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三、黒いの一塊

「わっ!」

私はがたんと椅子を鳴らして立ち上がってしまった。

「鈴村か、急に大声出してどうした?」

担任の木村先生が理由を聞いてくる。

クラスのみんなも怪訝そう。

「すっすみません、夢を見てました。」

「おいおい、先生の授業もちゃんと聞いてくれよ。」

「はっはいすみません。」

今は四限の物理の授業の時間だ。木村先生は見た目完全に体育教師だけど物理教師なのだ。

まあ、それはほっといて。

なんで私が大声を出して驚いたかというと私の足元から黒い(もや)のようなものが立ち上ってきたからだ。

どうやらみんなには見えてない様なのでなんか幽霊的な存在なのだろう。

それは私にまとわりつこうとしてるけどある一定の距離からは近寄ってこれないみたいだ。

近寄ろうとして遠ざかって、近寄ろうとして遠ざかってを繰り返している。なんか不気味だ。

うう、早くゆうかさんに相談したい。


キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

「おっと、鈴村が起きたタイミングで今日の授業は終わりだ。鈴村は誰かにノート映さしてもらえよ。」

そういって先生は挨拶もなしに出ていく。

木村先生は見た目完全に体育教師なのに挨拶とかにもうるさくないのだ。


「りん、今日学食でしょ。一緒に行こう。」

私もおうかほど料理は上手じゃないけどお弁当を作ってくることはあるんだけど、

今朝菓子パンを買おうとしたことからわかるように今日は作ってきてない。

たまにゆうかさんが作ってくれることもあるけど今日は寝てたし。

「ああ、うんごめんね。私がお弁当食べちゃったから。」

「いいって、そもそもりんが私のお弁当食べることになったのも私のわがままだし。」

そうなんだけど、そうなんだけどねえ。

「そんなに気になるならジュースおごってよ。それでいいでしょ。」

そんな私の顔を見ておうかが言う。

ああ、気を使わせたかも。

「うん、わかった。じゃあ行こっか?」

ほんとにおうかは気づかいもできるし、話も面白いし、綺麗だし、一緒にいると楽しい。

まあ、今日はこの黒い靄がいるから楽しさ半減だけどね。

っとちょっと黒いの邪魔。シッシ

「りん、どうしたの?」

「いや、虫がいたから。」

虫みたいに逃げてかないけど。






場所は移って食堂

「りん、食堂って何かおすすめある?」

「いや、ないよ。うちの学校の食堂は安くて味もそこそこっていうモットーだからね。

 というかおうかたまに私に付き合って食堂で食べてるじゃない。」

「いや、けど頼んだことないんだよ。いつもお弁当持ってきてるから。」

「あー、そう言えばおうかが食べてるとこ見たことないね。」

そんな事言いながら食券を購入。私はカレーうどん。おうかはから揚げ定食+お弁当の残り。

そして人ごみにもまれながら料理を受け取って食べる。

「あの人ごみは苦手だな。」

「おうかにも苦手なことあったんだ。」

「そりゃ私だって苦手なものぐらいあるよ。」

「いや、だって運動神経がよくて、勉強もできて、他にもいろいろ知ってて、

 っていう感じで私の中ではもうおうかは完璧超人だよ。」

「いやいや、ほめ過ぎだよ。そんなに褒めても何も出ないよ。」

その照れてる顔がかわいくてもう十分出てるんだけどなあ。

むっ、黒いの邪魔。シッシ

「りん、それなに?」

あっ、しまった。思いっきりおうかに見られた。

教室の時と違っておうかがこっち向いてるから虫がいたっていう言い訳ができない。

「・・・・・あっ、そう、こういうエクササイズがあってね。

 これを何セットも繰り返すと二の腕のあたりがすっきりするんだって。」

「へー。そうなんだ。」

「そうっ、そうなの。おうかも一緒にどう?」

「いや、私は良いよ。」

「・・・・・・おうかって最初からお肉とか全然ついてないしね。」

おうかはすっごく美人だ。

美容とかに興味が薄い私だから良いなあって思う程度だけど他の子だったら嫉妬しそうなほど。

余分な脂肪がついてないのにそれでいて必要なとこにはきっちり言ってるという。

それでいて細っこいんじゃなくてちゃんと筋肉もついているという。

・・・・

「何か美容のためにしてることとかあるの?」

「いや、特にないけど。しいて言えばよく食べてよく運動してよく寝ることかな?」

「うわっ、これが持つ者と持たざる者の差か。」

そんなことを言いながら食事を終えた。

「それでこの食器はどうするの?」

「あっちの棚に置いとくんだよ。あっ、机汚れてないか見て。」

今私から見らた机の一部に黒いのがあってどうなってるのかよくわからないし。

「んー、この置いてある布でふけばいいの?」

「そうだよ。お願い。」

やっぱり汚れてた。正直カレーうどんってどうやったら跳ねないで食べれるのかわからないし。

あっ、黒いのが足付近まで下りたからどこが汚れてたか見えた。

うわー、結構はねてる。黒いのにまとわりつかれてイライラしてたから食べ方雑だったかも。

ちょっと気恥ずかしい思いをしながらおうかが拭き終わるまで待つ。

「ん、きれいになった。じゃあ食器返しに行こうか。」

「そうしよう。」

私はカレーうどんのトレーを、おうかは弁当を腕にかけてから揚げ定食のトレーを手に持って行った。


「あっ、りんそこいすっ」

「へっ?わっわーーー」

食堂にいる人に注目されてるのが分かる。多分今私の顔は真っ赤だろう。

黒いのがまとわりついてたから足元が見えなくて、

いすがあるのに気付かずに進んだところ見事にひかかったっていう状況。

「りっりん、だいじょうぶ?」

「だいじょばない」

スカートもカッターシャツもカレーで黄色く染まってしまってる。

どうしよう、床にも結構カレーが広がっちゃってる。

「りん、体操服持ってる?」

「えぅ、いやもってないけど。」

動揺して変な声が出た。

「じゃあ、はいこれ私のロッカーの鍵。そこから体操服とって保健室に行くといいよ。

 それと制服は保健室の水道で洗っといたほうがいいよ。水洗いでもだいぶ違うし。」

「けっけど床が」

今も床からカレーのにおいがプンプンとする。いや、私からもするんだけどさ。

「ここは私が何とかしておくから。それよりか早く洗わないとそのカレー落ちないよ。」

すごい。おうかがすっごい頼りになる。

ここはおうかの好意に甘えよう。

「うん、ありがとう。じゃあ、甘えさせてもらうよ。」

「はいはい、次は急いで転ばないようにね。」

「うっ、はーい。」


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