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呼称談義。



二次創作で私が注意している点は多々ありますが、今日はその中でも登場人物の「呼び方」について書いてみたいと思います。


・一人称

いわゆる自分で自分を指す言葉、「私」「僕」「俺」といった呼び方です。

実際、大して種類はないように思われますが、漫画、小説、...etc、色々な作品に触れてみると、実はけっこうなバリエーションがあるようです。

例えば、同じ読み方の一人称でも、ひらがな、カタカナ、漢字と表記を変えるだけで、その人物の印象が反映されてきます。つまり、

 「私」 「わたし」 「ワタシ」

 「僕」 「ぼく」 「ボク」

 「俺」 「おれ」 「オレ」

といった書き分けが可能ということ。

漫画家のCLAMP先生はこの手法にこだわっておられるようで、『ツバサ』の原作コミックを見ると、メイン男三人が使う一人称を、

 小狼→ おれ

 黒鋼→ 俺

 ファイ→ オレ

と、同じ「俺」でも区別して台詞に落とし込んでいます。

また、女の子の「私」という言い方にも、「わたし」と読ませるか「わたくし」と読ませるかで変わります。

時には「あたし(アタシ)」と言う子もいるでしょう。筆者が知っている中では、久保帯人先生の『BLEACH』にて、ルキアは「私」でしたが、織姫は「あたし」と言っていました。

また、舞台が現代日本に限定されなかったり、個性の強いキャラが出てくると、さらに言い方が広がってきます。

例えば「拙者」「儂」「我」といった時代がかった言い方。「儂」も「わし」「ワシ」と同じパターンで表記方法が広がる。

関西弁キャラでも「わい」「ワテ」「ウチ」などの特殊な言い方をすることもあれば、普通に「私」「僕」「俺」のままのこともあります。ちなみに同じ関西弁で、『CCさくら』のケロちゃんは「わい」、『魔法騎士レイアース』のカルディナさんは「ウチ」と、同一作者の作品でも使い分けが見られます。

さらに、中には自分を名前で呼ぶキャラもいます。CLAMP先生の『聖伝』の主人公・阿修羅は、子供という設定もあってか自分のことを「私」「僕」「俺」といった言い方はせず、「阿修羅は~」と自ら名前で呼んでいました。

ただし阿修羅の場合、真の人格に目覚めると一転して「私」と言うようになります。こういった、人格の豹変によって、同じキャラでも一人称が時に変化するという特殊なケースも有り得ます。

和月伸宏先生の『るろうに剣心』などでは、主人公・剣心が普段「拙者」と言っていましたが、我を忘れ、かつての"人斬り抜刀斎"の頃の殺意がよみがえると「俺」に変化するといった描写がありました。このような特徴もしっかり押さえて、二次創作で生かすのがベストです。

さらに、いわゆる「王族」とか高貴な立場の人物ですと「ちん」「われ」「」「わらわ」といった、使用層の限られる呼称もちらほら見られます。実例を挙げると、藤崎竜氏の『封神演義』では殷の天子(皇帝)である紂王は「予」、その皇后でもある妲己や黒幕・女カは「わらわ」と自分を呼んでいます。

こういう特殊な呼び方は発言者の区別にはもってこいですが、日常では使い慣れないものなので、かえって読者を混乱させてしまうこともあると思います。なので私的にはあんまりすすめません。



・二人称

話している相手そのものを指す言葉、「あなた」「君」といった呼び方。

これも一人称と同じく、仮名遣い表記を変えることでバリエーションが増えます。ただ注意すべきは、同じ「あなた」でも、漢字の場合「貴方」「貴女」と書き方が違ってくることです。

他にも日常的な言い方で「あんた」「お前」「てめえ」など。「てめえ」なんかは「テメー」と言う人もいます。

特殊なものでは「なんじ」「貴公」「そなた」etc.



・その他の呼び方

呼び方には、普段の言葉遣いと同じように、呼んでいる人の癖というものが表れます。

逆を言えば、あるキャラが原作で使う呼び方の癖を把握して二次創作に反映させると、そのキャラの"らしさ"が出てきます。

しかし、実は一人称や二人称よりもずーっと厄介なのが、この「他のキャラに対する呼び方」。

例えば、あだ名を付けたがる人なんかがいると、単純に名前で呼ばないので結構把握が大変です。そこで私は、こんな表を作って一人ひとり整理しています。


挿絵(By みてみん)


これは『CCさくら』を例として作った見本ですが、扱う作品によって縦軸と横軸のキャラ名は自由に変えられます。

ただし、キャラの並び順は同じにするように。

説明しますと、縦軸のキャラが「呼ぶ人」、横軸のキャラが「呼ばれる人」となっています。英語の文の構成であれば、縦軸が主語にあたる人で、横軸が目的語に相当する人。

例えば、表の上から2段目、左から5列目の「ケロちゃん」と書いた部分に赤丸がついています。

この部分は、縦軸のキャラ(呼ぶ人)がさくら、横軸のキャラ(呼ばれる人)がケルベロスとなっている。

つまりこれは、「さくらはケルベロスを『ケロちゃん』と呼ぶ」という意味です。

同様に、青丸がついている、上から3段目、左から3列目の「おれ」の部分は、縦軸のキャラ(呼ぶ人)も横軸のキャラ(呼ばれる人)も小狼となっています。

要するに、「小狼は小狼を『おれ』と呼ぶ」=「小狼の一人称は『おれ』である」という意味になるわけです。

この「呼び方表」を作っておくと、二次創作でいざというときに「この人はなんて呼ばれてたっけ」と分からなくなっても、参照することですぐに解決できます。キャラの人数が多い場合などは特に便利。

また、横一直線の段を見ていくとキャラ一人ひとりの呼び方の癖というのも分かる。例えば、縦軸の一番下のお父さんの段を横に見ていくと、大体が「~さん」「~君」と敬称付けが多く、丁寧な言葉遣いがメインだなとすぐに理解できる。

ちなみに表の中の「~」は、横軸のキャラの名前がそのまま入ります。「?」は原作で見てもちょっと分からない、想像が付けられないため保留した部分です。分かる範囲でざっと埋めておくだけでも良いでしょう。

それと、同じ敬称でも「~さん」「~サン」「~君」「~くん」「~クン」「~ちゃん」と、また派生が利きます。

CLAMP先生は、基本的に男の子は「~君」と、漢字の敬称を付けることが多いです(「小狼君」「エリオル君」「桃矢君」etc...)。しかし一方で、久保先生の『BLEACH』だと、ひらがなの敬称で「~くん」と付けることが圧倒的に多い(「黒崎くん」「石田くん」「日番谷くん」etc...)。これはそれぞれの原作者のこだわりによるところが大きいようですが、なるべく忠実に違いを掴んでおくのがいいと思います。


元々この「呼び方表」は、CLAMP先生が文庫版挿絵を担当しておられる小説『創竜伝』(田中芳樹著)からヒントを得たのが最初。

この小説は巻末にキャラの座談会というのがあって、それを仕切っている主人公の四人兄弟が「誰が誰をどんなふうに呼ぶのか」というのを説明する際、このような表を使っていたのです。

それを見て「あっ、これは分かりやすい」と感心して以来、たびたび作品を書く時にはこういった表を自作して、整理しながら執筆するようになりました。けっこうオススメです。



それとこれは応用編みたいな感じになりますが、一度「呼び方表」に書いたからといって、ある人の呼び方をずーっと固定させておく必要はありません。随時、変化させるという手法は決してマイナスではない。

例えば、『CCさくら』原作において、さくらは当初小狼のことを「李君」と苗字で呼んでおりました。しかし物語が進み信頼関係が深まっていった結果、後半は「小狼君」と下の名前で呼ぶようになった。

つまり、呼び方の変化はすなわちキャラ同士の関係の変化の表れ。あえてこういった書き方をすることで、ストーリーの進展が感じられ、ぐっと深みが増すのです。




(初出・2009年12月12日付報告記事「呼び方談義。」より)


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