第十九話:実験開始
康太は考えていた。
得一は何故リョスケを使ったのか。
ただ俺達を捕獲するのが目的ならばリョスケを使う必要は無い。特殊部隊の連中に捕獲させればいい。
人工衛星を使えば俺達がどこにいるかはすぐわかる。
何故リョスケを生かしておいたのか。
それが疑問だ。
康太は先頭の尚人に追いついた。陸上で鍛えた足の速さは伊達じゃない。
「得一はどこ消えた?」
「さあ。ここまで一本道だから、このまま走ればいいら」
尚人がそう答えた直後、康太達の後ろから赤い線が出るのが見えた。
「やばい、止まれ!」
走っていた和司は突然急ブレーキをかけた。和司が止まったのにつられて和磨と亮太も止まり始めた。
「なんで急に止まるんだよ」
転んだ和磨が怒りながら言うと、赤い線は次々と壁から出てきて、網を形成し始めた。
「レーザーか。このまま走っていたらサイコロステーキになってたな」
和司の言葉に和磨はぞっとした。
「まずい、分断された」
康太たちは康太と尚人と健斗、和司と亮太と和磨に分断された。
「俺達は構わずに得一を追え」
和司は康太達を先へ行かせようとした。
「お前らはどうするんだよ?」と健斗が聞くと、
「大丈夫だ。何とかする」と和司が答えた。
「何とかするって何するんだよ?」
「いいから得一を追え。相手の本拠地である以上、俺達に不利だ。向こうが体勢を立て直す前に得一を仕留めろ」
和司が一喝した。
「和司の言うとおりだ。行こう」
康太が健斗にそう声をかけると、健斗はレーザーの網に背を向けた。
「死ぬなよ」
健斗はそう一言言い残して、歩き始めた。
「八方塞がりだな」
和司達は取り残されてしまった。
曲がり角の向こうからは防護服に身を包んだ人が複数歩いてくるのが見えた。
「前方はレーザー、後方は研究員…ここまでか」
亮太が力無さ気に呟いた。
「さっきの話からすると俺達は実験台らしい。少なくともすぐには殺されないだろう」
そう和磨は言うが内心殺されるのではないかと恐れているのが感じ取れた。
研究員は銃を和司達に向けた。
「手を挙げろ」
どすの利いた声で研究員が言う。防護服は全身を包んでおり顔はよくわからない。
とにかく、ここは言うとおりにした方がよさそうだ。
和司達は黙って手を挙げた。
「付いて来い」
手を挙げたまま和司達は連行された。
「いいから入れ」
和司達は研究員に乱暴に部屋へ入れられた。
部屋の壁は白で統一され部屋の中には何も無い。
ガチャンと錠を掛けられた音がした。
「ったく、もう少し丁寧に扱えや」
和磨が研究員の扱い方に文句を言う。
「しかし、何もないな」
部屋の様子を見て亮太が言う。
「あいつら何で武器を取り上げなかったんだ?」
和司が疑問に思った。抵抗できる術をなぜ残しておいたのかが疑問に残る。
「良い所に気が付いたね」
部屋に放送が入る。
「この声は…得一か」
怒りを露にしながら和磨が言う。
「君達から武器を取り上げなかったのはこれから闘ってもらうからだよ」
そう放送が入ると、床の一部が開き中から大きなガラス管が競り上がってきた。
ガラス管の中には胎児のように何かがうずくまっている。
「まさか、こいつと闘うためか? そんな培養液の中にいる生物に俺達の相手ができるとでも?」
和司が挑発してみせた。
「流石にこいつ一体じゃ未だ不完全だから無理だね」
放送が流れると今度は壁の一部が開き、一メートル四方の檻と、それよりも大きなコンテナボックスが現れた。コンテナボックスの中は見えないが檻の中にはライスドッグが一匹いるのが見える。
「こいつらで時間稼ぎするとしよう」
そう言い残して放送は途切れた。コンテナボックスの中が開くと中からイーターが飛び出してきた。
それに続けて檻の格子を食い破りライスドッグも出てきた。
「なにやら雰囲気が今までのとやけに違う」
和磨の言うとおりだ。ライスドッグからもイーターからも禍々しい空気が感じ取れた。
「まずはこいつらが相手か」
和司はモスバーグM590の弾を装填し始め、亮太もベレッタM92の弾を装填した。




