選ばなかった人生のその先で

三十八歳、独身。
平凡な家庭に育ち、普通の大学を出て、一般的な企業で働く――
悠真の人生は、大きな失敗も成功もないまま静かに終わった。
酒を飲みながら振り返った最期の瞬間、彼が思ったのはただ一つ。
「満足いかない人生だったな」という、取り消しようのない実感だった。
そして、次に目を覚ました時、悠真は別の人生を生きていた。
特別な能力はない。
世界が変わるわけでもない。変えられる力もない。
ただ、人生だけが、もう一度与えられる。
満足できなければ、またやり直し。
納得できなければ、人生は終われない。
何度も生き直す中で、悠真は少しずつ気づいていく。
強さとは才能ではなく、積み上げた選択の数だということを。
そしていつか――
自分のためではなく、誰かを守るために「選ぶ」日が来ることを。
これは、
選ばなかった人生の、その先で。
ようやく自分の人生を引き受けようとする男の物語。