さらっちゃうぞ
落ち着け! 静まれ! 頼むっ、目覚めるなっMyリトル分身っっ!
……。
…………。
………………うん、やっぱ無理です。あっさり降参。片手で力なく白旗を降らせていただきます。
あぁ、もしこのシーンを、後でカリンに接触感応で見られちゃったら、我がメデューサ様は絶対に許してくれないだろうなぁ……。
だ、だけどさ、逆ギレするわけじゃないけど、そもそも学校の廊下でいきなりこんな刺激的なことをされて一切反応するなって方が間違ってる! 自然の摂理に反してるよ! おそらく念力で押さえつけられているんだと思うけど、身体もほとんど動かせないし!
つまりこの反応は、僕がコダチさんが好きだとかそういうことではなく、あくまでも男の悲しき性が引き起こしているアクシデントみたいなもんです! だから決してカリン、君を裏切っているわけではないからね!!
…………と、万一カリンにバレた時の身を守る保険として、今の僕の心情を強く刻み付けておく。我ながらスケールの小さい策士なことは重々承知だ。
「ねぇタイセ~、絶対にランコの方がいいでしょぉ~?」
一人煩悶する僕の首元にしっかりと手を回し、コダチさんの肉体接触はますます濃厚さを増してきていた。
僕らは背の高さがほぼ同じだからこんな体勢でそんなに迫られるとそのまま唇が触れちゃいそうだよ!
「んもうっ、ランコがここまでしてあげてるのにまだ足りないの? タイセーって意外と欲張りなのね~」
ここまでのアピールでもなかなかYESを口にしない僕に、コダチさんは自分のスカートの端に手をかけた。
「ほらほら早くランコって言わないと~……」
制服のプリーツスカートがぺろっと腰の辺りまで大きく大胆にたくし上げられる。
「このままタイセーをさらっちゃうぞ♪」
「ぶはっ!!」
ひっ、紐っっ!?
コダチさんが身に着けていた下着が過激すぎて、鼻腔から鮮血がほとばしりそうになった。慌てて片手で鼻付近を覆う。今はなぜか両手が多少動かせるようになってるけど、そんなことどうでもいいよ!!
ととととにかくココココダチさんっ、その両脇ヒモタイプはエロ過ぎですっっ! 君の下着のトライアングルの面積、洒落にならないくらい小さすぎだよっ!?
「やだぁ、ランコってば今日は大サービス♪」
やだぁ、と言いつつ、まったく恥らっている様子が無いんですが!?
コダチさんはメッチャ爽やかな顔でたくし上げていたスカートから手を話すと、また僕の首元にかじりついてきた。
「ね、ランコが一番よね、タイセー?」
「ち、違うよっ!!」
ダメだもう限界だ!!
肩をグイッと押し返し、コダチさんを引き剥がす。するとコダチさんは一瞬呆気に取られた顔をし、その場に固まった。
「……今なんて言ったのタイセー?」
「え?」
「タイセーはランコの事が好きなんじゃなかったの?」
「えええええーっ!?」
ぼぼっ、僕、コダチさんにそんな態度取ったことあったっけ!? 思い当たるフシはまったくないけど、席がずっと隣だったから何かの拍子に誤解されるような態度とか言動をしたことがあったのかな……!?
フルリアナスに入学してからの二ヶ月間、コダチさんと会話したシーンを走馬灯のようにハイスピードで思い返してみる。だけど怪しい場面は探し出せない。
でもこの問題はきっちりカタをつけておかないとマズそうだ。後々、この疑惑も何かのきっかけで我がメデューサ様の逆鱗に触れる事態になりかねない。
「コ、コダチさん、僕、君を好きだって言ったことあったっけ!?」
「ないけど~?」
「ハ!?」
「でも男はみーんなランコが好きなはずよ?」
……危うく廊下でコケるところだった。
な、なんてジコチューな理由なんだ! しかしコダチさんは全く悪びれてない様子でしげしげと僕を見る。
「タイセーだってそう思うでしょ?」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
モゴモゴと口ごもる。
思わず飛び上がるぐらいビックリしたけど、きっとこれはコダチさんなら許される思い込みだろう。
だって顔もカワイイし、マツリに匹敵するぐらいのフワフワで大きな胸、そして強く抱きしめたら折れちゃうんじゃないかってなくらい引き締まった細い腰、そしてプリプリに張ってキュッと盛り上がった見事なヒップ。僕は今まで生きてきて、こんなにリアルな砂時計体型の女の子を見たことが無い。もはや芸術的レベルだ。
カリンはボンデージファッションが似合いそうだけど、チャイナドレスの着こなしではコダチさんの右に出る女の子はきっといないはずだと僕は密かに思っている。
「ねぇタイセー」
「な、なに?」
「タイセーはランコのこと好きじゃないの? もしかしてホモ~?」
うわっ、コダチさんの僕を見る目、完全に異常者扱いの目だよっ!
「ホ、ホモじゃないよ!!」
「じゃあロリ?」
「ロリコンでもないってば!!」
「じゃあ熟女…」
「それでもないよーっっ!!」
あぁもういい加減にしてくれ! 言わせない、そのジャンルだけは最後まで言わせるもんか!!
「ふぅーん……」
僕の性癖チェックを終えたコダチさんは、僕の首に巻きつけていた両手を外し、バルーンのような胸の前で腕組みをする。
「タイセーのことは前からおかしいとは思ってたのよ。だって席が隣なのに、タイセーはあまりランコの方を見ようとしてなかったもんね」
……あのー、コダチさん? 両手を外してくれたついでに、出来ましたら僕の股間からその美しきおみ足も抜いていただけないでしょうか!? もうマジで限界が近いんですけど!?
「ランコはね、世の中の男み~んながランコの方を向いてくれていないとイヤなの! タイセーはランコ以外でクラスに好きな女の子がいるの? だからランコに興味が無いの?」
Wao!! 腕組みをしたフラミンゴからいきなり核心をつく質問が来ました!!
「どうなのよタイセー?」
「そ、それは……」
喉をゴクリと鳴らして答える。
「す、好きな子はいるよ?」
「それ、誰!?」
「だ、誰って……」
き、気のせいか、コダチさんの目つきがキツくなってきたような……? まっまさかカリンが “乗っ取り” でコダチさんを操っているとかじゃないよね!?
「それは今日から登校してきたカリ…ふわぁぁっ!? ちょ、ちょっとコダチさんっ!?」
僕の足の間に挟まってきているコダチさんの太ももがグイ、と上がる。しかもグリグリとこねくり回すような動きをし始めたのでもう一人の僕が完全に目覚めてしまった。
「うあああああああ!?」
これ以上の刺激はダメだってばコダチさん!! 僕の体内で超巨大なビッグバンが起っちゃうよ!
「待ってコダチさん! ストップストップ! ぐりぐり脚を動かさないでよーっ!!」
「どうしてよっ!? タイセーは二ヶ月もずっとランコの隣だったのに、どうしてランコじゃなくて別の子が好きなの!? おかしいじゃない!! そんなのありえないじゃない!! ランコは絶対に認めないわ!!」
ダメだ! 全然聞いてくれてなーいっ!! それにおかしいじゃないって言われても僕が好きなのは幼馴染のカリンなんだ! コダチさんがどんなにエッチで魅力的でもそれは変わらないよーっ! だだだからその脚を早く外してくださいってばーっっ!! ぼっ僕、もう限界ですっ!! 前立腺が一気に崩壊しちゃいますっ!!
「もうランコ頭にきたーっ!」
完全に切れたコダチさんが僕に身体を完全に密着させる。と同時に身体の細胞が溶けるような不思議な感覚が僕を襲い、視界が白くなった。
「タイセーのこと、本気でさらっちゃうからぁーっ!」
「うわぁぁ!?」
な、何が起ってるんだっ!?
あ!? こ、これってもしかしてテレポートッ!? でも自分以外の人間を連れて移動できるなんてかなりのPSI能力がなきゃ出来ないよっ!
あぁっ!? 分かったぞ!!
長距離を一気に横断できるほどの力を持ったクラスメイトって、このちょっとエッチな女の子、ランコ・コダチのことだったんだっ!!