表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

第二十六話:『Rウイルス』誕生

今、康太は机を挟んで得一の前にいる。

机にはコーヒーカップが二つあり、湯気が立ち上っている。

「飲まないのか?」

得一が聞いてくる。

「飲む気分じゃない」

康太はそう答えた。毒が入ってるかもしれないコーヒーなんて飲めるか。

部屋には自分と得一の二人しかいない。尚人はこの部屋に入る前に別行動させた。二人だと警戒される。

「なんで『Rウイルス』なんて造ったのか?」

これを機会に『Rウイルス』のことを聞き出そう。この荒廃した世界を更生させる鍵があるかもしれない。

「あれは偶然だった」

「偶然?」

鸚鵡返しをする。

「自宅で趣味として実験をやってたら偶然生まれた」

自宅で細菌実験だと?しかも趣味として。正常な人間ではなそうだな。

「まずは動物実験をした。幾度無くウイルスをマウスに注射したが発症したのは五百匹に一、二匹だった」

話の続きを黙って聞く。

「何が駄目なのか? 百パーセント発症させるためには何が必要か? 必死に考えたよ」

「その必要なのは何だった?」

「星野だよ」

背筋がぞくっとした。自分の趣味の実験を成功させる為に己の生徒の命をも弄ぶ。真性のマッドサイエンティストだったか。

「それで星野を…」

言いかけた時だった。

「いや、それは少し後だ。まずは星野の髪の毛の毛根に含まれているDNAを使った。結果は成功だった。

飛躍的な発症率の高さになったよ。でもまだ百パーセントじゃなかった」

だから星野丸ごとを拉致したのか。

「この成功をきっかけに実験室を拡大することにした。新潟や中学校の古墳の下に造ったんだよ。全財産を投げ打ってな」

一教師の趣味から世界を巻き込む大犯罪に発展したのか。

「でも、結局は失敗した! 研究所からウイルスが漏れ出し、日本だけでなく世界までも人の住めない土地にしてしまった!」

と、思わず康太は叫んだ。

「失敗じゃない!」

得一は机を思い切り叩いた。コーヒーの水面が振動で揺れる。

「康太の言う通り、『Rウイルス』によって世界は滅んでしまった。でもこれによって平和は訪れた! 世界中の権力者は死滅し、人類は核の恐怖に怯えることはなくなった」

そんなのは間違っている。

「それは自身の失敗を正当化する為の言い訳に過ぎない!」

再び康太は叫ぶ。

「お前らなら鍵がある。誰一人感染することなく、二年間ライスヒューマンがうろつく世界を旅できた。身体に抗体の一つくらいできている筈だ」

「だから執拗に俺達を狙ったのか…」

「そうさ。更に強いライスヒューマンの作成は二の次にすぎない。まずはこの荒廃した世界を再生させる。その為にはお前らが犠牲になるんだな」

得一は胸ポケットから拳銃を取り出した。まずい、こちらは左腕が負傷している。そこを狙われると非常にまずい。

「世界平和の礎になれ!」

得一は発砲した。条件反射ですぐに避ける。まさか攻撃してくるとはな。お茶を出して話し合いじゃなかったのかよ。

もう一発弾丸は飛んでくる。これも避けることができた。その際、弾丸がコーヒーカップに命中し割れた。

「話し合いする気なんて最初から無かったんだな」

こちらも拳銃を取り出す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ