8
「よし、行こうぜカルラ検事!」
「ええ、行きましょう」
ガリレオ・ガリレイとカルラ・レイ検事は逆転と裁判の国ギャクサイを旅立ち、
取り敢えず草原を歩いていた。どこに通じるかもよく分からない。
「なあ、この道って」
「ああ、この道は。その前に、ちょっとトイレ」
「トイレっつってもな。そこらで済ませろよ」
「そうするわ」
カルラ検事は少し離れたところへ歩き、そこで尻を出し踏ん張る。ガリレイからは割と丸見えだが、まあサービスシーンと思えばなかなか悪くない光景だ。ガリレイのレイがエヴァンゲリオンになる。
「わあ、エヴァンゲリオンだあ」
「ん、何だ君?」
「わわ、私はアリス・ト・テトリスです。ぷよぷよと呼んで下さい」
テトリスなのにぷよぷよなのか。
テトリスだからぷよぷよなのか。
「ぷよぷよ」
「わわ、適応早いですね!」
「お前、こんなとこで何してんだ? ここら辺は魔物出るから危ないぞ。ギャクサイならあっちだ」
ガリレイはギャクサイの方角を示すが、ぷよぷよは「あわわ」と手を振る。
「いや、私はただ、魔王様の魔力を感じたもので」
「魔王? カルラか?」
「いえ、カルラ様は天王様です」
「てことは、ナル・フォードとかミッツか?」
「いえ、その二人は天王様の幹部です」
「てことは、裁判長が天王か?」
「いえ、あの、さっきカルラ様が天王と」
台詞を遡ると確かにそう言っていたため、ガリレイは少し冷静になる。
「あ、俺か?」
「はい」
「俺が魔王か!」
「はい、魔王様!」
「じゃあしゃぶれよ」
「ほえ? は、はい!」
ガリレイは自身の汚いレイを、無垢な少女にしゃぶらせる。ラノベでないと許されない所業だ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ、気持ち良いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぜええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「はむ、ふむ、ほむ」
「まるで夢みたいなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ劣情のバレットおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「それはサクマヒメの奴じゃないの?」
「あ、カルラ検事!」
「ぴゅぴゅっ」
「ぐえ、ぐは、ごほ」
うんこを終えたカルラ検事は帰還し、びっくりしたガリレイは射精し、それを受けたぷよぷよは吐き気を催す。ここまで汚い一文があるだろうか。
「俺、魔王らしいよ」
「は? 私は天王よ」
「私はメス豚でええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええす‼」
ぷよぷよはアへ顔Wピースで腰を振るが、誰もそんなありったけの夢を求めていない。ポケットにロマンがあれば十分なのだ。羅針盤なんて渋滞の元なのだから。
「カルラ検事って天王なの?」
「ええ、てか私は天子で天王は私の父ゴーゴンね」
カルラ・ゴーゴン。そういえば裁判中に見たような気がする。
「魔王様の方が強い‼」
「なにおう」
「やるかあ」
ぷよぷよとカルラ検事が喧嘩を始める。
「魔王様‼ 天王様を倒して魔王帝国を作りましょう‼ 王道帝国を‼」
「王道、帝国……」
王道帝国
邪道王国ギャクサイ
正道皇国
外道大国
「それも良いかもなあ」
要するにガリレイのハーレム帝国を築き上げることが可能という訳か。そこには当然カルラ検事やぷよぷよもいて、皆が裸でガリレイを
「気持ち悪い地の文はやめなさい! 国はあげるから!」
びしばしと、カルラ検事の鞭が舞う。ん? いや、待てよ。
「今なんて? クンニしてあげるから?」
「気持ち悪い聞き間違いはやめなさい! エデンの檻⁉ 国をあげるって言ったのよ!」
「いや、国は今ゴーゴンに。あ、そうか」
「え? 何何? は? ん? つまり? 要するに?」
何となく察したガリレイと、全くピンと来ないぷよぷよは、カルラ検事に先を促す。
「お父様! 私に玉座を譲りなさい!」
「ああ、いいよ」
ゴーゴンはレイに玉座を譲る。
「意外とあっさりしてるのね」
「いや、てかお前もなかなか判断が早かったな。あと二、三十話くらいはごねるかと」
「門倉作品のスピード感を舐めないことね!」
レイはゴーゴンに鞭を振るう。ゴーゴンは心地良く打たれていく。こここそがVIPの席なのだから。
「VIP名乗る奴などいないのだ。扉の向こうにも、な」
「お父様……」
天王の座を譲ったゴーゴンの顔には、若干の憂いのようなものが感じられた。レイが背負ったものは、国だけではないのかもしれない。もっと巨大で、大切なものなのかもしれない。
「宴だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
モンキー・デーモン・ルシファーが猛る。彼はテーブルに出された料理を伸縮する身体でどんどん消化していく。
「うんめええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ‼ 最高だぞサン・Gいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」
「糞召し上がれ、糞船長」
サン・Gと呼ばれた料理人は、モンキーの言葉に応じる。何の宴か、というと。まあ言うまでもないかもしれないが、
「新天王カルラ・レイ様だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
「召し上がりなさい、豚共」
ほぼサン・Gと同じようなことを言っているが、つまりまあそういうことだ。
「私こんな美味しいもの、食べたことありませんよ!」
ぷよぷよはサン・Gの料理を気に入る。
「ぷよちゃーん! どんどん食べてねー!」
「はい! ありがとうございます、サン・Gさん!」
サン・Gが出す料理を、ぷよぷよもモンキーみたいな吸引力で消化していく。いや、お前はゴム人間ではないのだから無理はするな。と思うガリレイだが、しかし本当に美味しい。麦わらの一味の連中は毎食こんな美味しいものを食べているのだな、と考えると何だかネトフリでワンピースを観たい気分になってきた。
天王 カルラ・レイ
天子 ナル・フォード
天子 ミッツ・ルギー
天子 裁判長
魔王 ガリレオ・ガリレイ
魔物 アリス・ト・テトリス
魔物 モンキー・デーモン・ルシファー
魔物 サン・G
「今の内訳はこんな感じか?」
「まあ大体そんな感じね」
「天王勢と魔王勢が大体平等に分配されたな」
「まあ大体予想通りよね」
ガリレイとレイは軽く話し合う。宴を経て仲は深まってきたが、これからすることと言えば
「世界征服。この王道帝国ギャクサイの支配を、さらに広げていく。そしてそこから生まれる」
「世界平和を目指す、ってことか」
「ええ」
ガリレイの理解にレイは頷く。しかし、支配範囲を広げるとは言っても、具体的にどこの国をどうやって取り込むのか。
「貴男はまず地動力を自分の物にしなさい。軍事力は大事よ。その要となるのが、恐らく貴男なのだから」
「ああ、チートスキルだもんね」
「ええ、まあ、そうね」
鞭が飛んで来るかと身構えていたが、そこは素直に受け入れてくれた。そしてそれにより、やはり地動力というものは特別なものなのだという理解に繋がる。
「魔王だけじゃない。その眷属となる魔物にも地動力を教えなさい。眷属には王の力の一部を授かる資格がある。『マギの法則』よ」
「つまり、天王であるレイの眷属、天子達にもレイのような力が」
「ええ、だから私達ツートップは強く在る必要がある。軍事力の要なのだから」
「よおし、頑張ろうぜレイ」
「ええ、やるわよガリレイ」
何か初めてレイと分かり合えたような気がした。今までは仲間というよりセフレみたいな感じだった。
レイは天動力を天子達と励んでいる間に、
ガリレイも地動力を魔物達と少しずつ学んでいく。
天動力はメジャーな力であるため
ナル・フォードやミッツも使えるが、
地動力はマイナーすぎるため
ガリレイしか使えない。
「出来ない、出来ないよお」
「おれは……弱い‼」
ぷよぷよは嘆き、モンキーは絶望的に悲観する。
「地を動かすイメージで。感情を昂らせて」
ガリレイは少々コツを掴み、ある程度使いこなせるようになってきた。
「海賊王に……おれはなる‼」
モンキーは覇王のような覇気により、無理矢理地面を震えさせた。
「そうそう、そんな感じ」
それを見たぷよぷよは
「私は、魔王様と結婚して好きなだけちゅっちゅする‼」
ブラックブレットみたいな意気込みだが、一応大地は揺れた。いや、こんな感じで良いのだろうか。
「ぷよぷよもモンキーも良い感じだな。よし、その感覚を逃さず掴んで行こう」
「はい!」
「おう!」
そういえば忘れていたが
「糞飯出来たぞテメエらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
サン・Gは料理を作っていた。
「うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼ サン・Gの料理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」
「負けませんよ、モンキーさん!」
飛びつくモンキーと、それに負けじと料理に迫るぷよぷよ。
「サン・G君も地動力の練習する?」
「いやいや、俺は料理専門だからさ」
まあ彼は料理人なのだから戦場に出るべきではないのかもしれないが、何となく彼にも一応教えておいた方が良いような気もする。何となく強そうだから。
「地動力か。難しいな」
「自分の衝動というか、本能を引きずり出すんだ」
「本能? アミさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん‼ コビンちゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん‼」
出来た。割とあっさり地動力を手にした。
「お、出来た。よし、魔王様も食べてくれよ。冷めちまうぜ」
「ああ、うん」
やはり彼は両翼に相応しい男なのかもしれない。
魔王ガリレオ・ガリレイの。
もう片方の翼は。
「ねえねえ、ここギャクサイ城でしょ?」
「あ、ああ」
「通してよ」
「いや、怪しい者は通せん!」
「怪しい? ああ、これか」
マジカルドロップは持っていた生首を捨てた。
「こいつなかなか道教えてくれなくてさ、殺しちゃった。ね、通して」
「い、いや通せん! 帰れ!」
「じゃあ死ね」
マジカルドロップは門番の首を刎ねた。そして門を潜り、中へ侵入していく。
「俺こそが魔王だ」
王室を目指して。
「ま、マジドロ兄さん!」
「やあ、テトリス。ええと、誰が魔王かな?」
「おれは海賊王になる男だ‼」
「じゃあ君じゃないね」
「おれは男には興味ねえ‼」
「僕も君に興味がない。てことは」
「あ、俺だよ」
ガリレイは気さくに答える。ぷよぷよに兄がいたというのは驚いたが、まあ兄妹なら特に問題は
「何持ってんだ、お前?」
「ん、ああ、これ」
マジカルドロップは生首を持っていた。
「門番の首、間違えて持ってきちゃった」
マジカルドロップは門番の首を捨てる。
「ね、魔王様。僕に魔王の座を譲って」
「断る、と言ったら」
「うーん、テトリスの仲間のようだし、なるべく殺したくはないんだけど」
と言いながら、マジカルドロップは一気に間合いを詰め
ガリレイの首を刎ねてみせた。
「はい、君の物語は終わりだ。ここからは魔王の役は僕が継ぐ」
「魔王様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
ガリレイの物語は、割とあっさりと終わってしまった。
ここからは魔王の役はマジカルドロップが受け継ぐ。
特別な人間などいない。皆いつかは死ぬ。人は死んだら骨一つなのだから。