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四、保健の先生一人

一度教室に戻っておうかのロッカーから体操服を拝借。

クラスの知り合いから質問されるのを適当に流して保健室へ。

途中黒いのに邪魔されて壁にぶつかりそうになったり、階段を踏み外しかけたりもした。

階段を踏み外しかけた時はヒヤッとした。

はあ、よかった。怪我とかしずに保健室まで来れた。


こんこん

一応ノックしてから中へ

「失礼しまーす」

「いらっしゃい、どうしたの?ってああ、お昼をこぼしたのね。

 着替えるならベッドのカーテンを閉めて着替えるといいわ。

 洗濯機を回してあげたいんだけどさすがに一人のために動かすわけにはいかないの。

 洗剤はあるから手洗いで何とかしてね。」

「ありがとうございます・・・・・先生。」

先生の名前を呼ぼうとしたけど名前を忘れてしまってた。

「・・・・鈴村さん、もしかして私の名前忘れてる?」

「あ、あはははは、じゃあ着替えさせてもらいますね。」


私はベッドに逃げ込んだ

しかし回り込まれてしまった

「本当に忘れちゃったの?」

こわい、なんか真剣な先生がどことなく怖い。

「えーーっと・・・・・・・・山田先生?」

「・・・・・・・・天童子よ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ごめんなさい。」

「次は覚えておいてね。」

「はい。」

先生には何度かお世話になってる。少なくとも先生に名前を覚えられるくらいには。

けどしょうがないじゃない。保健室に来た時に先生が自己紹介とかしないんだから。

先生がこの学校に来た時に全校集会で自己紹介した時しか名前を聞かなかったんだから、

覚えてなくてもしょうがないよね。


ひと騒動あったけど私は無事にカーテンで仕切られた空間に入れたのでした。

「着替えるかな。」

おうかの黒一色の可愛さのかけらもない体操服入れから取り出して着替えていく。

ちなみに私の入れ物は水玉模様だ。まあ、関係ないけど。

むっ、おうかの服大きい。なんか私がちびって言われてるみたい。私そこまで小さくはないけど。

おうかの背が高いからなあ。

着てみて気づいたけど服からおうかの匂いがする。何処となく気恥ずかしい。

おうかの家で使ってる洗剤のにおいだっていう事は分かってるんだけどねえ。


「ああ、鈴村さん、着替え終わったの。洗剤机の上に出しといたから。

 ん?鈴村さんでよかったわよね?」

「はい、そうですけど?」

何がひっかかったんだろう?

ってああ、体操服の胸のところに名字が書いてあるんだけどそれがおうかのだからだろうね。

「この体操服友達に借りたんですよ。今日体育なかったので。」

「へー、部活か何かにはいってるの?」

「いや、部活のために持って来たとかじゃなくて、

 何事も早め早めに準備しておくっていう信念で持って来たらしいですよ。

 まあ、たまに演劇部に応援に行ったりもしてるらしいですけど。」

「へー、演劇部に応援に行くぐらいうまいの?」

「ええ、かなり。」

おうかが男装したらイケメンで華があるし、女性役でも美人さんでまた華がある。

凰華っていう名前の華が入っているのも納得だね。

高校になってからはまだ演劇を見たことはないけど、中学二年の文化祭の時は男役で出てその反響で

おうかのファンクラブ的なものができたぐらいだったし。

そんなおうかがなんで演劇部に入ってないかというと、

別に演劇をするのは好きでも嫌いでもないからという事だった。

後、部活に入ってしまったら私と一緒に帰れないじゃないか、という事らしい。

うん、ほんとおうかはぶれないね。


そんな感じで雑談をしながらごしごしと制服を洗った。

「あっ、先生、制服ってどこに干したらいいですかね?」

「そこから外に出たら紐が通してあるからそこに干しとくといいわ。

 今日は風が強いから洗濯バサミではさんで飛ばされないようにしといてね。」

「はーい」

運動場に続く勝手口のとこにあるサンダルを拝借して外に出る。

小春日和、というには少し風が強いか。だがいい天気だ。

紐はすぐに見つかり手際よくつるしていく。一人暮らしだからこういうのはお手の物だ。


干して保健室に戻ってくると・・・・先生が紅茶を入れていた。

仕方ないでしょ。名前覚えるの苦手なんだよ。

どうもカップの数を見ると私の分もあるようだ。

「ミルクと砂糖はどうする?」

「ストレートでお願いします。けどいいんですか?

 今時こんなことをすると一生徒を依怙贔屓したとか言われません?」

「大丈夫よ。紅茶にはリラックス効果があるって言われてるから。」

「えーっと、だから?」

「ああ、自覚してないんだ。あなたけっこう疲れてる顔してるわよ。」

「へっ?」

自覚はないんだけど。顔をぐにぐにさわって確認してみるけど自分じゃわからない。

あー、しいて心当たりを上げるならこの黒いのかな?

「ああ、心当たりはあるんだ。まあ、それに対する治療行為?っていう事で。」

茶目っ気のある顔をしてそう言った。

けど聞かれても私はこの黒いのとかゆうかさんの事とか他人に話すつもりはないんだけどなあ。

どうやってごまかそう。

「・・・・・・」

「ああ、そうそう、お茶菓子もあるんだけど食べる?」

「・・・・・・聞かないんですか?」

「んー、強引にでも聞いた方がよさそうっていう時もあるんだけどなんか違うみたいだし。」

「はあ、ちなみにその判断の根拠は?」

「女の勘よ。男の子に対してはあんまり聞かないんだけど女の子に対しては結構あたってるのよ。」

「女の勘ですか・・・・」

そんな適当な。まあ、聞かれないならそれに越したことはないけど。

「それにあなたは話したそうにしてないしね。まあ、先生はたいてい保健室にいるから、

 聞いてほしい時は来たらいいわ。紅茶を飲みながら聞いてあげる。」

「はい、分かりました。」

まあ、聞いてもらうことはないだろうけど。

だってこの黒いのとかゆうかさんのことを話しても信じられると思わないし。

もし私が相手の立場だったら正気を疑うレベルだし。


そのあと私は天童子先生とたわいもない話をしばらくして教室に戻った。

そうそう、名前だけどね名札を見ればよかったんだよ。これなら忘れても平気だね。



PS,お菓子はどら焼きでとってもおいしかったです。


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