第八話:多勢に無勢
健斗とこうちゃんは例の建物の前に来ていた。扉は堅く閉ざされ、強固な壁が建物の周りを囲んでいる。
「ここからどうやって中に入ろうか」
健斗は考える。今自分達は民家の上におり、壁の向こうに行くにはここから降りなければならない。
しかし、下にはおびただだしい数のライスヒューマンがいる。ここから降りて且つ、ライスヒューマンの群れを蹴散らしながら扉へ向かう必要があった。
「ワイヤーを使ってここから降りるぞ」
こうちゃんは自分のリュックサックの中からワイヤーを取り出すと、ワイヤーを手すりに引っ掛け、もう一端を健斗の腰に括りつけた。
「これはどういこと?」
健斗はこうちゃんに聞いた。まさか、これを命綱にしてここから降りるってことか。
「健斗が一番最初に降りて活路を作ってくれ。その後俺もワイヤーを伝って降りるから」
「俺が第一走者ってことか」
降りると言っても下にはライスヒューマンがいて、地面に降り立つ前に噛まれてしまう。健斗は自分の腰にある手榴弾を取り出した。ラスト一発の。
すぐさまピンを抜き、下に放り投げた。耳を塞ぎたくなるような爆音がし、足の踏み場ができた。
健斗は壁を伝って下りはじめ、健斗の近くにライスヒューマンは寄ってくる。
「今だ」
健斗は思い切り壁を蹴って、ライスヒューマンのいないとこに着地した。地面は焼き焦げていた。
健斗はトンファーを構え、寄ってくるライスヒューマンを殴り飛ばした。腰についてあるワイヤーが邪魔だがこれが無いとこうちゃんは降りてこれず、余計不利になる。
トンファーはライスヒューマンの頭目掛けて振り下ろされる。ライスヒューマンの頭部は砕け散り、辺りには米が散らばった。
次々とライスヒューマンは寄ってくる。
いちいちライスヒューマンの頭部を砕いていては埒が明かないと思い、健斗はライスヒューマンの足を狙うようになった。足払いでライスヒューマンを倒し、一方でトンファーで胸を強打する。ライスヒューマンはその度によろめき、倒れるが再び立ち上がり襲ってくる。
「この底なしの体力めが」
健斗の息も切れかけてきた。倒すだけ進めない。健斗はまだ焼き焦げた地面の上にいた。
援軍が欲しい
そう思いながら健斗は近づいてくるライスヒューマンの足を払っていた。
こうちゃんは今、ワイヤーを伝って下りているところだ。
あともう少しでちょっと楽になる
健斗が疲労で一瞬ふらついたときだった。
ライスヒューマンが健斗の上に覆いかぶさろうとしていた。もう、健斗にライスヒューマンを追い払う体力は残っていない。
ここまでか
そう思ったときだった。
覆いかぶさろうとしたライスヒューマンの頭部が砕け、ライスヒューマンが力なく倒れていった。
「こうちゃん」
目の前には警棒を持ったこうちゃんがいた。
「遅れてわるかったな。ワイヤーを伝って下りるのは怖くてな」
俺はそれを最初にやったんだ。
健斗は気力で立ち上がった。あと少しなら頑張れる。こうちゃんが来た今、自分は一人でこの群れを相手にする必要は無い。
こうちゃんは二本持った警棒を巧みに扱い、ライスヒューマンの頭をカチ割っていった。
次々と魂が抜けたようにライスヒューマンは倒れていく。
健斗も気力を振り絞ってライスヒューマンを倒していった。
二人ですると仕事はやはり早く、扉の前に着いた。
この強固な扉から入るのは不可能だったので、横の職員用のものと思われる扉から入ることにした。
扉を背にすれば襲ってくるライスヒューマンは前方のものだけだ。
ここで二人はある単純な問題に気づいた。
どうやってこの扉をあけるのか
とびらには南京錠がしてあり、素手であけるのは不可能だ。
ましてや合鍵なんてない。
「こうちゃん、どうやってこの扉を開ける?」
枯れそうな声で聞いた。
「銃でこの南京錠を壊す。ここに来る前に亮太から拳銃をもらった」
銃で南京錠を壊すのは名案だった。
しかし、一つ問題点があった。
銃を構えて撃つ間、ライスヒューマンを一人で相手にしなければならないこと。さらにこうちゃんを守りながら。
残念だが自分にその元気は残っていない。自分の身を守るのでせいいっぱいだ。
遠くから銃声がした
銃声は何度も続く。音はどんどん自分に近づいてくる。
そこにはM4カービンを携えたリョスケの姿があった。
ライスヒューマンの死体を踏みつけながらこっちに近づいてくる。
気がつけば、自分の近くにいるライスヒューマンはほとんど倒れていた。
「リョ、リョスケ」
いいところに来てくれた。
「こうちゃん、早く錠前を」
こうちゃんは銃を構え引き金を引いた。カーンと銃弾が金属に当たる音がして錠前は壊れた。
三人は扉を開けると中へ入っていった。
「扉を閉めないと」
健斗は忘れずに扉を閉めた。