第三十九話 シルア、神を鳴らす
SIDEシルア
「いいから、やるぞ。
……シルア」
「当たり前だ。
……レシャミリア」
声が追い付くように、視線を合わせる。
沈黙さえも抱き留めるように、恭しく。
そうして、雲散した気配をそっと摘む。
もやついた殺気が、指先をかすめて――
ひとつ、呼気を整えさせる。
……いるな。
「というわけで。
……後ろ、任せた。」
幼さをくすぐらせながら、軽やかに。
片腕を小さく振って、跳ねるように前へ。
「は?お前、俺様に指示するなって――」
レシャミリアが、眉をひそめた刹那。
その足元に、影が這い寄り、空気を軋ませる。
――ズバァッ!!
背筋を突き抜けるような鋭い気配。
振り返ると、白布が一斉に視界を染める。
群れが雪崩のように押し迫り、レシャミリアを囲う。
だが。
その中心で、拳が閃光を落とす。
鋭い衝撃と、目に負えない速さが交錯させて、素早く。
白装束が風圧ごと弾け飛して、宣ってくる。
「ちょ、おま、シルア!?
さすがに……これは聞いてねぇって!!」
霧が震える中、レシャミリアが、足音を轟かせてやってくる。
その声色には、苛立ちの奥に親しみが滲んでいて――
「仲間なんだろ?」
意地悪な笑みを返す。
砂浜を指で小突くような、からかいを込めて。
すると、レシャミリアが小さく肩を揺らし、
悪態を霞ませながら、息を吐いた。
「……ほんっと、俺様よりタチ悪いだろ」
呆れを吐き捨てた勢いで、鼻を鳴らす。
けれど、その声には貶すような棘がなくて――
むずがゆさを押し隠すように、毛先をかき乱した。
「タチ悪いって、自覚あったんだ……意外。」
「意外って、なんだ!!」
レシャミリアが一歩踏み出してきて、ぐっと迫ってくる。
その反応が、あまりにも動揺に溢れていて――
声をあげる前に、表情が崩れてしまう。
「……っぷ。
ふっ、ははははっ!!」
耐え切れずに、吹き出す。
雪解け水が流れ出すような、暖かい予感をうるわして。
喉の奥がくすぐったくて、肩が勝手に揺れる。
笑いが止めようにも止まらない。
その感覚があまりにも懐かしくて、
無意識に、実感を胸を広げていく。
――そういえば、いつぶりだったけ?
こんなに、心の底から笑ったのって。
笑いの余韻を見越すように、
レシャミリアが、顔を赤くして、また一歩踏み込んでくる。
雪雲を導くように、現実を降らしながら。
「おい!!笑うな、ガキ。
笑ってる暇があったら、戦いに集中しろよ。」
「はいはい、ギルド長様」
軽口を含ませながらも、視線を研ぎ澄ますと。
再び、白装束が息を吹き返したかのように動き出す。
その動きが、あまりにも曖昧で――
四方八方から、意識を絡め取ってくる。
剣を軽く振って、深く息を吸う。
「レシャミリア!!」
「ああ」
叫ぶと同時に、一体の懐へ踏み込んで、隙間を裂くと。
すぐさま、レシャミリアが拳を走らせる。
――ズバッッ!!
嵐のような衝撃が、空気を分かつ。
でも、すべてが、まだ――足りない。
白布の群れは何度倒れても、ぬらりと這い出してくる。
正義を褪せ落とした痕のように――
気味の悪さが、皮膚を這って、ぞわりと舐めまわしていく。
どうやったら、こいつらを倒せるんだ――?
その思考を振り払うように、ひとつ笑いが落ちる。
枠をなぞるような、確信を携えて。
「おい、シルア。
ひとつ……試したいことがある。」
その目には、明らかな生気が灯っていて。
心を蠢いてた不気味さを、すこし和らげる。
「俺様が才腕を使う。
お前は……テキトーに補佐しろ。」
「テキトーにって……まぁ、わかった。」
迫力の割には、あまりにも乱雑な指示なのに。
その曖昧さに、不思議と意識が咬みあっていく。
その事実に、思わず瞬きを繰り返す。
結び目の繋目を眺めるように、驚きをさすりながら。
その感覚を流し込むように――
「リュドエールル、行けそう?」
そっと、呼びかける。
霧を朽ちさせるような、好奇心を嗅ぐわせて。
「キャピルリッ~!!」
待っていましたと言わんばかりの声色。
そこには、背中を押してくれるような頼もしさがあって。
「じゃあ――」
「やるぞ、レシャミリア。」
「かかってこい、シルア」
2人の間を舫うみたいに、光が揺らめいて――
鼓動が、言葉以上のものを鳴らしていく。
張り詰めている空気の中で……
そっと、息を吐く。
そうして。
意識を具現化させるように、冷気を滾らせて――
「……紅雪竜牙!」
太刀を、鋭利に突き立てる。
地面を裂いて、氷柱が牙を剥ぐように生えると。
速度を帯びたまま、宙を翔け出して――
引力に導かれる流星のように、軌道を描いていく。
向かう先は、レシャミリア。
その体心を、氷柱が貫かんとした刹那……
世界が一拍、脈を叩く。
――ストン。
咲きかけた桜に、足蹴が垂らす。
雷鳴を轟かせるような、静けさを潜ませて。
次の瞬間。
雷鳴が咆哮をあげる。
「「霹靂の竜よ、咲き誇れ――桜蹴霹星!!」」
蹴りが氷竜を砕き、雷を解き放つ。
雷神を纏うかのように、俊敏さを放ちながら、荘厳に。
朧げになった桜に、稲妻が絡まり合うと――
封じ込められていた速度を熾す。
星屑の残火を蕩けさせるような、麗しさを紡いで。
空間を……穿つ。
――ドガアアアアッ!!
流星が、壁を貫いた直後、
理を喰らい尽くすような、虚空を囁きながら。
霧に『亀裂』が生じる。
割れ目からは、現実と夢の境界が浮き彫りになっていて。
世界が、飛び出た異物を継ぎ合わせているみたいだった。
「……空間が、割れた!?」
裂け目からは、どこか懐かしさが仄めかされていて。
糸越しに、向日葵を嗅ぐわせるような繊細さを靡かせたまま。
淡き夢の面影が、身体中の力をほぐしていく。
しかし。
安堵を打ち消すかのように。
みっつ、よっつ、いつつ――と。
みるみるうちに、白い影が溢れ出てくる。
綻びを埋め合わせるかのような、残酷さを振り回して。
切れた息が、だんだんと熱を籠らせて、
井戸へと祈りを沈めるような、虚ろさが胸を押し潰していく。
このままじゃ、空間が割れたってキリが……ない。
だが、その焦燥を冷ますように――
「おい、シルア。」
喧騒の中、ふと視線が交錯する。
手繰り寄せるかのように、磁気を迸らせて。
その妙な圧が心地よくて、汗が引いていく。
続く言葉に、疾風を纏わすように、滑らかに。
「残りは、俺様が潰すから――」
「早く、行ってこい。」
レシャミリアが、一歩前へと出る。
道を切り拓くような、逞しさを張って。
踏みしめた大地が、白装束たちを牽制する。
「――エミレを掬えるのは。
お前しかいねぇんだよ、シルア。」
……僕しか、いない。
その詞が、誓いを澄み渡らせて――
心に、確かな鍵を根ざしていく。
「ちゃんと、落とし前をつけてこい。」
胸が弾けて、希望が舞い降りてくる。
名付けた星屑が、そっと掌を熱くしてきて。
「……ありがとな、レシャミリア」
言葉に感謝を零す瞬間、胸が疼く。
本当は、ずっと言うべきだったのに――言えなかった言葉。
強情さが隠して、皮肉な形でしか出せなかった言葉。
やっと言えたと思えると、心が弾けて。
熔けた鎧が星屑を創るような、純粋さを煌めいていく。
「……な!?」
蒼い目が、驚きに揺れる。
まるで、誰にも言われてこなかったかのように。
想定外の温度に、呼吸を忘れたような瞬きを繰り返す。
でも、それと同時に。
じんわりと、安らぎが輝き始めて、
塞がれていた傷口が、縫い撫でられていく。
「……こちらこそ、だよ。」
照れくささを、不器用に包んで。
いつかの覚悟を満たすように、そっと言葉を返してくる。
その声の奥には、乾きが潤ったあとの爽やかさが流れていて。
自分でも気づかないうちに、身体中の熱が共鳴していく。
その温度が、初めて手にした、素の温もりのようで――
空白が、互いの心を満たしていく。
レシャミリアが、ほんの一瞬だけ、拳を握り締める。
まるで、繋がれた暖かさを、もう一度掴んで確かめるように。
その仕草が、僕の胸に、掬うための彩を結んでいった。
――この想いを、絶やさないように。
未来まで、繋げていくためにも。
前を見据えると、まだ亀裂が悲鳴を上げている。
でも、もう迷いはない。
あの誓いが導くように、胸が弾ける。
微睡を起こす鍵は――拳の奥でちいさく、芽吹いていた。
ご覧いただき、読んでくださりありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
どうもぉルアンですっ!!
えーねー毎度のことだけどさ!!
シルアとレシャミリアの!!!
やはり新技ベリーグレイトだと思わんか!?!?
桜に雷を垂らすと星ができるんだってばよ✧ド(*,,ÒㅅÓ,,)ャ✧
(ちなみに一応言っとくと
レシャミリアの才腕は、身体に電気を纏わすことができるって感じなやつね!!)
いやぁガチでさ、このシルアの氷とレシャミリアの電気が合わさったこのもうえもさえぐみの技٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
私めちゃ好きなのよね、この技にならお星様にされてもいいと思ふwww((
そーだあとね、メイビーだけど
あと2話かなぁ...ドウア国前編!!
ちなみにルアンさん次話も39話でいくつもりなんでね
あとがきはそんとき(多分8/5?)にださせてくれーい!!
ま、多分そん時は、技の語りとかで大半が埋まりそうだけどなwww
そして!!
そうあてくし、明日はね!!
タピオカを片手に!!w
日本庭園をね観に行くので!!
明日元気残ってたら、あとがき更新するかな〜
ぐったりしたら、明後日出すわ((働けw
そうか!?
けふは金曜だから週末なのね!?
しかもお盆前の最後に休みか!?
みんな無理せずに休むんだぞおお!!((深夜テンション手前ですまぬなw
てなわけで!!
いつも読んでくれてありがとう(((* ॑꒳ ॑* ≡ * ॑꒳ ॑* )))テンキュ
じゃまた次の話で!!
またね((ヾ(⁎•ᴗ‹。)フリフリ♪




