により栄えた国である。
この両国なのだが、それぞれ違う技術により栄えていたのだが、近年その発展が目覚しくなく別の技術を取り入れたいと思っていたのだ。
それゆえに両国間で協議が持たれ相互技術提供と言う形になったのである。
そしてイシス帝国からのサンティール王国への魔法技術提供者と言う白羽の矢が当たったのが私、フィ・ロートである。
そしてイシス帝国からサンティール王国へはその道中工程は片道半年はかかり……従者も案内役もつけていなかった私は今、絶賛迷子中である!!
そして正直食料が不味い!!もう無いのである!!めぼしい街が見つからず物資補給が出来なくなって早一月!超サバイバル生活をしている私である!!……今日も野宿か、もう慣れてしまったな。
早速この近くで野営の準備に入ろう……か?
……あれは村じゃないのか?小さいが……宿泊施設はあるのだろうか?あれば久しぶりにベットで寝れるな、駄目もとで行って見るだけ行って見るか。
◆◇
立ち寄って見た村は酷く静かだった。
人の気配が感じられないな……廃村か、しかしそれにしては最近まで使われていたような……
「誰……か、助…け…て……」
誰かの助けを求める声がした。
あの家の方向か。私は声のしたほうに進み家に入っていく、不法侵入?知った事か!!
家に入ると一人の少女がぐったりと倒れていた。
「大丈夫か!君!……くそ、意識が無いか」
どうやら極度の脱水症状のようだ、幸い所持品で経口補水液は作る事が出来る、注射針は無いな……仕方ない、時間は掛かるかもしれないがゆっくり飲ませるしかないな。
私は少女を運ぶため持ち上げようとした時少女の手足が見えた……真っ黒に染まっていたのだ。
「馬鹿な!なぜこの国でこの症状が起こっているのだ!?これは魔力の過剰蓄積症状だぞ!!」
まず魔力とは何か、私が使うような超常現象を起こす魔法に使うのが魔力なのだが、もっと言ってしまうのなら生きていく為に必要なもう一つの生命エネルギーといえる。つまり、私達魔法使いはこの魔力と言う生命エネルギーを使い、不可能を可能にしているといえる。
そして魔力とは大なり小なりどんな生命体にも存在する、そして普通は魔力は常に消費されており、そして常に生成され蓄積されている。普通の人間は常に一定の魔力が保たれているし自身の魔力上限を超えて肉体に魔力を取り入れることはまず無いのである。
では彼女の魔力の過剰蓄積症状とはどんなものなのか、言ってしまえば己の肉体の魔力上限を超えて何かしらの要因で魔力が増え続けている状態である。
肉体上限を超えて魔力を摂取を続けると手足が黒くなり、心臓あたりまでこの黒色に染まると肉体強度の限界を向かえ細胞が壊死し肉体が腐敗し崩壊していくのである。この際、体内の過剰魔力濃度によりすさまじい熱量を発生させる。
ちなみに、魔力が枯渇した場合、魔力欠乏症状となり、肉体が極端に冷えその後細胞結合力が無くなり液体となり、その生命体は死亡する。我々のような魔力を行使するものにある現象で、魔術師、魔法使いはもっぱら此方のほうを注意する。
私は彼女の状態を確認した、まだ心臓までは黒色に染まってはいない、この状態ならばまだ処置すれば助ける事も可能だろう。
この症状の治療方法は大きく三つ。
一つは魔力の蓄積できるキャパそのものを増やしてしまう事である、しかしキャパを増やすためには訓練などによる長期的な計画が必要なので現状は不可能である。
二つ目は魔力放出量を強制的に上げて魔力量を適正値に戻すと言う方法だ、しかしこの方法には問題がある、無理矢理放出量をあげた場合その後元の放出量に戻せなくなるのである。
ここで問題になるのがどういう過程で魔力の過剰蓄積状態になったのかと言う事だ、単純に魔力の生成量が増えたがための症状なら、放出量上昇で釣り合いが取れるの様になり問題がなくなる、しかしもしこれが外部摂取による症状の場合、放出量を上げる事で今回は症状を改善できるが今後は放出量のみが多くなり常に魔力枯渇症状に悩む事になってしまうために懸念がある。
一番いいのは三つ目の方法でエリクシルを与える事なのだが……今はエリクシルの持ち合わせが全くない、さらにこの場で作る事も不可能……必然的に選択肢は二つ目しかなくなるのである。
さらにこの二つ目の方法には問題がある、魔力放出量を外部で強制的にあけるには体の黒くなっていない部分に魔法陣を彫らなければならない……つまり刺青である。
彼女の場合この陣が彫れる部分が胸の中心……既に心臓の上位しかないのが問題だ。
後、この方法をとった場合、黒色に変色した部分は一生黒色に染まったままなのも問題である。
つまりこの少女は、助かったとしても一生手足は黒色のままで胸には魔方陣があることになる、この年でそうなるのは惨いである。
命を天秤に掛けることは出来ない事だ、選択の余地はない、それでも私は迷ってしまう……本当にこの処置を施してもいいのか?
そして迷っていたが私は覚悟を決めた、いや、はじめから決まっていたのだ……この少女は『助けて』と言っていた、そして私はこの少女をどんな形にしろ助ける事が出来る。ならば助けようではないか、そしてこの少女の面倒も私が見よう。何、どうせ新天地で生活するのだ。子供の一人二人増えたところで変わりはない。
少女よ、聞こえていないだろうが安心するといい!
私が助けると決めたのだ!必ず助けて見せようではないか!
私は少女を助けるための処置を施していった。