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3-A シノブ 千両

2-A 平 聖頑宮 B サツマヒメ 枷 葉子

1-A サクマヒメ ウラララ‼ 佐々木 B 駄目太


CFW サツマヒメ

LFW サカ神シノブ

RFW 平京崩

CLMF サクマヒメ

CRMF 青野葉子

LWMF 千両勘吉

RWMF 幻野大地

CLDF 佐々木貴志

CRDF 駄目駄目太

LWDF 羽葉堂綾乃

RWDF 七瀬虹子

GK1 春麗ウラララ‼

GK2 枷格子牢


「僕は駄目だからまだまだ練習しないと駄目なんだ。

駄目駄目。駄目だから嫌われるんだ」

「嫌ってないよ、駄目太くん」

 そこに現れたのは、

「ドラえもん‼」

「駄目太くん‼ って葉子だよ‼」

「なあんだ、葉子先輩か」

「何でドラえもんでテンション上がってヒロインで下がるの⁉

 ラブコメ主人公失格でしょ‼」

「え? 葉子先輩がひみつ道具で

 俺を世界一のストライカーにしてくれる企画でしょ?」

「他力本願の方向性がヤバいね君‼」

 ダウナーな駄目太くんに、アッパーな葉子先輩は呆れる。

「でも、練習頑張ってて偉いね」

 葉子先輩は駄目太くんの頭を撫で、

「うわああああああああああああああああああああああああああああ‼」

 駄目太くんの隠していた感情が悲鳴を上げている。

「好きです‼」

「いや、駄目だよそんなの‼ もっと好感度上げてからにしてよ‼」

「え? 脈脈アリアリくんでは?」

「脈脈ナシナシくんだよ! ラブコメ舐めないでよ!」

「嫌だああああああああああああああああああああああああああ‼」

「駄々捏ねないでよ! 本当に駄目だな駄目太くんは!」

「ドラえもん」

「いや、葉子だって」

「葉子先輩いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」

 駄目太くんは駄目押しのダイレクトアタックを繰り出すが、

「駄目ええええええええええええええええええええええええええ‼」

 普通に迎撃されてしまった。

「まだ駄目なんですか⁉」

「逆に何でイケると思っちゃうの⁉

 今んとこ君好感度下げることしかしてないのに‼」

「葉子先輩、何で服着てるんですか?」

「人間だから‼ 2冒頭のシノブ先輩のイメージ⁉」

「糞があああああああああああああああああああああああ‼

 糞不平等なんだよ、糞神おおおおおおおおおおおおおお‼」

「いや、その台詞言ったらキャプテンになれる訳じゃないよ⁉」

「俺達って今までどこにいたの?」

「さあ? 弱すぎてモブ扱いってか、省かれてたんじゃない?」

 という葉子先輩もよく分かっていないし、

 作者もよく分かっていない。

 というよりも、こいつらは急に生えたキャラであるため、

 そもそも出すつもりがなかった、というよりついさっき思いついたキャラなのだ。


牛尾中学校 生徒分布


3-A シノブ 千両 B 羽葉堂 七瀬

2-A 平 聖頑宮 幻野 B サツマヒメ 枷 葉子

1-A サクマヒメ ウラララ‼ 佐々木 B 駄目太


 幻野くんを忘れていた。

 羽葉堂と七瀬はそこら辺で良いか。


牛尾中学校 サッカー部 フォーメーションA


LFW サカ神シノブ

RFW 平京崩

CLMF サクマヒメ

CRMF 青野葉子

LWMF 千両勘吉

RWMF 幻野大地

CLDF 佐々木貴志

CRDF 駄目駄目太

LWDF 羽葉堂綾乃

RWDF 七瀬虹子


GK1 春麗ウラララ‼

GK2 枷格子牢


控え サツマヒメ バカボンド


牛尾中学校 サッカー部 フォーメーションB


CFW サツマヒメ

LFW サカ神シノブ

RFW 平京崩

CLMF サクマヒメ

CRMF 青野葉子

LWMF 千両勘吉

RWMF 幻野大地

CDF 佐々木貴志

LDF 羽葉堂綾乃

RDF 七瀬虹子


GK1 春麗ウラララ‼

GK2 枷格子牢


控え 駄目駄目太 バカボンド


「だりゃりゃああああああああああああああああああああああ‼」

 猿のような少年が校舎を押していた。

「何やってんだよお前‼」

「無理だと分かっていても、やんなきゃなんねえことが

あるんだああああああああああああああああああああああああ‼」

「いや、無理か可能かとかではなく!」

「だりゃりゃあああああああああああああああああああああああ‼」

 心なしか校舎が動いたような気もする。

 いや、それは心がなさすぎる。

 動かされてたまるか。

「無理だろ、諦めろよ‼」

「無理だと分かっていても、やんなきゃなんねえことが

 あるんだああああああああああああああああああああああああ‼」

 無理、諦めろは火に油だったか。

「うわああああああああああああああああああああああああああ‼」

 バックに大猿が出た。

 この演出は

「動いた⁉ ちょっと動かなかった?」

「まだまだああああああああああああああああああああああああ‼」

 猿のような少年はさらに力を籠める。

 校舎は確かに動いた

 ような気がした。

「動いた‼ 確かに動いたことが

 実感として分かる‼」

「まだまだああああああああああああああああああああああああ‼」


牛尾中学校 三大聖女


サカ神シノブ 青 三年

聖頑宮槍子 赤 二年

春麗ウラララ‼ 黄 一年


「そういや、千両先輩ってシノブのこと好きなの?」

「ん? いや、俺の推しはアラララ‼ さんだけど」

「お母さんは私とお父さんの物です‼」

「じゃあシノブさんでいいや」

「いや、一応俺の彼女なんだけど……」

 何でも食える千両に平は呆れる。

「てか何でワシが三大聖女に入ってないんじゃ⁉」

「いや、サクマヒメは緑だし」

「緑を馬鹿にするなああああああああああああ‼」

「いや、馬鹿にじゃなくて、

 信号色で揃えた方が良いだろ。あと」

「あと?」

「お前は何かイメージが汚いからな」

「汚くない‼」

 サクマヒメは頬を膨らませる。ちょっと可愛い。

「いや、一時期ウンコウンコ言ってただろ。

 聖女って感じじゃねえよ」

「ウラララ‼ もそこそこ

 下ネタ言っていたような」

「いや、お前ほどじゃないし、

 お嬢様だからまだイメージ綺麗なんだよ」

「そうだよ、サクマヒメ。

 私らだって入ってないんだ」

「んだんだ」

「お主らと一緒にされたくない‼」

 サクマヒメは羽葉堂と七瀬を拒絶する。

 しかしこいつら久し振りに見たな。

 まあこいつらはシリカとリズベットであるため、

 サクマヒメはまだリーファ程度の地位を保っている。

 シノブがシノンで

 聖頑宮さんがアドミニストレータ様で

 ウラララ‼ がアリス

 いや、シノブがアスナで

 聖頑宮さんがアリス

 ウラララ‼ がシノンだろうか。


「無理だと分かっていても」

「またかよ、バカボンド。て」

 平の目には、バカボンドが

「やんなきゃなんねえことが、

 あるんだあああああああああああああああああああああああああ‼」

「すげえな、バカボンド‼」

 上空からの超巨大な光線のようなものを

 両手で食い止めているシーンが映った。

「頑張れ、バカボンド‼」

「平、おめえの元気をくれええええええええええええええええええ‼」

「! あ、ああ!」

 平は勘で手を上げる。

「受け取ってくれ、バカボンド‼」

「来たあああああああああああああああああああああああああああ‼

サンキュー平‼」

 心なしか、平の元気がバカボンドに移ったような気がする。

「オラの大好きな牛尾中学校を、

 おめえなんかにぶっ壊させねえ‼」

「バカボンド‼」

 しかし、この攻撃は誰からの物なのだろうか。

 遠目に白と紫で彩られたエイリアンのようなシルエットが

「この猿野郎があああああああああああああああああああああああ‼」

 そして黴菌のような声が

「オラ尻尾が生えてるから、人間じゃねえのかもな……‼」

「ここで言う台詞じゃなくね⁉」

 しかし、ここでバカボンドが力尽きたら、

 牛尾中学校が消滅してしまう。

「頑張れ、バカボンドおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

「平ああああああああああああああああああああああああああああ‼」

「何⁉」

「おめえの元気、全部オラにくれえええええええええええええええ‼」

「俺が死ぬよ⁉」

 しかし、平一人の命で地球が救えるのならば

 平は短い逡巡の中

「受け取れ、バカボンドおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

 手を上げる。


「これがオラと平の

 友情のかめはめ波だああああああああああああああああああああ‼」

「こんな猿共に……

 この私が……」

 フリーレン様は葬送された。

 これがジャンプとサンデーとカクヨムの

 親子三大かめはめ波だ。

「親子かは疑問だがな。

 なあ、三代だっけ? 三大だっけ?

 平? 平?

 平あああああああああああああああああああああああああああああ‼」

 平京崩は

 真っ白になり

 地面に突っ伏していた。

「うわああああああああああああああああああああああああああああ‼

 平が死んじゃったよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

 バカボンドは泣く。

 ただただ泣き叫ぶ。

 さすがにバカボンドも平を殺すつもりはなかったのだ。

 ただ、フリーレン様を葬送するには

 平の全生命力が必要だったから仕方なく

「あ、そうか!

 フリーレンを生き返らせれば

 元に戻るんじゃねえか⁉」

 バカボンドは本当に馬鹿のため、

 何の解決にもならない

 最悪の解決法を思いつく。

「それでまた平に元気貰って

 フリーレン倒せば良いんだ‼」

 バカボンドの理論は

 聞いていると頭が痛くなる。

「筋斗雲よーい!」

「孫くん‼」

「げげ、ブルマ‼」

 そこにいたのは青髪ショートの美少女だった。

 いや、サカ神シノブだ。

「ブしか合ってないよ孫くん‼

 ん? この残骸は?」

「平‼」

「甲斐だ? 甲斐くん?」

「平‼」

「全裸?」

 シノブは制服を脱ぎ始める。

「おめえの汚えケツなんか見たくねえ!」

「汚くないわよ、失礼ね!」

「おめえ胸にケツ付いてんのか⁉」

「そこまで豊かじゃないと思うけど!

 自分で言うのも変だけど!」

「シノブ、ふざけてる場合じゃねえぞ!

 平が死んだんだぞ!」

「え? 平?

 平凡人?」

「オラとごっちゃになってねえか⁉

 サッカー転生の平だ‼」

「ああ、あの主人公っぽい人?」

「おめえの中でそんな認識薄いのか⁉

 おめえの彼氏だろ‼」

「ああ、京ちゃんのこと?」

「そんな呼び方してたっけ⁉」

「それとも崩ちゃんのこと?」

「それ多分同一人物だろ‼」

 しかし、シノブは残骸呼ばわりした時から

 いや、その前にバカボンドらが叫び合っている時から

 何となく気が付いていた。

 ただ目を逸らしていた。

 いや、彼氏が、キャプテンが、主人公が死んだなんて

 受け入れたくないだろう。

「アンタが」

「え?」

「アンタが死ねば良かったのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」

「およそ悟空に浴びせるべきではない罵倒だな‼

 オラこの世界だとヤジロベーくらいの立ち位置⁉」

 次回、平部長の葬式が

 しめやかに行われる‼


「あ、そうか!

 平から元気貰ってフリーレン倒したんだから、

 フリーレンに元気与えたら平生き返るんじゃねえか⁉」

「いや、全く意味が分からないんだけど……」

 バカボンドのアホな理論に、シノブは呆れる。

 しかし、そこでふとアイデアが浮かぶ。

「いや、てことは。

 バカボンドが平くんに元気を与えたら

 ワンチャン……」

「あ、そうか!

 おめえ賢えなあ!」

 バカボンドは平の残骸に近寄り、

 手を向け元気を送り込む。

「ん、んあ」

「平‼」

「平くん‼」

「おお、バカボンド。にシノブ。

 アイツ倒したか?」

「ああ! おめえのお陰だ!」

「心配させないでよ、ばか」

 シノブは平に抱き着く。

「あまり強く抱き締めると、

 俺のHPが無くなるぞ……」

「ばか!」

「いやあ、良かった良かった」

 バカボンドは安心して笑う。

 まあ全部こいつの所為ではあるが、

 こいつはこいつで色々頑張っていたような気もする。

「バカボンド、サッカー部入れよ……」

「オラこの世界だとジンベエの立ち位置⁉」

 ヤジロベーだったり

 ジンベエだったり。

 もうヤジンロベエではないか。

 野人の露平だ。

 宮前葵先生の野人令嬢は絶賛発売中だ。

 どこからの絶賛だろうか。

 しかし、平の勧誘を受けたバカボンドの目には

「当たり前だのゴムゴムの戦斧だ‼」

 闘志の炎が宿る。宮前葵先生の炎上よりも熱く。


「ドランゴ、僕は……」

「くえ?」

「戻りたく、ないよ……」

 幻野くんはドランゴを抱き寄せ、ただ泣く。


「じゃじゃーん! 私は凄い買い物をしたんだ!」

 貴央先生は小さい胸を張り、

「おお、そうか! 遂にアレを買ったか!」

 サクマヒメは何となく察しがつく。

「ああ、そうだ! 遂にアレを買ったんだ!」

「冷蔵庫じゃな!」

「惜しい!」

「じゃあ掃除機か?」

「惜しい!」

「洗濯機じゃな!」

「もう正解言おうか?」

「炊飯器?」

「家だ‼」

「イエティ?」

「いや、家だ! ハウスだ! ホームだ!」

「ホームベースを買ったんじゃな!」

「そんなやしろあずきさんみたいな買い物はしない!」

 やしろあずきさんは三角コーンが大好きだ。

「家を買ったのかあああああああああああああああああああああああああ‼」

 サクマヒメは驚きで少し固まる。

「ああ、家を買ったんだ! 一軒家だ!」

「遊びに行ってもいいか?」

「おお、来い来い。私一人では広すぎるからな」

 そう、貴央先生一人では……。


「保健室暮らしの良いところを教えてやろう!」

「はい」

「まず、金が掛からないんだ! 家賃とか払わなくていいし、

 金が無限に溜まっていくんだ!」

「良いですね」

「あと、私はスーパーインドアだからな!

 別にこの保健室という狭い空間で事足りるんだ!」

「凄いですね」

「そして通勤も楽だ! 何故ならここが職場だからな!」

「ルーラ要らずですね」

「ルーラ……幻野くんは、元の世界に帰りたいか……?」

「え、まあ、そりゃあ。でも、多分」

「いや、無理とは限らんぞ? 来れたのだから行けるだろ。

 ただ、どう来れたのか分からんから、どう行くかもまだ分からんが」

 そこで貴央先生はふと脳裏にドランゴが浮かぶ。

 ドランゴは幻野くんよりも前に卵としてこの世界へ送り込まれた。

 つまり、幻野くんが元の世界に戻る鍵を握っている可能性が高い。

 しかし、貴央先生としては

「貴央先生」

「ん?」

「いつもありがとうございます」

「え? いや、だって、私は。君のことが」

 そこで貴央先生は少し恥ずかしくなり、顔を伏せる。

「ターカオ」

「え?」

「僕の妹の名前です。貴女は、妹によく似ている」

 貴央先生は息が詰まる。

「妹さんに、会いたいか……? あ、いや、愚問か」

 幻野くんは何かを想起するように、視線を逸らした。

 まずい。湿っぽい空気になってしまった。

 と貴央先生は自戒する。


「家が、欲しい」

 と貴央先生は切に願った。別に家を買って思う存分オナニーしまくりたいとか、そういう話ではない。幻野大地。そう、彼には家がない。言うなればホームレス状態なのだ。それゆえ、今は保健室で貴央先生と二人暮らしをしている。しかし、

「甲斐性、かあ」

 そう、貴央先生は幻野くんに家を買って、甲斐性を見せてやりたいのだ。貴央先生の給料はそこまで多くもないが、しかし散財もしない上に保健室暮らしのため、毎月こつこつそこそこ貯めてきているのだ。それゆえ、アパートを借りるくらいならば出来るはずだ。

「ボロアパートで幻野くんと二人暮らし。悪くないな」

 もうボロと決めているが、貴央先生はそこまで衣食住に拘るタイプでもないのだ。彼女の大部分は知識欲と性欲で占めている。


「ここが新しい我が家だ‼」

「おお」

 幻野くんは貴央先生に招かれ、『キャッスルあかばね』と書かれたボロアパートへ来ていた。

「僕のためにわざわざありがとうございます、貴央先生」

「い、いや、私もさすがにいつまでも保健室暮らしは、うら若き乙女としてどうなんだ? と疑問符でキャッチボールする日々だったからな」

 貴央先生は少しテンパり、少々意味不明な言動を口走る。まずい。幻野くんに引かれてしまう。しかし、幻野くんは涼し気な、そして嬉し気な表情で

「行きましょう、貴央先生」

 と気乗りした様子で貴央先生を誘導する。意外な積極性だな、と貴央先生は少し彼を見直す。しかし、教師と生徒ゆえに節度は必要だ。と貴央先生はこの作品に似つかわしくない、非常に淑女的な思考を展開させる。


 しかし、アパートは失敗だった。いや、何が失敗だったかというと、

 隣の鋼野さんが反対隣の槍崎さんと遊びでキャンプファイヤーをしていたら、

 キャッスルあかばねは全焼した。


「まあ、よくあるご近所トラブルさ」

「いや、全くよくはない気が」

 貴央先生の話にサクマヒメは首を傾げる。

「そして私と幻野くんはまた保健室暮らしに戻ったが」

「おお、振り出しじゃな」

 ふむふむ、とサクマヒメは何とか理解を得ようとする。

「思ったんだ。盤石ってどれだけ稼げば手に入るんだろう、ってな」

「オブジェクト設計士の卵みたいな疑問じゃな」

 貴央先生のヘヴィーな話に、サクマヒメはネバーゲイブアップでワンモアチャンスする。貴央先生のベイビーはマグナムする。

「まあ、そうして家を買った訳だ」

「いや、まあ、そうなんじゃろうが。あれ? 今時間飛んだ?」

 サクマヒメは近くにスタンド使いがいないか、と周囲を見渡す。

「しかし、馬鹿な買い物をしたものだ。もう彼はいないのにな」

「貴央先生……」

 貴央先生とサクマヒメは、運命のあの日のことを思い出す。


「ドランゴが、女の子に……?」

「ハーハラ‼」

「ボッツ‼」

 幻野くん改めボッツは、ドランゴ改めハーハラを抱き締める。そしてハーハラの

「ジンゲ‼」

 という次元操作魔法により、時空の歪みが発生してしまう。貴央先生は理解した。もう彼は帰ってしまうのだろう。ハーハラと共に、元の世界へ。

「幻野くん‼」

「貴央先生、貴女の玉子焼き、美味しかったです。また、食べに来て良いですか?」

「あ、当たり前だ‼ いつでも来い‼」

「はい。ではまた」

 そう良い、ボッツとハーハラは時空の歪みへ吸い込まれていく。長い、そして儚い夢だった。

「推しの王子様」

 貴央先生のその台詞を、隣にいたサクマヒメだけは聞き入れた。サクマヒメは状況に似合わず、少し微笑む。これで幻野大地という少年との出会いから別れまで、全て終了したのだ。そこまで月日が経った訳でもないが、しかし無限に近い夢幻を見せてもらった。どれだけ上手いことを言っても、彼は戻ってこないというのに。

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