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第七話:あの建物へ

「呼吸は落ち着いたか?」

こうちゃんは健斗に聞いた。

「ああ、落ち着いたよ」

と、健斗は返す。健斗はこの時考えていた。ここからどうするかを。今俺達二人は屋根の上にいる。ここにいればライスヒューマンから攻撃を受けることは無い。しかし、この場にいつまでもいても進展は無い。移動しなければあの大きな壁に囲まれた建物には着かない。

「ここからどうやって移動する?」

「屋根を伝って行くしかないだろ」

やはり、そうか。そうしなければ移動はできない。リスクある行動だが現状、それしか手立てがない。

「いくぞ」

こうちゃんに言われて健斗は着いてくことにした。


屋根の端に着いた。向こう側の屋根までざっと二メートルといったところだった。学校の体育の授業で走り幅跳びはやったことあるが、下にライスヒューマンがいる練習はやったことがない。たかだかニメートルの距離を跳ぶだけなのに足がすくむ。

「ここ飛び越えるぞ」

こうちゃんに言われた。その後、こうちゃんは助走を付けるため、屋根の端から少し離れた。すると、思い切り走り始め、屋根の端で勢いよく跳んだ。そのまま、こうちゃんは空を駆け向こう岸に着いた。

「さあ、健斗も早く」

「お、おう」

どうしてあんなにこうちゃんは臆することなく跳べたのか。自分は怖くてたまらない。

「どうした、びびってないで早く来いって」

こうちゃん、せかすのはやめてくれ。

健斗は深呼吸をして息を整えた。そして、力の限り走り思い切り足を踏み切った。

なんとか向こう岸に着くことができたが、心臓がこれでもかと言うほど高鳴っている。

「ちょっと休憩」

健斗はそう言って、仰向けになった。


「なあ、健斗」

「何?」

「どうしてリョスケは俺達の居場所がわかったんだ?」

こうちゃんに言われて、健斗ははっと気づいた。今まで気にも留めなかったが確かに疑問だ。

自分達とリョスケは別に連絡を取り合ったわけではない。

和磨の話によると、ライスコーピオンに襲われたとき、助けてくれたらしい。

なぜリョスケは自分達の危機に駆けつけることができたのか。

「確かにそうだね。別に俺ら連絡したわけでないのに」

「そこが疑問なんだよな。なんで連絡なしでここまで来れたのか」

こうちゃんも疑問に持ってたらしい。いや、おそらく皆疑問に持っているだろう。ライスコーピオンとの戦闘後忙しすぎて、そんな話を聞きだす暇が無かった。

「GPS機能を使ったとかは?」

健斗はこうちゃんに聞いてみる。

「確かにその線が濃いかもな」

こうちゃんは考えながら言った。

「あと衛星写真を使ってたのもあるかもね。俺達堂々と移動してたし」

健斗が第二の考えを挙げる。人工衛星からの衛星写真を使えば地上のものは、十センチ四方まで確認できる。リョスケはノートパソコンを持っていた。この可能性は高いだろう。

「今のとこ、その可能性が一番高いな」

こうちゃんはそう言って立ち上がった。

「そろそろ休憩は辞めて動くか。夜が明ける前にあの建物までに着かないといけないからな」

「よし行こう」

健斗も立ち上がり、荷物を背負った。ここからしばらく走り幅跳びで移動しなければならない。

徐々に走り幅跳びも一種のスリルに変わりつつあった。

慣れというのは恐ろしい。



そのころリョスケは弾薬を探すため銃砲店の中にいた。店内は案の定、荒らされている。銃弾が見つかる望みは薄そうだ。

幸い、ライスヒューマンには会っていない。健斗達が引き付けてくれているからだろうか。

「ここも脈無しと」

独り言を言いながら銃砲店の店内を歩き回る。ショウケースは割られ、飾ってある銃も無くなっていた。

試しに、店のカウンターのとこも調べてみた。

望みは無いだろうな、と思いながら引き出しの奥を探ってみる。

何か堅いものが手に当たる感触がした。

銃弾だ。

ようやく銃弾を見つけることができた。

銃弾は散弾だった。自分のもっているモスバーグM590の弾と同じだった。

見つかった弾は八発。そんなに多くはない。

もう少し探してみることにした。今度は店の奥に行ってみたが、ここもひどい荒れようだった。倉庫にあるはずである武器は何も無かった。戸棚の中を確認してみる。

またあった。今度は拳銃とマガジンが見つかった。マガジンは拳銃の中にあるのと予備が二つ。

リョスケは拳銃を腰に装着し、マガジンをポーチにしまった。

「そろそろ建物に向かうか」

リョスケは銃砲店を後にした。

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