序章 : 僕の人生オワッテル
『PSIが全然使えない、お前の人生オワッテル 』
── この世に生を受けて十五年。
“ 人生の辛酸を舐めた ”と偉そうに言い切れるほど年齢を重ねてはいないけど、今までで一番傷ついた言葉がこれだ。
確かに僕は念動力や予知や透視、精神感応などのPSI(超能力)が使えない。
しかし、精神波長がすこぶる良い時は羽のように軽いテイッシュを念動力を駆使してBOXケースから引っ張り出す事ができる。
……とはいっても、それは年に一度程度のミラクルで、出せてもたった一枚が関の山なんだけど。
だから、大なり小なりある程度のPSIが使えることは至極当たり前のこの世界で、僕のような存在は非常に稀有な存在だ。ある意味珍獣。ある意味エイリアン。
そんな未確認生物体の僕が、高い潜在能力を持つ生徒ばかりを集めるこのフルリアナス・ハイスクールに入学したことが全ての間違いの元だった。
……というか、どうして僕がこのスクールに入れたのか今をもって謎のままだ。
こんな生けるカスのような僕が名門フルリアナスに入れるわけがないのに、気付けば三月初旬にはスクールの入学許可案内が自宅のポストに届いていた。
僕は入学試験を受けるどころか入学願書すら提出していなかったのに、だ。
だからこれは絶対にデリバリーミスだと確信して封を空けずにフルリアナス事務局に書類を返送したのだが、
「この入学許可証はタイセー・イセジマ殿に送付したものに間違いない」
という注釈つきで書類はまた僕の家に送られてきてしまった。
謎が謎を呼ぶ展開に僕はうろたえるばかりだったが、家族は涙を流さんばかりに大歓喜をしていた事を思い出す。一家、いや親戚縁者一族の中でダントツの落ちこぼれである僕がフルリアナスへ入学することになったのだ。その気持ちはわかる。
だがどう考えたってこれはありえない事だ。
しかし入学を断るさしたる理由も見つけられなかったため、僕は周囲の歓喜の波に飲まれるままにズルズルとこのスクールのゲートをくぐることになってしまった。
本当にこれがすべての間違いの元だった──。