粗筋談義。
あら-すじ(…スヂ)【粗筋】
あらましの筋道。概略。特に、事件の経緯や書物・演劇などの内容のあらかたの筋道。梗概。「-を追う」
(『広辞苑』より抜粋。やっぱり電子辞書)
要するに、アバウトでもいいから、ぱっと見で「こんな内容だな」って分かるのがあらすじです。
常識っていえば常識です。あたりまえ。
そんなことをなんでここで触れるのか……ここまで読んだ方なら察していただけるかと思います。
近頃、このサイトで小説を検索して、作品紹介の項目を見ていると、
「これ、あらすじか?」
と思うものが相当な数で陳列される。タイトルと合わせてみても、どういうコンセプトの話なのか伝わらない。
最悪の場合、たった1行で終わってたりして、実際に目を通さないと概要が全く分からないものがあったりします。
それで、わざわざ中身を読んでみても「あーやっぱり自分の好みじゃなかった」と、なんだか二度手間を掛けさせられたような気分になるという。
あんまり長かったり詳しく解説すぎても困りますが、やはり短すぎてもアウト。少なくとも「アクセスしなければ全く何も分からない」ていうような紹介文は、はっきり言って卑怯だと思う。
傾向として、あらすじを宣伝文句と勘違いしている人が多いとも感じる。『仮面ライダーディケイド』でいう「平成ライダー? 十年早えよ!」みたいな。
二次創作だったら、原作は何を扱ってるのかっていうのを表記するのは当然です(表示項目に「原作名」があるから、無理に入れる必要は無いと思いますが)。
それから、原作のストーリーのどの時点を想定してるのか──例えば、後日談なのか、前日談なのか、進行中の話なのか。はたまた、原作ではあり得ないパラレル設定なのか。
それと、ちょっと辛口入りますが、私はいわゆる「リメイクもの」に対しては基本的に否定派です。
登場人物をいじっただけで、ストーリーが原作そのままとか、もってのほかですね。
昔、CLAMP先生の『ツバサ』のキャラを高橋留美子氏の『犬夜叉』に置き換えただけの小説なんて見たことがありますが、冒頭を少し読んだだけで即座にブラウザバックしました。
原作に何の不満があってそういう作品の書くのか私は理解できません。少なくとも、私は「原作への愛が高じてファンフィクションに手を付ける」というスタンスで書いているもので。
リメイクするにしても、何らかのオリジナリティが入るならまだいいです。それすら感じ取れず、ただただ原作の流れをなぞってるだけとか、たまに腹立たしく思う場合があります。
何の努力もしてない、「人のフンドシで相撲をとる」に近いものを感じるな、と。
とりあえず、普通のファンだったら二度も三度も同じストーリーをゴリ押しされても楽しくないと思います。
話を戻しますね。で、私は原則的には「否定派」です。リメイクものに関しては。
でも仮にリメイクものを手がけるとしたら、これを紹介するあらすじも留意して書くべきだと思う。
本来の原作とは、どう違った視点で書いてるのか。
独自のオリジナリティが入るのか──例えば、原作をそのまま再現したストーリーなのか。逆に、ちょっと違ったテイストだったり、結末が原作とは異なっていたりするのか。
一時期、仮面ライダー関連の小説を探していると、『ディケイド』と『ダブル』が原作のものがべらぼうに増えている印象の強い頃がありました。
中には、登場キャラなどを変換したリメイクものも目立つわけです。
そうすると、公式『ディケイド』でおなじみの宣伝文句で
「全てを破壊し、全てを繋げ!」
とか、『ダブル』の
「さあ、お前の罪を数えろ!」「二人で一人の仮面ライダー」
とか、見覚えのあるキャッチフレーズや、それをもじったような文言が提示されたりする。下手すると、どの「あらすじ」も同じような文章になっていて、変わり映えのない間違い探し状態になってました。
でも、あらすじにそれだけ書かれても何にも伝わらないんですよ。言わせてもらうと、「だから何?」なんですよ。
それで紹介した気になってるって、どういう作者なんだろう。他の人がどんなふうに書いてるのか、見回したことがあるのか? と思う。
(初出・2010年1月31日付報告記事「あらすじ談義。」より)
補足
「リメイク否定派」と言っているが、「リメイク」にもピンからキリまで色々な作風やパターンがあるし、傾向を一概にまとめることは難しいと思う。
私自身「リメイク」と掲げていれば何もかも一蹴する、というわけではない。けれど、はっきりと基準を設けているのでもない。
ただし、中でも一番受け付けないパターンを挙げると、
・元々公式として存在する原作(漫画アニメ小説ドラマetc.)の、あらすじや基本的な世界観をほぼそのままなぞっただけの作品。登場人物の名前や設定などを一部変えてはいても、流れはそっくりそのままとか。
・ある原作のキャラクターを、他の作品のキャラクターに置き換えたもの。いわば「○○版××」(前後にはそれぞれ異なる作品名が入る)と表現し得るもの。
説明しづらいが、こういうものが本当に許容範囲外。とある方の言葉を借りると、「ただのパクリに堕している」。
逆に、「リメイク」的なジャンルに属しながら、独自のオリジナリティを巧みに織り込んで、新しい感動を生み出している作品に出会うとコロッと飛びついてしまうのも事実だったり……