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第二十三話:チェックメイト

和磨の意識は朦朧としていた。

マイラントに蹴られた跡が痛む。あばらの何本かは折れているのが感覚でわかった。

目の前では和司が手榴弾を持ってマイラントと対峙しているのがぼんやりと見える。

もう意識を保ってるのがやっとだ。

「少し、お暇をいたただくぜ……」

和磨はそのまま意識が飛んだ。



マイラントの弱点が体内というのはわかった。しかし、マイラントの体内を攻撃するには口内を狙うしかない。口が開いた瞬間、この手榴弾を入れればよい。

「手榴弾を口の中に入れる」

「それって…極限まで奴に近づくってこと?」

「そういうことだ」

亮太の返答が来る前に和司はマイラントに立ち向かって行った。

あの重い蹴りを一発でも食らえば立ち直れないだろうということは和司はわかっていた。

肉弾戦においては屈指の強さを誇る和磨が立ち直れないのだから。

「なるべく和磨から遠ざけて闘うか」

和磨がまだ死んでないのはマイラントもわかっていた。隙有らば、和磨に止めを刺すだろう。

マイラントの腕の振り下ろしを和司は避ける。一発でも当たれば終わりだ。

奴の口元を見るが、まだ息は切れていない。

とにかく息を切らして、常時口を開けっ放しにさせればその時に手榴弾をお見舞いできる。

「おらおら、こっちだ」

和司はマイラントを挑発させた。マイラントは挑発に乗って攻撃してきた。

「やはりそうだ」

怒りで攻撃が大振りになってきている。大振りになれば攻撃は避け易くなる。放たれる蹴りも楽に軌道を見切ることができる。

「和司、援護するぞ」

亮太が拳銃をマイラントに向けようとしていた。

「やめろ、撃つな!」

和司は亮太の援護を拒否した。的が分散すると攻撃は避けにくくなる。

「それより、和磨の手当てを頼む」

「わかった」

亮太には和磨の手当てに専念してもらうことにした。早く応急処置をしないと取り返しがつかなくなるかもしれない。あばらが何本か折れているんだ。今までの旅ではそんな重症は無かった。

体感では随分長いこと逃げ回っているように感じた。息も少し切れてきた。しかし、マイラントの息が切れてくる様子は無い。得一が最高傑作と言っただけはあるか。

「っ痛」

考えるのに夢中でマイラントの爪が襲ってきたことに気が付かなかった。致命傷は避けているが、服の袖が切り裂かれている。これは特殊部隊が着るような服だぞ。そこらのユニクロとは違うんだぞ。

「こうなったら一か八かだ」

和司は四隅の壁に向かって走り出した。マイラントもそれを追いかける。

「はぁぁぁ!」

和司は思い切り駆け、壁を蹴った。和司は宙を舞い、マイラントの肩に着地して手榴弾のピンを抜いた。

「これでくたばりやがれ!」

ピンの抜かれた手榴弾をマイラントの口内に思い切り押し込む。すぐに和司はマイラントの肩から降りる。マイラントは口の中にある異物を取り出そうとして手を口に持っていった。

「チェックメイトだ」

和司がそう呟くと同時に口内の手榴弾が爆発した。密閉空間での爆発は想像以上に強く、銃弾をも跳ね返す皮膚を炎は貫き、辺りに焦げた米粒が落ちてくる。内側から核となる梅干を破壊されたようで、腕がだらりと下がった。そして、そのまま和司の横にマイラントは倒れた。

「ついに倒したか」

和司の吐息は少し落ち着いていた。


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