第四十二話 覇者たちは、今日も素知らぬ顔でバカをする(ランキングフォーム開設したよ!!)
長らく待っててくれてありがとおおお!!
なんか、8000文字くらいだよ
...ギャグって楽しいなぁ( ºΔº )
まままま、ご愛嬌で乗り越えてねっ!!((((
SIDE ショーン
鴉の羽根に囁くような光沢が、瞼に差し込む。
その穏やかさが、妙にざらついていて――
シルアの心に、控えめな物足りなさが忍び寄ってくる。
媚薬に棘が生えたような感覚が、身体中を貫いて。
歪さを孕んだまま、意識に崩れた淵を摺り込んでいく。
胸の奥が、残忍に拉げる。
脳裏で途切れかけた意識が、徐々に痛みを増す。
それでも。
ぴくり――と。
指先に綴じられた、暖かな痙攣が。
包むように、心を繋いでくれるから。
ゆっくりと、視界が拓かれていく。
その度に、空気が安らいでいって。
研ぎ澄まされた湿り気が、肺に移ろう。
古代の脈を滾らせたまま、ひんやりと沈んでいく。
喉の奥で、声が詰まる。
淡い期待が、張り詰めた瞳の奥で熟れて。
やがて――微かに、呼気と共に絡まり出る。
「ん、ここは……?」
海月が朧月夜の中で、道しるべを奏でるように。
掠れた、微睡の呟き。
声が吸い込まれた先には――
夕日が添えるように、照らされていて。
ふるりと、心が震えていく。
実感を捺しながら、睫毛に滲む。
その光景に、ほんの少しだけ心が緩んだ、そのとき――
「キャピルルイル!!!」
視界が、輝いた剣に占領される。
その声色には、懐かしさが弾けていて。
弟の帰りを待っていたアニキのように、逞しく。
けれども、どこか安堵と呆れを帯びた子犬のお出迎えみたいに。
シルアの身体中を、勢いよく跳ねて、ぽこぽこと抱きしめる。
剣身に滴る感触が、冷たいのに。
なぜか、全身がほどけていって。
「ちょ、リュドエールル……あははっ、くすぐったいって!」
シルアの唇から、笑い声が溢れる。
肌に当たる日差しが、心なしか和らいで。
微睡の余韻を、緩やかに紐解いていく。
空気が瑞々しく弾けて――ふと。
シルアの指先に、どくんと、拍動が伝ってくる。
その先には……
盃の隅で彩られた花束のように、ささやかに。
けれども、手向けた想いを梳かしたまま。
白くて、細い指が、絡まっていた。
伝った鼓動が、ひとつ。
シルアの吐息を、紡いでくる。
その指先が、さらさらと、伺うようにせせらぐ度に。
心臓の底で、爽やかな風が滲みを織り成していく。
その動きが、まだ夢の狭間にいるようで。
綿毛にしゃぼん玉が零れるような、か弱さをちらつかせてくる。
少しでも早く、その声が聞きたくて。
少しでも早く、彼女がいることを感じたくて。
きゅっ、と。
意識の居場所を示すように、願望を縫いながら。
繋いだ指先に――力を込める。
「うう……ん?」
漏れ出た声色には、胎動の気配が宿っていて。
蛍の残花を捺した、煌めきを孕んだまま――
紅い瞳が、僕を映す。
うっすらと漏れた呼吸が、睫毛を梳かして。
頬の色を、暁へと染め上げていく。
ひとときだけ、瞬きを灯すと。
辺りの空気が、深雪を芽吹かせるように、流れて。
解けたおまじないを、シルアの血液へと送る。
「おはよ、シルア」
あくびをくすぐらせながら、ふんわりと微笑んでくる少女。
その姿が、藍色のベールを隠された真珠のように、満ちていて。
シルアの鼓膜が、誇らしげにくつろいでいく。
白い髪に、風が羽ばたきを添えると。
じんわりと、髪束が西日へと透き通って、
――指先に絡まる温もりに、感情を与えていく。
シルアの心に、ゆっくりと拍動が奏でられ始める。
皹に蜂蜜が蕩けていくような、鱗粉を孕んで。
ようやく、夢の扉が閉じられたような感覚。
(――エミレと、現実に戻ってこれたんだ。)
その事実が、声に季節を加えてきて。
祝福を纏ったまま、指先がほどける。
「おはよう、エミレ……!」
声にした瞬間、心が咲き放たれる。
蝶が霧を祓うような、爽やかさを嗅ぐわせて。
胸いっぱいになるまで、温もりが敷き詰められていく。
靡いた不揃いの髪が、箒のように跳ねていて。
そのちぐはぐさに、シルアの掌が強く握り締められる。
かつて手向けた痛みの味が、青臭さを掘ったまま。
口の中で、銀杏のように腫れていく。
ふと、向けた視線の先には――
荘厳な宮殿が立ちはだかっていて。
柵に巻き付いた針金のように、自戒を心に下してくる。
(――まだ、『始まり』を知るには、早すぎる、か。)
無慈悲な通告が、潮を吹いて、瘡蓋に塗りたくられていく。
未熟さのまま結んだ、白い花を頭にかぶるように。
刻みついた誓いが、シルアの胸に痺れを覆う。
けれど。
胸の軋みこそが、踏み出すための糧となるような気がして。
静かに息を吸いこんだ、その瞬間――
「お、バカどもが起きたか……って。」
夕暮れが闇夜へと誘われる静寂を、
バケツをひっくり返したような声がぶち壊す。
「なに、一番の功労者である俺様がいない間にしんみりしてんだ!!
ったく、身体だけ宮殿の前に戻ってきたと思ったら、何時間も寝やがってよぉ。」
ズタズタと舞い上がった地団駄が、夕霧と混じって、
無駄に幻想的な風景をまき散らしていく。
五月蠅い怒号に、妙な気品の混じった銀髪。
うん、間違いない。レシャミリアだ。
「ふふっ、おかげさまで無事帰還~。
どう、しがなき覇者のエミレ様が帰ってきて嬉しいでしょ?ね?」
ファッサファッサと、髪をたなびかせながら、宣うエミレ。
その間だけ、風がピタリと凪いでいたのは、いうまでもない。
「いや、お前、その前に言うことあるだろ普通!?」
呆れ交じりに突き出された突っ込みに、エミレは小さく首を傾げる。
「あー感謝しろってこと?
いやはや!!それはーそれはーもう!
とてもありがとーうございましーたー」
棒読みをも際立てるような、直角のお辞儀。
一寸の隙も無い、洗礼された佇まいは、
年輪に隠された星屑を思わせる。
その気品を湛えた曲線美が――ぐにゃりと裏返す。
そのまま。
まるで、鯉が滝を昇り切ったような、荘厳な気配を激らせ……
ブリッジをした。
……は?
「おかげさまで、このとお~り!!
エミレ様は、元気だよっ!!」
突如。
風神が稲妻を誤飲したような突風が、程よく吹き荒れる。
絶妙な加減を攻めたそれは、エミレのスカートへと歩み寄り、
――宙へと舞う綿毛の如く、光の粒をまき散らしてチラつかせる。
状況を噛み砕くよりも前に、真っ赤になったシルアは慌てて、目を隠した。
「ちょ!?
エミレ見えるからっ!
お願いだから、恥じらいを持って!!」
もう、遅い。
……イチゴ柄だった。
「そうだそうだ!
わざわざ需要がないものを見せつけるな!!」
一方のレシャミリアは、親指で地盤をカチ割るほどの勢いで、大ブーイング。
リュドエールルに至っては、もはやその刀身を古代遺跡と一体化させて、完全スルーだ。
「あらまぁ、坊やたち~
エミレおねーさまが、見てない間に、すっかり仲良くなっちゃって!」
その姿を見たエミレは、ニョンと、滑らかにブリッジを解除すると。
雛の漕いだ水しぶきのように朗らかな笑みを浮かべて――
一歩、また一歩と。
とびっきりの爆弾を抱えたような風貌で、レシャミリアへ詰め寄っていく。
「さすが、レシャミリアさまぁが、仲間だって宣告しただけあるわねっ!!」
サムズアップを堂々と、レシャミリアの眼前に掲げる。
「は?え?
ちょ……なんつった??
ワンモアタイムプリーズ???」
そのあまりの衝撃に、レシャミリアは口を開けたまま、一旦ステイ。
(俺様、エミレには、未だこのこと言ってない、よな……?)
ショートした思考回路の中で、彼は必死に記憶の隅を掘り出しまくる。
そんなレシャミリアの呆けた姿をみて――
「あ、実演してほしかったってことね?
りょーうかいよっ、任せて任せて!!」
何かを察した空が、霧を起こして、影を波立たせた。
西日の広がりは証明道具の如く変貌し、
かつての記憶が彩を増して甦るような、神聖な雰囲気が満ちていく。
そこに、滾った雷電のような主役が――堂々と口を開いた。
「……仲間だろ。
俺様と――お前は、よ。」
……はずだった。
やや上ずった声は裏返って、小鹿のように震え、
渋さを狙った目は細めすぎて、皺の寄った三角形に。
スマートに弧を描いたはずの口は、やや引き攣って顎がしゃくれていた。
そして、トドメ。
桜が靡くような風が吹き抜け――
被っていたカツラが、よりにもよってエミレの鼻の穴へとゴールイン。
……すんっ。
数秒の沈黙の後――完全に爆散した。
「……エミレ、すっごい、上手だったけど、その、ね?
もう一回、やり直す?」
憐れむようなシルアの呟きが、凍った空気を、なんとか繋ぎ止める。
だが――「上手」という一言を知ったエミレの勢いは、もう止まらない。
そりゃもう、今にも第二ラウンドが始まりそうな予感を熟成させて――
キラッキラに、表情を煌めかせていく。
「うん!そうす――」
「いや、なんか、ごめんって!!」
――ズドンッ!
雷鳴のごとき土下座が炸裂した。
石畳にレシャミリアの顔がのめり込み、土埃が呆れを帯びて舞い上がる。
(これ以上やられたら……俺様の大事なものが、本当に削られるっ……!!)
もちろん、プライドと権威はすでに削られているが。
「ふふーん、いいよっ、許してあげる~」
苦しゅうないと、言わんばかりの堂々とした仁王立ち。
その背後には、勝者を祝福するように、西日が後光を放つ。
その瞬間……
「うぉぉ……エミレ様はなんて寛大なんだっ!!
俺様、こんな御方の仲間になれて、幸せ――」
レシャミリアの瞳は白目をひん剥いて、泉から湧き出たような涙が頬を伝う。
周囲にはラッパを吹く幻の天使が舞い踊り、完全に雰囲気に呑み込まれていた。
……が、その数秒後。
「じゃないんだよ!
なんで俺様が、こんな茶番に感動してんだっ!?」
両頬をバチンと叩き、強制的に現実へ送還。
ジト目で見下ろされていた空気を睨みつけ、咳払いひとつで気迫を取り付ける。
「お、おい、お前ら!
いい加減、身をわきまえろよ!!」
跪いていた体制を慌てて立て直すと、髪をかき上げながら、威厳を装う。
僅かに赤らめた頬には、星屑を包み込むような瑞々しさが瞬いていた。
んんっ――まぁ、つまり、バレバレの照れ隠しということだ。
「いいか?勘違いしているようだから、教えてやるけどな!!
俺様の言った『仲間』っつーのはな!」
ビシッと、人差し指を突き立てると、悪人顔を侍らせる。
「お前らが、正式にギルド長専属冒険者になること――」
「つまり、俺様の下で、働くことを認めたってわけなんだよ!!
ハ~ハハハハっ!!」
派手な笑いを詰めた仁王立ちが、空気を震わせた。
だが――その揺らめきは、幕の袖についた泡沫のように、とけていく。
軋んだ余韻に、未来を搾り注ぐ力強さを込めて。
紅い瞳が、レシャミリアを射貫く。
「へぇ……いいんだ」
軽さの奥に、貫録が透き通った呟き。
矧げた鎧を讃えるように、エミレは踏み出す。
「だって――」
「そろそろ、勘づいているでしょ?」
カツカツと、足音が轟くたびに。
世界の色抜きを、紐解くような臨場感が。
鼓動を、逸らせていく。
遺跡に燻った重なりが、西日に照らされて。
光の粒を、レシャミリアの肌へと刻み付けてくる。
エミレが、息を小さく吸うと。
やっと手を、差し伸べてくれたような気がした。
「私たちが、呪印持ちって、こと。」
何度も捲った星座を、見上げ続けるみたいに。
告げられたその言葉が、褪せかけた建物に染み込んでいった。
彫り上がった静寂ごしに、衝撃が溶かされていく。
その感触があまりにも歪なのに、心は期待を膨らませてきて――
シルアの視線を、レシャミリアへと移ろわせていた。
「……エミレ」
賛同を滾らせるように、拳を噛む。
信じたい、と願う鼓動が、シルアの喉元へ駆け抜けた。
一方で――レシャミリアは。
焼かれるような視線に、掴み止められた詞を思い出して、
「ふっ」
見開いた碧眼に、足蹴を象った笑みを結ぶ。
誤魔化しを拾い上げてくれた感覚に、心が緩んでいって。
でも、まだそのくすぐりには、慣れ切っていないから。
窄めた口に、大事な欠片だけを込めていく。
「なにを、今さら。
……お前らが呪印持ちだってことなんざ、はじめっから察してたわ。」
吐き捨てられたような言葉の奥に。
繋がったはずの鎧が、秘めていたはずの歪みを軋ませてくる。
呪印の伝説。
いつか知らざるを得なかった過去が、何を意味するのか。
彼女たちが、これから何をするのか。
分かっているはずなのに――まだ、解りきれない。
その不明瞭さが、銀河が機械を喰らうような哀愁を、碧瞳の底へ垂らしていく。
「ふーん。
なら、ちゃんとリスクは承知の上ってことね。」
急に穿ってきた現実に、レシャミリアは肩を小さく揺らす。
その震えが、漏れてしまった軋みの上に、尊大さを飾り付けた。
前を見据えると、エミレと、視線が交わる。
潮のように靡いた深紅の瞳に、何かを掴まれた気がして。
……レシャミリアが、恐れを滲ませた拳に、棘を吊るし上げようとする。
けれど。
「……じゃあ――今は深く掘り下げないでおくよ。
君自身のことは、ね。」
エミレの影が、僅かな悟りを得たと確信させてきて。
碧瞳が、ほんのわずかに揺らめく。
それでも。
『今はまだ』と任せられた空頁が、哀愁を抱きしめてくれるような感覚に――
(……こいつら、似すぎだろ。)
疼いた瞳が、少しだけ解れる。
呆れを感じる仕草に、緩んでしまった口元が、悔しいのに。
その真髄にある、なによりも変わらない証に繋がれた気がして――
頼もしく、拍動を響かせた。
(……沈黙こそが、今あいつらに捧げられる一番の手向けか。)
どこからともなく湧き出た言葉が、幽かな甘えを孕んで。
西日と共に夜空への中へ、未だ来ぬ影を立てて、蕩けていく。
金と赫の刺繍が、いつか黒い甲を積み重ねるように。
手向けの軌跡に、今をただ、見据え続ける覚悟を開いた。
「……ちなみに、だが。」
喉の奥が、やけに声を掠れさせる。
集まっていた眼差しを連れて、レシャミリアは半歩だけ踏み出す。
「呪印について、俺様が知っている限り、教えてやろうか?」
胸の緩みも、軋みも、いつか抱え込みきるために。
瞳に宿った芯を、差し伸べる。
直後。
言葉の重みが、静寂だったものをさらに締め上げていく。
強張った表情のシルアが、僅かに拳を握る。
リュドエールルの鋭い刃音が、空気へ溶ける。
次の返答で、未来が左右される。
――誰もが、そう錯覚し、喉を凍てつかせるような沈黙が支配する。
……が、その刹那。
「大丈夫!!
ひととおり、本で履修してあるからね~」
影を濃く落としたかと思えば、跳ねるような声が弾けた。
鼻歌交じりにルンルンで、緊張の糸をちょん切っていく。
「は、本って、お前まさか……」
レシャミリアの視線が鋭くなった、刹那。
吹きつけた風が、光の粒をエミレへと当てていく。
桜吹雪さながらの風景に、ふと証明が落ち――舞台は整った。
エミレは片足をドンッと踏み鳴らす。
裾を翻し、ぎらりと瞳を吊り上げると――見得を切る。
「そーだよっ!!
我こそが、禁書庫の侵入者――
天才美少女エミレさま、なりぃいいいいいい!!」
ドンッ!と足を踏み鳴らすたびに。
カンッ!と幻の拍子木が鳴り響いていく。
幻の太鼓と囃子が、「よっ、待ってました!」と言わんばかりに、奏でられると。
溢れんばかりの大喝采に包まれた幻覚を、エミレは鼻息荒く吸い漁る。
……が、現実では。
「「はぁ……」」
「キャッケ……」
エミレの名演技をフル無視したため息が、返されるだけ。
舞台セットは、いつの間にか雲散し、残酷な現実だけが、取り残される。
立ち上がった砂埃が、容赦なくエミレの足へと体当たりを繰り出した。
「……イダっ。
せめて、土だけは優しくしてぇ~」
再び、微妙な沈黙が漂う中。
深いため息が、喉奥から湧き出る。
「……おい、シルア。
お前、知ってたのかよ」
眉間を指で解きほぐしながら、唸るレシャミリア。
その表情には、何とも言えない悲痛さが、ふんだんに盛り付けられていた。
「まぁ……うん」
続くシルアも、困った表情をしたまま、リュドエールルを顔を見合わせる。
この世の辛酸をすべて吸いつくしたような、悟りをちらつかせて。
「いや、うん、じゃねぇだろ!?
こいつ、お尋ねものだぞ!?」
振り絞る力を糧に、何とか現実を口にするや否や。
レシャミリアの表情に、だんだんと青みが差していく。
……限界に、近そうだ。
しかし。
舞台に酔い損ねたエミレは――
「そうそうそう!!
そうなのよぉ、全くみんな私のこと好きすぎだよね……!!
は~、困っちゃうっ!!」
鋼のメンタルで、来るものすべてをプラスへと変換していく。
そりゃもう、豆がポップコーンへ進化する速度で、俊敏に。
負のエネルギーを一切合切跳ね飛ばしていくその姿は――
「おい、シルア……」
「わかってる……」
「ゲッゲェ……」
さらに、冷たいため息を集めていく。
もはや、3者の表情には、呆れを通り越して、どこか残念なものを鑑賞する影が浮かんでいた。
「お前ら、終わりすぎだろ……」
体液を搾り尽くしたのような声が、宙へと萎んでいく。
先ほどまで、綻んでいた瞳は、もはや枯渇した石油田と化していた。
そんなレシャミリアの様子を見たエミレは、追い討ちをかけるようにグイグイと近づく。
「で、どうどう?
やっぱり、お尋ね者は即解雇とかしちゃうの?」
笑い混じりに放たれた言葉に。
ほんの一瞬だけ、諦めを被らされた陰が、のぞいた気がして――
レシャミリアは、すかさず、エミレの顔を片手で挟む。
その手つきは、ぶっきらぼうなくせに。
どこか、遥かな夢を超えたような、確かな温もりがあった。
そして、見開かれた瞳に、足蹴を喰らわせるような鋭さを携えたまま――
「しねぇよ、ボケが。」
即答。
無自覚のうちに、かつて回された歯車をなぞっていく。
「このレシャミリア様が、仲間選びを間違えるわけないだろ。」
真っ直ぐと射貫いたまま、放たれた言葉には。
長年の間、店頭を張った駄菓子のように……
重責を伴った確信の底に、揺るぎない信念がひしめいていた。
その予想を上回るような勢いに、エミレは口を開けたまま硬直する。
しばらくの間、起きていたことを思い出すように、目をしばたたかせると。
自然と、目尻が下がっていく。
そんな状況から、すぐさま脱出したくなって。
華やかなドレスを着たまま、カボチャを被るように。
口を窄めて、あしらう。
「……あらま、意外」
けれど。
喉から漏れた声色は、あまりにも柔らかくて――
胸に小さく灯った熱で、星屑の羽根を継いでいく。
「その代わり、だ。」
張り上げた声を使って、場の空気をあっさりと断ち切ると。
かつて、ポキポキと犠牲になったプライドたちを悼むように。
ニヤリと、純白な笑みを貼り付けた。
もちろん、とんでもない悪寒を3人の背に侍らせながら。
「これから、お前らには、しぬっっっほど、俺様のもとで働いてもらうからな?
お尋ね者と、ガキども。」
勝者の風格を漂わせながら、嬲るように親指を下へと向ける。
まるで、この世界での生殺与奪権は、すべて俺様が握っていると高らかに宣言するように。
対する3人は――
「……」
脳の回路が、プチンと音を立てて、ショートしていた。
これからの未来へ思いを馳せるたびに、思考回路が拒否反応を示し、魂だけが空へと羽ばたく支度を始めている。
その隙を、レシャミリアは逃さなかった。
「よいしょと」
いつの間にか、彼の手には、ロープが。
まるで、掌から生えたてホヤホヤと宣うみたいに、瑞々しく輝きを放つ。
……ん?
何食わぬ顔で、3人を押しやり――
芋づる式にまとめ上げると、縄が艶やかに踊り出した。
「はっ!?
……え、ちょっと待って!?
れしゃみりあさん?何で縛っているの??」
「……おい、クソギルド長!!
縛り付けんな!!
返せ!!人権を返せえええ!!」
「……キャピルルぃ!?!?!?
ギャゲリリリリリッリ!!」
グルリ、グルリと、容赦なく3人は加工されていく。
滑らかさの奥に、強かな逞しさの滾る、歴戦の猛者の手つきで。
「はい、連行完了っと。」
鼻歌交じりに呟くと、妙にご機嫌なテンションでガッツポーズ。
「というわけで、お前ら。
早速帰るぞ!!
――仕事地獄へと、な。」
死の宣告と同時に、地獄へのハンドバスツアーが始まる。
がっちりと縛り上げられた3人は――
「……ああ、澄んだ空気越しにブラック企業の香ばしい香りが鼻を伝ってくる……
びじょぉお、びじょばらいで~」
「キャピゲェ……。
あ、げげ、げげ」
「あ、冷たくて、きもちい……じゃなくて!!
いや汚い汚い汚いっ!!
ちょ……リュドエール!?僕の服についたんだけど!?
替えの服なんてないんだぞ!?
このままじゃ上半身裸男だぁああ!!
お願いだから泡吐かないでぇぇ!?」
魂を手放して、己が欲だけを唱え続ける者。
まともさが仇となって、ひとりテンパリまくっている者。
そして――ただ静かに。
誰にも望まれないまま、虹の架け橋を生成する者、と。
完全に、別ベクトルで見事に破壊されていた。
だが。
そんなあの世の地獄を詰め込んだような、カオスを背景に。
――レシャミリアの瞳だけは、鋭く冴えていた。
(エミレが、教会に追われている、か。
だとすると、今頃、聖歌隊がコロシアムへ行っているかもな。
面倒なことになりそうだ、が。
それ以上に……この胸騒ぎ、なにか嫌な予感がするな。)
直後。
背後に伸びていた陽炎が、幽かに唸る。
たった一人の彼女へと向けた、詩を添えて。
西日は、すっかりと沈んで、夜が帳をひけらかしていく。
どこかで途切れた意識を、傲慢に嘆きながら、残忍に。
そして――
世界は、だんだんと。
琥珀の矛盾へと、幕を張り替えつつあった。
ご覧いただき、読んでくださりありがとうございます。
どうも、夏なのに霜焼けができたルアンでっす( ̄^ ̄)ゞ
いやぁ皆様、ドウア国前編これにて完結だよおお!!
いえええええい!!びじょびじょびじょびじょ!!
もうね、吾輩の感想はひとつよ
ギャグって最高だねദ്ദി ˉ͈̀꒳ˉ͈́ ) NICE!
やーまじでさ、前半もう何度目かわからない、美的エミレとシルアの描写ねwww
あれ綴りすぎて脳が死にかけてたから、
死んでもギャグははっちゃけてやるっておもってたらさwww
結果、8000文字以上になっちった⭐︎
ま、元々ショーンから届いてたあの子たちの会話録をほぼ原寸で載せたのヨ
おほほほほほ...ってあいつらそう思うと体力すげぇよな((唐突のメタw
まぁ、最後はちゃんと縄で縛り付けられて大人しくなってたから許してあげてね(*ノ>ᴗ<)テヘッ
そしてね!
今回は、二話出すわけですけど!!
次話にあとがきないよ〜!!
だからこそ言っときマス
ドウア国後編は、なげぇし複雑ぅううう
まぁ、かと言っても
むずいなって思う方はあんしんせぇい!!
ルアンが、ようやくちゃんとパソコンやらノートやらにまとめる日がきたってだけだからな!!by いつもは脳内とメモだけの人www
まそのためのお時間+ね!
宿題が...はい
綴りすぎて、あんまり終わってないのでw
多分ね、8月中にラジオは出せると思ふけども
次の投稿は、9月の8日の前後あたりになるかな!!
(それ以降は週一投稿になりそう、すまぬな!!)
わからん、綴れたら早く出すわ(((* ॑꒳ ॑* ≡ * ॑꒳ ॑* )))ワクワク
私の大好きな話だからね次はニヤ( ꒪ͧ꒳꒪ͧ )ニヤ
びじょびじょびじょ
あとは!!
多分明日あたりに、あとがき出すわよ〜((明後日になっちゃうよすまんううう!!
って言っても、半分遊びなんだけどね!!www
まぁそれはおいおいのお楽しみに( ≖ᴗ≖)ニヤッ
というわけで!!日付回りそうなので!!
ルアン寝ないとおおお
の前に。
本当に、君たち、ドウア国前編
色々ね、トラブルやらエグい展開やら、初期の酷さやらありましたが!
ここまでね、こいつらを最高の形で、世に出せたのは、紛れもない君たちのおかげです。
本当に本当にありがとう。
たまに弱っちゃう時もあったりさ、投稿遅れたりしちゃう時も多かったけど、それでもついてきてくれる君たちの存在に本当に救われたよ(*´꒳`*)
ま、これからも色々とご迷惑はかけまくると思いますが((
これからも、一緒にバカやって、世界を征服してこーな!!
てなわけで、いい感じに締められそうだし...
じゃないやばい忘れてた!!www
前編終わったからさ、君たちの好きな話とかを聞こうと思ってたのよGoogleフォームやら感想欄やらマショマロやらで!!あとPVとかでね!!
それで、結果をまとめたかったのよぉ
ま簡単にいうと人気投票的なやつね〜!!1ヶ月くらい期間設けようと思ってたのよねw
げー抜けてた((またおいおいというか明日整えておきますわい
ま、てなわけで!!
今日も読んでくれてありがとう(((o(*゜▽゜*)o)))
よければ、評価ブクマ感想リアクションしてくれると嬉しいぞよーん
ま、次の投稿は9月あたり!!
夏休み終盤の方も、お盆明けの方も無理せず休みつつだぞおお(,,•ω•,,)و⚑⁎∗
じゃ、またねっ((ヾ( ˙꒳˙ )フリフリ
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