第二十話:引き裂かれる仲間
ライスドッグとイーターはこちらの様子を伺っている。すぐに飛び掛らないところを見ると、知能は上がっているようだ。
「攻めてこないならこっちからいかせてもらうぞ」
和司は銃の引き金を引き、銃弾が解き放たれる。
イーターは和司が引き金を引いたのとほぼ同時に、飛び上がった。
「明らかに素早くなってやがる」
和司はすぐに飛び上がったイーターに照準を合わせた。空中では身動きは取れまい。
引き金に指を掛ける前に、イーターは舌を伸ばし、舌は弾丸のような速さで和司の左肩を掠った。
思わず、和司は銃を放し左肩を抑えた。貫通しなかっただけマシか。
「和司、大丈夫か!」
亮太は和司の心配をする。
「俺のことはいい! それよりもライスドッグを相手にしろ!」
和司が叫んだ直後、ライスドッグが亮太に牙を向いた。
「っ危ねぇ」
間一髪の所で亮太はライスドッグの胴体を蹴り上げた。ライスドッグはバランスを崩すが、すぐに体勢を立て直した。
「護衛とやらは二人にまかせるとするか」
和磨はメリケンサックをはめ直し、叩き割ろうとガラス管に走った。
「培養液の中でしか生きてけないのに俺らの相手なんか…」
和磨がそう言いかけた時だった。まだ殴りもしないのにガラス管にヒビが入ったのだ。ガラス管の中にいる胎児の様にうずくまった生物は目を覚まし、ガラス管を叩き割った。
ガラスが割れて“その生物”は出てきた。辺りには漏れ出した培養液が拡がっている。
“その生物”は立ち上がり、向かってきた和磨を腕で弾き飛ばした。
「な…」
和磨は受身を取り、すぐに体勢を立て直した。
「なんだよ、あの生き物は」
イーターと交戦中の和司も視線をそちらへ向けた。“その生物”は体長ニメートルは優に越え、鋭利な爪が生え、手足には棘が連なり、頭はおにぎりだった。
「また得一は趣味悪いもん造ったか。こちらとてコメシスを倒したんだ」
和磨は“その生物”に立ち向かっていった。
「頭を破壊すれば死ぬんだろ!」
和磨は跳躍し拳を振り上げたが、“その生物”は和磨の振り上げた腕を掴んだ。
「まずい、和磨が!」
和司は銃口を“その生物”に向けた。
イーターはその隙を見逃さなかった。イーターは再び舌を弾丸の如く伸ばし、舌は和司の左肩を貫通した。すぐに和司の重心が崩れ、銃を地に落とす。伸ばされた舌は今度は鞭の様にしなやかになり、和司の身体に巻きつき、拘束した。
「この気色悪い舌を放しやがれ」
舌を引き剥がそうとするが、舌は強く締め付けている。
“その生物”は和磨を投げ飛ばし、その際和磨は背中を思いきり強打した。
「が…」
激痛で叫ぶこともできず、和磨はそのまま地に伏した。
「和磨、大丈夫か!?」
亮太が和磨に気を取られていると、ライスドッグが亮太に飛び掛ってきた。飛び掛られた勢いで亮太はそのまま倒れてしまう。
「まずい、亮太も」
和司は三人とも動けなくなったことに絶望した。
“その生物”はゆっくりと和磨の方に近づいてくる。
「くそっ、早く動けや和磨」
和司の叫びは空しく響くだけだった。
「どうだ、最新作“マイラント”の力は」
得一はモニターの画像を見て不敵に笑った。
一方、康太達は廊下を未だ移動していた。
「得一はどこ行きやがった」
尚人が不満そうに愚痴をこぼす。
「逃げ足が速いな、全く」
康太も不平を言った。あの短時間で逃げ切るとは流石の逃げ足の速さといったところか。
和司達は無事なのだろうか
康太は二つのことに悩んだ。
「ずっと一本道なのは何か意図があるのか?」
健斗は疑問を言った。
「それはね、得一のいる部屋に直通してるからだよ」
突然聞き覚えのある声がしたと同時に、銃声が響き渡り銃弾は包帯をまいた康太の左腕を掠めた。
康太は痛みでその場にしゃがみこんだ。
「リョスケ…やっぱり黒だったか」
康太が歯を噛み締めながら言う。
「ここから先には行かせない」
リョスケは弾を込めなおし、銃を構えた。
「…ここは俺が引き受ける」
健斗が小さな声で呟いた。
「え?」
康太が聞き返す。
「尚人、康太を連れて先へ行ってくれ」
健斗は尚人に指示を出した。
「なんだかわからないけど先へは行かせない」
リョスケが引き金に指をかけた瞬間、健斗はとっさに前へ出てリョスケの銃を持った右腕を蹴り上げた。
銃口は上を向き、天井に向けて発砲された。
「いいから早く行け!」
健斗は大声を張り上げ、尚人と康太をせかした。
「お前はどうするんだよ」
尚人が康太の肩を担ぎながら聞く。
「後で必ず追いつく」
「わかった」
尚人は康太と共に先へ進んでいった。
康太の心配事は一つ増えた。