第二十一話:死なせない
「お前には失望したよ、リョスケ」
「止むを得なかった、健斗」
健斗は未だリョスケと睨み合っていた。
こいつがこうちゃんを殺した。その事実が許せなかった。
「そこをどいてもらおうか」
リョスケがデザートイーグルを健斗へ向けた。
「ここはどかねぇ」
健斗は断固拒否した。これ以上殺されてたまるか。
「そうか……」
リョスケが引き金を引き、発砲した。健斗は素早く身を翻すと同時にトンファーを取り出し、デザートイーグルを叩き落とした。
手から滑り落ちたデザートイーグルを健斗はすぐさま蹴り飛ばす。
「これで銃は握れまい」
リョスケの右手は痺れて感覚が無かった。
「なら、左手で相手をしよう」
リョスケは服の袖から警棒を一本取り出し構えた。
健斗は確信した。
リョスケが持っている警棒はこうちゃんが身につけていたものであると。
「これは剛一郎のだったか」
リョスケはこうちゃんの本名を口にだした。
「腕一本で俺を止められると?」
「二年間、戦闘訓練を積んできたんだ」
健斗は二本のトンファーで攻撃を仕掛けた。
「あ、危ねぇ…」
亮太は今すぐにも喉もとに噛み付いてきそうなライスドッグを押さえていた。
ライスドッグは口を大きく開け、それを亮太がなんとか止めている状況であった。
「亮太ー無事か?」
和司が安否を聞く。自分もイーターの舌に巻きつかれて身動きが取れない状況にある。しかし舌で拘束しているだけで、命に別状は無さそうだ。唾液が気持ち悪いが。
それよりも今は返事のない和磨の心配をするべきだった。“あの生物”は着実に和磨に近づいてきている。
突如、放送機器の電源が入る音がした。
「どうだ、“マイラント”の強さは?」
得一の声が放送から流れてきた。マイラントって言うのか。この趣味悪い生物の名前は。
「おい、早く起きろや和磨」
次第に焦りは大きくなっていく。未だ和磨から返事は無い。亮太もライスドッグを押さえるのがせいいっぱいで和磨の救出には迎えそうにない。ライスドッグの気を逸らせればいけるか?
和司はポケットになんとか手を伸ばそうとしたが無理だった。舌の締めつけが強すぎる。
作戦を変えよう
和司は拘束が緩い足を使おうとした。足はまだ動かせる。
振り子のように足を振って、床に落ちている銃を蹴った。銃は少し地面を離れドスっと音がした。
その音にライスドッグは気を取られ、注意を逸らした。
「今だ!」
和司の掛け声と共に亮太は上に乗りかかったライスドッグを蹴り飛ばし退けた。
立ち上がった亮太はさっき床に落としたベレッタM92を拾い上げ、蹴られたライスドッグもすぐに立ち上がり、背後から亮太に襲い掛かった。
「亮太後ろ!」
「わかってる!」
亮太は後ろを振り向かず銃だけを後ろに向けた。銃口はライスドッグの口の中に向けられ、弾丸が解き放たれる。発射された弾丸はライスドッグの脳天をぶち抜き、米が噴出する。そのまま銃を前方に向け、イーターの舌べろに向けて発砲した。銃弾は舌に命中し、和司は舌の拘束から開放された。
「サンキュー、亮太」
和司は纏わり付いていた舌を引き剥がし、舌が千切れたイーターの顔面に蹴りをお見舞いした。ここの特殊部隊の靴は鉄靴だ。
イーターの顔面が吹き飛び、辺りに米が散らばる。
「和磨の救出を!」
マイラントは腕を振り上げ、爪で和磨を串刺しにしようとしていた。
和司に言われたとおり、亮太はマイラントの腕に発砲する。銃弾はマイラントの爪に命中し、爪は砕け散る。
和司はマイラントの懐に飛び込み、倒れている和磨の肩を持ち上げ救出した。
「和磨、意識はあるか?」
「あ…ああ」
反応はあった。しかし、ダメージは大きそうだ。
亮太は引き続きマイラントに向けて発砲していた。だが銃弾を受けてもびくともしなかった。
「まずい、弾が切れる」
亮太が弾込めする隙をマイラントは逃さなかった。すぐに間合いを詰めてくる。
「今度は俺が助けないとな」
和磨が立ち上がり、マイラントへ立ち向かっていく。和磨はマイラントの脚に体当たりをした。
不意打ちに対処できなかったマイラントはその場に膝をついた。
和磨はすぐにマイラントから離れ、拳を構えた。
「動けるの?」
弾込めを終えた亮太が聞く。
「背中を攻撃されなきゃな」
和磨が答える。
「邪魔はいなくなった、これであの化け物と相手ができる」
和司は銃を拾い上げ、マイラントは立ち上がった。




