四,五、人々の思惑
サブタイトルはりん視点のお話は整数、それ以外は少数、とします。
マリシャスクラウド(malicious cloud)
直訳;悪意のある雲
人の嫉妬、怒り、憎悪、怨嗟などの負の感情の集合体というようなもの。
人にとりつき生気を吸い健康を害する。生命力の薄い老人についた場合や、霊的存在に対する防壁が薄い子供についた場合は人死にが出ることもある。
これ自体に意志はなく、標的を決めたらずっとそれを付け狙う。
なお、どうやって標的を決めているのかは不明。
生気を吸うことにより成長するが、これに核というべきものがないため徐々に霧散していく。
大きさは人の握りこぶしから頭程度。
ただし、人に使役されている場合は霧散しないため理論上はどこまでも大きくなれるとされている。
今回のモノは人の上半身程度の大きさ。自然にここまで大きくなることはほぼない。
SIDE、???1
今日、学校で低位の悪霊を使役している生徒がいた。
同じクラスの子だった。
最初は取り憑かれているのかと思ってたけど体調の変化が全く見られなかった。
大きさから言って相当なもので、
取り憑かれればすぐに害が及ぶようなものだから使役しているという事は間違いない。
うちの学校の人がそちらの道に落ちてしまっているなんて信じたくなかったけど、
私はこの目で確認したのだ。
同じクラスだからそんなことする人ではない、と言いたかったけど彼女の事は私はよく知らないのだ。
彼女の交友関係は私の知る限り一人しかいない。
その一人はうちの高校でかなりの人気者で、
ファンクラブができてるなどという噂があるくらいいろいろと知られている。
噂に疎い私でも結構知っているぐらいだ。
けどその彼女と普段一緒にいる今問題の子についてはよく分からない。
いや、知らないことは別にいい。私がやることは変わらない。
ただとっ捕まえて何をたくらんでいるのか聞くだけだ。
食堂で椅子にひっかかってこけていた様子から身体的には弱いようだ。
これなら一度家に道具を取りに帰らなくてもよさそう。放課後に捕まえよう。
SIDE、???2
あの子、‘マリシャスクラウド’に憑かれていたわね。
はあ、立場上直接手を出せないのがつらい。
連絡はしておいたけど今の状況じゃ最悪放置っていう結果にもなりかねない。
幸いなのは確認できる害が視認の阻害ぐらいっていうところかしら?
そういえばなんで害を受けてなかったのかしら?
見たところ何も訓練は受けてなかったようだけど・・・・・・。
考えられるとしたら何かの体質?
その体質を研究して他の人にも利用できるかも、
という方面から攻めたら保護にまでこぎつけられるかも。
けどその場合実験体にされないように注意しなきゃ。
【怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。】
昔の人の言葉だ。
こっちの世界の人じゃなかったようだけどこっちの人にとっては教訓になっている。
基本的に霊的なものは見られていないと興味をむけない。
そしてその興味はいい物ばかりとは限らない。むしろ悪い事の方が多い。
だから見える人はたいていこっちの人によって何らかの訓練を施されるはずなんだけどあの子は・・・・
私が自由に動けるようになったら私が面倒を見ましょう。
SIDE、???3
私の介入は望まれてない。
それでも気になるものは気になる。
だから普段からやきもきしている。
話してくれてもいいのに。
私は彼女を変人扱いしたりはしない。
私はそんなに信用ないかな?私はそんなに頼りないかな?
そういう身勝手な思想が頭の中に踊りだす。
自重しないと。
・・・・・・・介入は望まれていなくても、いつでも介入できるように準備だけはしておこう。