方針
翌日、二人は財布を覗き込みため息をついていた。
その大きな理由として、先日自分たちに絡んできた男を毒をまいた犯人として通報した際の謝礼金が大量に転がり込んだこと。
それを見たナイアがアカネに金銭感覚と金の単位を教えるという理由で散在してしまったこと。
そして、今晩の宿代すら残っていないという事が原因だった。
「ナイア……」
「アカネさん、昨日のお酒おいしかったですよね」
「うぐ……」
「あの焼き鳥、思い出すだけでもよだれがあふれますよね」
「ぐ……」
「お魚もしっとりホクホクでおいしかったですね」
「……」
「あれ全部合わせるとこの宿に半年泊まれる金額でした」
「…………出来心でした」
この件に関してアカネに全く責任がないわけではなく、むしろおいしい物を食べて、おいしいお酒を飲んで、気分がよくなり追加で料理を注文してを繰り返していたのは主にアカネである。
それを止めなかったナイアも同罪と言ってしまえばそれまでだが、酔っぱらった挙句脱ごうとしたところを羽交い絞めにして、さらに運よく、もしくは運悪くアカネの下着を見てしまった男たちの記憶を引き抜いて、最後には宿までアカネを運んだナイアは今回一番の被害者でもある。
ただし言いだしっぺがナイアであり、散在をしようと最初からもくろんでいたことも事実なのだがそれをアカネが知る余地はない。
「とにかく、今日中に宿代を稼がないと大変なことになりますよ」
「……何か案はあるの? 」
アカネの持っている案は手持ちの道具を売ること。
もしくは早々に宿に泊まることをあきらめてナイアからもらった家に引きこもるこの二択だ。
「身体をう……いや冗談ですから。
だからその刀は降ろしてください」
「次は当てる」
「まったく、冗談のきかない……。
そうですね、まあファンタジーの王道ですがモンスターを狩ってお金をもらえる機関があります。
そこに登録してお金を稼ぐのが一番早いのですが……」
「何か問題? 」
「はい、そこに登録するにはそれ相応の実力を示す必要があります。
そのためには既定のモンスターを狩ってくる必要があります。
例えばこのあたりなら下は毒ネズミ20匹から、上はウッドタイガーです」
毒ネズミは歯に毒を持ったネズミであり、非常に繁殖力が高く何でも食べる。
そのため家の屋根裏などで繁殖された際には一家全滅という惨事も起こっている。
またサイズも通常のネズミに比べて巨大で、人間の頭部程度の大きさである。
反面、力はさほど強くなく特筆するほど素早いわけでもないので1対1の勝負であれば装備が整った人間ならば勝てる。
故にある程度慣れていれば非常に狩りやすい存在でもある。
対してウッドタイガーは書いて字のごとく森林に生息する虎だ。
恐ろしく凶暴で、好戦的なモンスターであり繁殖力も高く群れで行動する。
故に人間単体で群れに挑むことは自殺と同義である。
反面その素材は優秀で、皮はしなやかで耐水耐湿保温に優れている。
その毛並は汚れにくく滑らかで軽くふき取るだけでも汚れを落とすことができる。
唯一の難点といえば肉が固く不味いという事くらいだ。
「それ以上は? 」
「討伐したとは認められない、というのが落ちです。
なにせ新人がドラゴン狩ってきましたとか冗談にしかならないですから」
「……平均的な奴で」
「じゃあホワイトドッグですね。
真っ白な犬で目が赤く、はく製にすると綺麗なんですよ」
ホワイトドッグ、アルビノのどーベルマンというのが一番近しいだろう。
その通常の犬と比べて高い機動力と攻撃力、そして凶暴性を誇る。
防具などの素材としては使いにくい物の、はく製や絨毯などの家具を作る際には非常に有用で重宝される。
「じゃあそれを狩ろう。
それで換金しよう」
アカネの決断により、今後の方針が決定した。




