第十二話:新たなる手がかり
今回ちょっと長いです。
こうちゃんはリョスケにモスバーグM590を返した。
「武器庫は見つかった?」
「ああ、見つかったよ。弾薬も銃も結構な量がある」
リョスケは答える。ここで補充ができるのは大きい。
「武器庫の近くに災害用倉庫もあったから未開封の缶詰やレトルト食品、救急セット、医薬品とかも補充できるよ」
健斗が情報を付け足す。
「じゃ、行こうか」
三人は武器庫へ向かい始めた。
武器庫には想像以上の銃や弾薬があった。こんだけあればしばらくは弾をケチらずに闘える。
しかし、疑問が一つあった。
ここは刑務所だ。軍の施設では無い。こんなにも銃火器は必要なのだろうか。それとも刑務所は元々銃火器を多く備蓄してるのか。
いずれにせよ、ここでの補充は心強い。はるばる来た甲斐があった。
「災害用倉庫にあった食料とかここに出しとくよ」
健斗が倉庫にあった缶詰や医薬品を外に廊下に出していた。食料も結構な量だ。ここ最近、食料をケチりながら行動してたから、これは皆喜ぶな。絶対。
「こんだけあるのはいいけど、ここからどうやって運び出そうか」
「護送車両に乗せて行くのは?」
健斗が案を挙げた。
「確かによさそうだな」
「いや、ダメだろ」
リョスケは健斗の意見を否定した。
「なんでだよ」
健斗が食ってかかった。
「刑務所の堀の外にはライスヒューマンがうようよいるんだぞ。今もここに入ろうとしている。誰が門の扉を開けるんだ? それに車でライスヒューマンを轢きながら進むのは無理だ。血と脂で滑って転倒しやすくなる」
リョスケの言うとおりだ。今俺達がこうやって話している間もライスヒューマンは門を叩いてる。既に刑務所の周りには何千体ものライスヒューマンがいるに違いない。
「じゃ、どうするんだよ」
健斗は自分の意見を否定され少し怒ってるようだ。
「それについては案があるから大丈夫だ。それより興味深いものがあった」
リョスケは武器庫を出て階段を上がっていった。
「興味深いものって何だよ? ちょっと待ってよ」
健斗はリョスケの後を追い、俺も向かった。
リョスケの入った部屋にはデスクトップのパソコンが一台机に置いてあった。部屋にはソファーとベッドがあり、窓からは刑務所の外が一望できた。ここは最上階らしい。
リョスケはパソコンの電源を点け、画面を開いた。
「驚いたよ、まさかこんなのがあるとはな」
「健斗とリョスケは一緒に行動してなかったのか?」
「途中までは行動してたけど、途中からはリョスケが調べ物があると言って別行動になった」
パソコンにはメールボックスの画面が開かれていた。
「こ、これは・・・」
俺はメールに書かれている内容が信じられなかった。
メールは日本語でやり取りされていたのだ。英語ではなく。日本人がここにいたってことになる。それか、日本語の使える外国人のどちらかが。
メールにはこのように記されていた
「こんにちは、直そちらへ向かいます 2011.7.10」
2011年の7月となると今から三ヶ月前くらいか、ということは三ヶ月前には誰かがここにいたということになる。刑務所の中が思っていたよりも汚くないのはそういうことだったのか。
「メールの宛先は誰かわからないのか?」
俺はリョスケに聞いた。宛先がわかればここに誰がいたのかがわかってくる。
「アドレスだけじゃわからん。差出人も誰かは知らん」
「ただ」
「ただ?」
二人の声が重なった。
「情報は少しだけあった」
リョスケはマウスを動かしてファイルを開いた。
俺と健斗は声が出なかった。
そこには、あの試作品の画像があったのだ。
頭はおにぎりで筋骨隆々な姿、イーターに似たあの雰囲気の。
画像の隅にはこう記してあった。
「Eater EX-06」
やはりイーターの改良型のようだった。
「なんでこの画像がこんなとこにあるの?」
健斗が指摘した。
「俺の推測だと、この刑務所は得一が持つ研究所の一つとして機能してたってことだ。三ヶ月前まではな」
リョスケの言ってることで間違いないようだ。この施設は得一の配下にあった。しかし、何らかの理由で廃棄された。だから、過剰とも思えるくらいの銃や弾薬があったのか。
「ここが得一の配下の研究所である可能性は非常に高いな。他にまだ情報は無い?」
俺はリョスケにさらなる情報を求めた。
「もう一つだけ情報がある。これだ」
リョスケはフォルダをさらに開くと、画面に世界地図が出てきた。
世界地図には各大陸ごとに丸で印がつけられていた。アメリカ合衆国北部と中部、ブラジル、オーストラリア、タイ、中国北京、ウクライナ、日本、そしてここリビア。
「この丸印は・・・」
健斗は続ける言葉が出てこない。
「多分、得一の研究所があるところだろう。リビアについてるのはおそらくここを指している」
これは俺なりの推測だ。
まだ不可解な所があった。
一つだけ丸ではなくバツ印がついてあるところがあった。
「そのバツ印は一体何?」
健斗も疑問に思っていた。
そのバツ印はおおよそ地中海を指していた。
「そのバツ印辺り拡大できない?」
俺はリョスケに頼んでみる。
リョスケはバツ印辺りを拡大してくれた。少しづつバツ印がどこを指してるのかわかってきた。
バツ印は小さな島を指しているのがわかった。
その島の名前は
「Elba」
「エルバ島…」
三人とも驚きを隠せない。エルバ島にも得一の研究所があるのか。それとも別の施設が。
「このバツ印が何を示すのかはわからない。でも、他の丸印と違うのはわかる」
リョスケも驚いていた。
「このデータをノートパソコンに入れといてくれ」
俺はリョスケに頼んだ。
「ああ」
とだけリョスケは返事をした。