第二十四話:明かされた真実
「どうした、もう終わりか?」
リョスケが嘲ながら、健斗を見下す。
健斗は両手に持っていたトンファーを床に落としてしまった。
相手は片手しか使っていない。警棒一本でこっちの攻撃を全て防ぎやがった。伊達に二年間戦闘訓練を積んでるだけあるか。
「こっちはまだ片手しか使ってないぞ」
リョスケの挑発はまだ続く。リョスケを見くびっていた。二年前は臆病で逃げ腰だったのに。
「お前をどうしようか。ここで殺すのは造作も無いことだが、殺したら得一が怒るしな」
どうやら俺は殺されないらしい。だが、実験台として得一に提供される。ろくな人生は歩めないがな。
「なんで得一に協力している?」
リョスケに聞いた。少なくとも二年前は得一と闘う意思があったはずだ。
「約束されたからだよ」
「え?」
「二年前、タイで俺達は『Eater EX-06』に襲われ、そこでチームは壊滅した。他のやつらが意識があったのかもよくわからない。自分の意識を保つのが精一杯だったからな」
初めて聞いた。二年前の出来事についてはリョスケは話してくれなかったからな。
「それで?」
「得一が話を持ちかけてきたんだ。『命は助けてやる。ただし、以後俺の指示に従え』と」
リョスケは話を続ける。
「得一からの指示は『残りの三年三組の連中を連れて来い』と。そうすれば、得一の死後残った財産の相続権をくれてやるとな」
この野郎は金で釣られたのか。怒りで手が震えだす。
「欲に目がくらんだのか」
「あの時、俺と同じ状況だったなら誰だって指示に従うさ」
リョスケは床に落ちている拳銃を拾い上げた。
「さ、早く得一の所に来るんだ。まだノルマが残ってる」
リョスケは銃口を俺に向ける。まだ手のしびれは残っているが、そこまでひどくはない。反撃はできる。
「わかった」
と返事をする。
「なんだ随分大人しくな…」
とリョスケが言いかけた時、俺は頭突きをリョスケの腹に目掛けてかました。
「が…」
リョスケが苦しげに腹の痛みを抑えている。すぐに肘打ちを拳銃を持っている手にお見舞いする。
「俺が指示に素直に従うとでも?」
すぐに俺はトンファーを拾いあげ、蹴りをリョスケの顎に食らわした。口から血が少し垂れている。
「てめぇ」
リョスケは怒りで警棒を二本、腰から取り出した。
「はぁ!」
正拳突きを放ったが、警棒で防がれた。
「遂に二本取り出したか」
リョスケの放っている殺気は凄まじかった。ここまで怒っているのは初めてだ。
「骨の一本や二本折れても知らねぇぞ」
「望むところだ」
リョスケは右の警棒を振り下ろしてきた。トンファーで攻撃を防ぐが、もう一方の警棒が襲い来る。
すかさず、もう一方も防ぐ。
「どうした防戦一方か?」
リョスケが蹴りを放つのと同時にこちらも蹴りを放つ。
「まさか」
蹴りも無事防げたが、それにしてはこちらのダメージが大きい気がする。
「お前の靴は鉄靴か?」
「よく見抜けたな」
リョスケは警棒の乱舞を続ける。一撃一撃が重過ぎる。このままでは防戦一方だ。
警棒の振り上げでガードが開けられた。
「しまった…」
気が付いたときにはリョスケの重い蹴りが腹に命中していた。
よろめき、膝を付いた。今のであばらが何本か逝ったな。
「不意打ち一発当てただけで粋がるなよ」
本気時のリョスケを俺はなめていた。