第六話:考えるんだ
「着いたか」
健斗達一行は町に着いていた。もう既に辺りは暗く、月の光が唯一の光源となっていた。
「これからどうする? 警察署でも荒らすか?」
こうちゃんが聞いてくる。いきなり警察署を荒らすのか。
「警察署より、銃砲店とかを探したほうがいいと思う」
健斗は答える。
「じゃ、そうしよう」
健斗達は銃砲店を探すことにした。こんだけでかい町だ。銃砲店の一つや二つはあるはずだ。
しかし、望みは薄そうだ。町は荒らされ、いたる所から煙が上がっており、商店のガラスはほとんどが割られていた。パンデミックが起きた際、暴徒と化した民衆が窃盗をしたのだろう。ましてや、銃砲店なんて真っ先に狙われそうな場所だ。
「不気味なくらい静かだな」
リョスケが呟く。
「ああ、確かにな」
健斗は手にトンファーを握り締めたままだ。静かとは言え、この町には絶対ライスヒューマンがいる。
それも、大量に。
こうちゃんは懐中電灯を照らしながら歩いていた。
しばらく歩いていると、曲がり角からなにやら人が歩いてくるのが見えた。
「まさか生存者がいたのか?」
こうちゃんが人に向けて懐中電灯の明かりを向ける。すぐにそれが人じゃないとわかった。ライスヒューマンだ。
「野郎、早速出てきたか」
リョスケは腰に装着してあるシグザウエルP299をすぐ引き抜いた。
「待て」
こうちゃんが引き金を引かせるのを止めた。
「銃声でやつらが寄ってくる可能性がある。それにこんな雑魚に弾はもったいない」
こうちゃんは警棒を構えた。それに続き健斗もトンファーを構える。ライスヒューマンは一体だけではない。先頭の一体の後ろに何十体もいる。
「俺はどうすればいい?」
近接武器を持たないリョスケがこうちゃんに聞く。
「銃砲店を探せ。無ければ警察署だ。くれぐれも弾の無駄遣いはするなよ。あのライスヒューマンは俺達二人が食い止める」
こうちゃんがそう言うと、リョスケはすぐに走り出した。
「さてどうするか」
健斗は臆していた。こうちゃんがかっこいいことを言ったはいいものの、あの数を相手にするのは苦労する。米があれば奴らの気をそらせるのに。ライスヒューマンは徐々にこっちに近づいてくる。すでに米、米の大合唱が始まっていた。
選択肢は二つ。正面突破かどこかに逃げるか。
「こうちゃん、逃げよう」
健斗は逃げるほうを選択した。
「逃げるったってどこに?」
「どこか、ライスヒューマンが登ってこれない場所」
健斗は指をさした。指を差した先には大きな壁がある建物があった。
「まさか、あの壁をよじ登るとでも?」
こうちゃんは聞いてくる。
「ああ、そのまさか」
「わかった。あの建物に向かおう」
健斗とこうちゃんは建物に向かい始めた。早速、ライスヒューマンの群れを突破する必要があった。
「ここの道は無理じゃないか?」
健斗は立ち止まった。見ると、通路いっぱいにライスヒューマンがいる。
「この店の二階へ行こう」
こうちゃんは店の二階へつながる階段を登った。健斗も続いて登る。
「登ったはいいけどどうするんだ?」
健斗は聞く。二階へ登ってもライスヒューマンは階段を登ってくるだけだ。
「机で通路を塞ごう」
こうちゃんは机で階段の所を塞いだ。ここは飲食店らしい。健斗も机や椅子で階段を塞ぎ、バリケードを作った。
「あの建物までの道は?」
健斗はこうちゃんに聞く。町の地図があればいいのだが、そんなのを探してる暇は無い。この町に来た目的は弾薬や武器、食料の補充なのだから。
「今、それを考えてるんだよ」
こうちゃんは椅子に座り考えていた。これがまさに考える人か。
「あの建物に直進で着くことは不可能だし、まともに進んでも迷路に迷うだけ。しかも、迷路にはライスヒューマンがうようよいる」
健斗も案を考える。ライスヒューマンに会わずに済む方法で且つ、早く行ける方法を。
このバリケードもそう長くは持たない。バリケードの向こうからは米、米と聞こえてくる。
「こうちゃん、どうする?」
「あ~中々、良い考えが思い浮かばねー」
こうちゃんも煮詰まっていた。それもそうだ。こんなこと学校で習わなかったからな。
「それとここから出る方法はあるの?」
健斗が聞く。
「うるさいな、お前も考えろよ」
こうちゃんは大分ストレスが溜まってきた。もうバリケードは決壊寸前だ。
その時、バリケードにしていた机の山が崩れた。一斉にライスヒューマンの群れが雪崩れこんで来る。
「まずい、バリケードが崩れた!」
健斗はトンファーを持って階段の所へ向かった。階段のとこにいるやつらを倒せば二階への侵入は阻止できる。健斗はトンファーを振り回した。鋭いスイングはライスヒューマンの頭を砕いた。しかし、ライスヒューマンは一体だけではない。
「まだまだぁ!」
もう片方のトンファーも振り回した。倒しても、倒してもライスヒューマンは向かってくる。
「こうちゃんも手伝ってくれ!」
「今考えてんだよ」
「そんな場合かよ!」
激しい口論になった。口論している内に、ついに二階への侵入を許してしまった。
「もうやばい、撤退するぞ」
健斗はライスヒューマンを倒すのをやめ、逃げることにした。しかし、この階に逃げ場は無い。
「こうちゃん、窓から飛び降りるんだ」
健斗は飛び降りて脱出しようとした。
「無理だ。窓の下見てみろよ」
こうちゃんに言われる通り、健斗は窓の下を覗いた。下にはライスヒューマンが集まっていた。飛び降りても噛まれるのがオチだった。
「くそっ、どうするんだよ」
道が潰えたと思ったときだった。
「下が無理なら上へ行けばいいんだ」
こうちゃんに案が浮かんだ。
「それってどういうこと?」
「窓の淵を使って、屋根に上がればいい」
健斗の顔が明るくなった。ついに良い案が浮かんだか、こうちゃん。
こうちゃんはすぐに窓の近くに行き、懐中電灯で窓の淵を確認した後、淵を掴み屋根へ上った。
上ると、懐中電灯で念のため屋根に敵がいないか確かめた。
「大丈夫。上はオッケーだ」
こうちゃんは手を差し伸べた。差し伸べられた手を健斗は掴み、引き上げてもらった。
窓から追ってきたライスヒューマンが二階から落ちるのを二人は見た。
「なんとか助かったな」
健斗はようやく落ち着くことができた。