ギルド
「ここがギルドです」
そう言ってナイアが連れてきたのは小さな酒場だった。
ギルド、つまりはモンスターを狩ってお金に監禁するための場所だ。
「酒場? 」
「表向きはそうですね。
酒場として一般客も来ますが基本はギルド関係者です」
中に入ってアカネは身構える。
酒と紫煙と男の汗、これらすべてを混ぜ合わせたようなにおいが鼻を突いたからだ。
「肉体労働ですからね、仕事の後の一杯はうまいものですよね」
そう言ってナイアはカウンターで酒を注文する。
「ブランデーミルク割二つ」
「……右の扉に入んな」
いわれるがままに扉の中に入って、そしてアカネは気づく。
女性が四人寝転がれる程度の小さな部屋だ、だが何かおかしい。
まずこれだけ小さな部屋なのに家具が所狭しと並べられている。
少なくとも壁が見えない。
「つまりこういう事」
一番古い箪笥に手をかけて、汚れのついた棚を引き抜く。
その中には鍵穴があった。
「はいどうぞ」
鍵穴に、ナイアから手渡された、どこから取り出したのかわからないが小さな鍵を差し込む。
カギは銀色だったが、鍵穴は黒かったことに違和感を覚えつつも鍵を回した。
それと同時にギギギッという錆びた歯車が回るような音とともに、真新しい箪笥が動き出す。
先があるようだ。
「この先が試験会場ですね。
ギルドは短期高収入ですけどいかんせん命のかかった仕事ですから全員を受け入れるわけにはいかないのですよ。
だからこうやって選抜をかけるんです。
もっとも、その選抜で死んでしまうようなひ弱もいますけどね」
ナイアはアカネに向けてそう笑いかけた。
その表情は、非常に楽しげであり、そして濁った眼をしていた。
思わず背筋に冷たい物が走ったアカネは、腰の刀に手を伸ばすがすぐに気を取り直してナイアのしりをたたいた。
「いたい!
ちょっ! アカネさん! 何かに目覚めそうなんでそのくらいで! ひぎぃ! 」
妙に艶めかし声が通路に響き渡ったが、その声を聴いたものは瞬間的に記憶を失い、廃人のようになったという。
なおアカネは妙につやつやとして満足げな表情を見せていたという証言が残っている。




