説教
「それにしても……あの場面だと割と吠えるのは適切だったと思うのですがまだ駄目ですか」
現在宿の一室でナイアは地面に正座をしていた。
対してアカネはその正面で足をくみ頬杖を突きながら椅子に腰かけている。
その様相はふてぶてしい女王様といったところだが、小柄な体躯のせいで格好つけている子供にしか見えない。
「だめ」
「いやでも膨れ女とか顔のないスフィンクスやるとあたりを巻きこんでそれこそ死人が出ますよ」
「ファラオ」
「あれは……いやあれも十分死人が出ますから。
吠えるだけなら出力落とせばいいし一番簡単なんですよ」
ナイアの弁解を、一つ一つ丁寧に両断してく。
その様はまるで時代劇のお奉行様のようでもあった。
「……あ、足の感覚が……」
正座が始まって30分の時間が経過していた。
慣れない者にとっては30分の正座はかなりきつい物がある。
「……へぇ」
そう呟いたアカネはおもむろにナイアの足をつついた。
その行為にナイアの背筋が伸び、前かがみになりと上半身をくねらせて耐える。
「えい」
しかしそれもアカネの気の抜けた掛け声を最後に、ナイアはアカネに縋り付くこととなった。
アカネは椅子から立ち上がり、掛け声に合わせて絶賛正座中のナイアの膝に腰かけたのだった。
それは端から見れば仲のいい友人同士のじゃれあいにも見えただろう。
しかし、その実凄惨な拷問が行われていたといえる。
もし、この時ナイアの足元に洗濯板が置かれていたらその効果は絶大だっただろう。
「お願いしますアカネさん!
下りてください足が!脚が!
あぁ足に!脚に!
おも……ごめんなさい!
本当にごめんなさああああああああああ」
その日、小さな町の一角にある小さな宿から月に向かって吠えるような獣の悲鳴が響きわたった。
「ナイア、手加減というのは生かさず殺さず対象のみが基本」
「反省してます……」
アカネの折檻と正座による足のしびれは神話生物さえもひれ伏すことが証明された。




