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第三十六話 シルア、贖罪を捧げる

今日は長めです!8000文字です!

投稿遅すぎてごめんよっ

SIDE シルア


『エミレを救った。』


その言葉が、またひとつ。

心に――黒い染みを垂らす。


正義じみた明るさで。

粗を残して、乱暴に。

けれども、鉄槌のような重圧を帯びて。


何度も、何度も。

何日も、何日も。


自分に言い聞かせる。

耳の奥に、こすりつけるように鳴らし続ける。


けれど――その響きは、漏れた絵の具が空気に触れて乾くように。

ざらりと硬くなって、心の奥に突き刺さった。


ゆっくりと目線を上げる。


その先には、力なく横たわる少女の姿が。

沈む先は――無機質な白のベッド。


その白さが、静かに、けれども確実に――

棺のように、彼女を覆い隠していく。


はみ出すように落ちた、不釣り合いなふたつ結びの髪も。

意味を喪った、ただの紐のように、重く垂れ下がる。


空気が、微かに揺らめく。

焦げた碧い薫りと、いつかの抱擁を運びながら。


鼻腔が、空気に触れた刹那。

匂いを纏った記憶が、頭を掠って、

――風に靡いて、消えていった。


胸が、すこしだけ滲んで。

こぼれるように、言葉が浮かぶ。


……おかえりって、言えた。

あの時、あの場所で。


その言葉が、ふっと浮かんで、

彼女の耳元にまで届いた気がした。


まるで、返事の代わりに。

まつげが――ふるりと揺れた気がした。


それだけで、十分だと思っていた。

きっと戻ってきてくれるって。

ほんの少しだけ、信じられた。


……はずなのに。


動かない。

喋らない。


――そして、あの深紅の瞳が、拓かない。


僕を、見てくれない。


返ってくるのは、呼吸の音だけ。

無理やり管に空気を押し詰めたような機械的な音。


彼女の肺が、新たな空気を吸い込むと。

その反動で、何かが軋んで、張り裂けていくようだった。


そんな事実が、少しずつ。

僕の心を、芯から蝕む。


蜂蜜のように、ねっとりと。

甘さの奥に、秘すべき毒を隠して。

――死をもって、赤子を拒む、その残忍さで。


なにより。


息づくその姿に、ほんの少しだけ、安堵を覚えていたのに。

それすらも、次第に――痛みに変わっていった。


小さな、小さな体に巻き付く無数の包帯。

息の根を、静かに、でも確かに――塞ぐように。


包帯に押しつぶされて、輪郭が歪んでいく。

骨ごと吸われていくように、手も、足も。

ひと巻きごとに、細く、細く、削れていくようだった。


白かったはずの布は、もう色を剝ぎ落とされていた。

滲んだ赤が、乾いて――鈍く沈む。


隙間からのぞく赤黒い痣は、皮膚に張り付き、悲鳴のように沈黙していた。


紫から黒へ、黒から赤へ――

潰れた内側から、壊れた熱が滲み出て。

……皮膚の下で、まだ『生』を主張していた。


腕は、曲がるはずのない方向へ。

芯を失ったまま、不自然に折れていた。


この腕が、あの狂気じみた笑い声を奏でていたなんて。

信じられないほどに、沈んでいた。


そして――胸には、八芒星。

焼き付けられたように、くっきりと。

火傷のようでも、痣のようでもない。

呪いの証そのものだった。


皮膚が引き攣れ、内側から吐き出した抵抗が、その形を与えていた。


そんな傷を抱いて、ただ静かに横たわる彼女は――

十字架に縫い付けられた聖像画のようで。


美しさと残酷さを、ただ静かに纏って。

……本当に救ったのか。


あの瞬間、祈るように手を伸ばした『僕』は果たして。

――誰を、救ったのか。


胸を割くように、問いかけてくる。


でも、その問いに答えるより前に。


声を、かけたくて。

届いてるって、思い込みたくて。


唇が、ぎこちなく動く。

声にならない熱が喉奥で燻って、言葉になれないまま、ただ疼いた。


言いたいことなんて、山ほどあるのに。

何ひとつ、伝えられない。


逃げ出したくて、でも、離れたくなくて。

見て痛くて、でも、目を逸らしたくて。


ぐしゃぐしゃに絡まった気持ちを、

ひとつだけ――どうにかして形にしようと、僕は、声を振りしぼる。


「ねぇ、エミレ……」


けれど。


――コン、コン。


扉をたたく音が、僕の世界に波紋を落とす。

かつてあった日常を、遠くから控えめに主張するように。


扉が、静かに軋んだ。

外から漏れる光が、沈黙に滑り込む。


朝でも夜でもない、時を纏わない白が、床に一筋伸びていた。

ゆっくりと、空間を打ち砕くように、けれども融合するように。


薬品の匂いが、静かに空気を塗り替える。

新しく入ってきた香りを、冷たく、痛く、かき消すように。


けれど――


そんな空間さえも凍てつかせるように、靴音がツカツカと揺らいだ。

星屑が零れ落ちるような神秘さを帯びながらも、強く、芯を保ったまま。


そのまま、声の主は僕のすぐ傍らまで来て、変わらぬ調子で、現実を告げるように言った。


「失礼します。食事を持ってきました。」


平坦で事務的な声でさえも、

現実と夢の境界を惑わすような声に思える。


振り返らなくてもわかった。

この声高。この立ち振る舞い。


――ノエルさんだ。


彼女は僕の視線などつゆほど気にせず、静かにトレーを机へと置く。

机に並べられたその白い皿が、空気の匂いを少しだけ変える。


湯気を立てて、ほのかに香る、シチューの匂い。


けれど、そんな湯気も次第に部屋へと溶けていく。

運ばれてきたという事実を打ち消すように、薬品の匂いに染まる。


ノエルの視線が、テーブルの隅へと滑る。


昨日のまま残された皿――

冷え切ったパンと、乾いたソースが。

触れられることなく、ただそこにいた事実を嘆くように佇む。


隣に転がったスプーンが、その痛さをさらに深める。

金属が持つ味気のない冷たさを、振り回すように。


そんな物に呼応するように、沈黙がぽつりと破られる。


「……昨日のも、そのままですね。」


誰かを責めるわけでもなく、ただ事実を確認するような声。

だが、その平坦さが、微量な羽化を促す。


「このままじゃ、身体が持ちませんよ。」


声の端が、ほんの少しだけ揺れる。

奥に滲んだものを、はためかせるような羽音を伴って。


それは、怒りでも、苛立ちでもない。


ただ――どうしようもない虚しさや、

割り切れない後悔のようなものが少しだけ溶け込んでいた。


いつも通りの公平で、機械のような的確なその動きに、間が吸い込まれる。

その間が、妙に居心地が悪くて、息が浅くなる。


そんな気まずさを取り払いたくて。

とりあえず、名前を口にした。


「ノエルさん。その……」


声がひどく乾く。

紙を詰め込まれたように、水分を吸いつくして。


話題を、探す。

でも、見つからなくて。


思いついた疑問で、咄嗟に取り繕う。


「エミレの暴走を見てた人は――」


言ってから、気づく。


……違う。これはただの疑問じゃない。


心の泉から、思わず溢れた叫びだった。

本来は、僕の口から出すべきじゃなかった。


彼女の視線が、一瞬だけこちらに向いた気がした。

僅かに気遣いを漂わせて、静かに佇む。


その姿に、胸の奥が軋む。


本当なら、ノエルさんに謝るべきなのに。


それでも。

そのことをすべて押しのけてまで、零れたのは――彼女の事だけ。


エミレの事しか考えられなかった。


言葉が、不自然に崩れ落ちる。

その歪さが、息苦しい空気ごと、僕の偏った心を縛り付けていく。


けれど……


「幸いながら、いません。」


ノエルは、すぐに応える。


相変わらず平坦な声が、僕の偏った心を静かに整える。

まるで、かつて砕いた世界の膜を拾い集めてくれるように。


「私が早めに避難を促していましたから。

 結果的には――運がよかったですね。」


現実をありのままに映した、その言葉が。

何よりも重くて――優しかった。


「そっか、なら……」


――よかった。


彼女は。

エミレは……裁かれずに済んだ。


あのときのようには、ならずに。


……エピネス村の、あの出来事。


村を救うために。

エミレは、自ら『悪役』を演じた。


怯えられても、罵られても。

石を投げられても、血を流しても。

それでも彼女は――笑っていた。


いつもの通りの調子で。

誰にも、気づかれないように。


……守り抜いた。


でも、僕は見ていたから。

あの笑顔の奥にあったものを。


隠しつくして、諦めた傷を。

とっくに壊れかけていた、その影を。


だからこそ。

その事実が、僕の心を――ほんの少しだけ、緩ませた。


裁かれなかった。追われなかった。


だから、『今回は違った』。

そう、思いたかった。


なのに。


――彼女の身体には。


あのときと、同じように。

いや、きっと、それ以上に。


包帯の隙間から、滲んだ赤を。

皮膚を引き攣らせて、語る痣を。


見ようとしても、見られなかった。


目の前にあるはずなのに。

僕は、まだ……視線を向けられない。


それでも。

救うために。


僕は――。


「君は、エミレを、眠らせた、の?」


背後から近づく気配。


問いかけの余韻に、微かに空気が波打った。

純粋な確認を含めるように、じんわりと。


「……ねぇ、」


誰にも似ていない声が、僕の背を引く。

感情の上を浮遊するように、気だるげに。

けれども、僕よりも彼女を見据えて。


「でもね。エミレの、気配。

 今は……すごく、深くて。

 微睡の、その、もっと、奥の方で。」


ふわり、と。

ミカレが足元を確かめるように近づく。


「――誰も、触れられない、扉の、向こう側に。

 落ちてってる……気が、する」


悪寒を含んだ、柔らかい声。


言葉が現実を突出させて、深層へと誘う。

蜘蛛の糸がはち切れて、跳ねるような闇を纏って。


気付けば、もう。

ミカレの目は、エミレを観ていなかった。


「ミカレ、そんなこと言っちゃダメでごわす」


割り込むようなぽわタンの声。


けれど。

その声高には、張りがなくて。


またもや、沈黙が爛れ落ちる。

空気を撓ませて、事実を練りこむように。


カチャ。


火打石のように、乾いた音。

スプーンがお盆に触れて、こぼれた響き。


あまりに日常すぎるその音が――

残酷に、僕の耳を裂いた。


記憶の破片が軋むように、頭を掠めていく。


……どうして。


なんで、エミレは、動けないのに。


食器が揺れて、椅子が軋んで。

なのに、彼女の声だけが――どこにも、いない。


どうして、『音』だけは、変わらずに鳴るんだよ。


……生きてるみたいに。

僕だけを、取り残すみたいに。


喉の奥が擦れ合う。

涙なんかじゃない。


叫ぶには、痛すぎる。

もっと別の――声にもならない熱。


「……もう、嫌だ。」


僕の声が、空気を破った。

世界の軸をぐらつかせるように、震えを持って。


その瞬間だった。


――バンッ!!


まるで呼応するように、扉が叩きつけられる音。

乾いた衝撃音が、静寂を薙ぎ払う。


黒衣の影が、そこに立っていた。


強く、鋭く、容赦なく。

威厳という名の暴風を纏って。


「シルア、いい加減にしろ。」


鉄槌のような音吐が、心の底を撃ち抜く。

苛立ちも、焦燥も、責任も――

濁った激情をすべて編み込んだ速度に乗せて。


余韻が、微かに湿った火薬のように嗅ぐわう。

銃創を踏み抉って、焼き尽くすように。


「……いつまで、そこで座り込んでるんだ。」


「もう四日だぞ。」


――ガツ、ガツ、ガツ。


硬質な靴音が、無造作に響く。


遠慮も配慮も、置き去りにしたまま――

踏み鳴らすたびに、僕の中の時間が軋んだ。


感情を刻み付けるように、鈍く深く、空間を揺らす。

現実の音を被った、夢の残響みたいに。


その重厚感が、妙に心を掻き鳴らす。


「少しは寝ろ。食え。

 あと、風呂も。……臭いし」


――やめてよ。


心の奥に、声が滲む。


おかしくなりそうだった。


時計が止まったようなこの部屋で。

染みついたまま、動かない痛みを。


どうして……どうして、突き飛ばすように言うの?


浮かび上がった叫びが、導火線に火をつける。


そして――


「全部お前のせいだろ……」


油が、線に。

――垂れ落ちる。


「……は?」


レシャミリアの声が落ちる。

呆れとも、戸惑いともつかない低音。


けれどその裏に――熱が滾る。

胸の奥を鈍く揺らすような、冷ややかな怒気。


肌を刺すような視線が、僕へと定められる。

あらゆるものを真っ二つにするような慧敏さを携えて。

僕の心の解れを、つかみ取るように。


そのあまりの眼光に、思わず喉が引っ込む。

でも、もうこの感情を抑えきれなかった。


叫ばずにはいられなかった。


「お前のせいだって、言ってるんだよ!!」


怯んだ反動さえも使って、投げやりに。

自分の感情をかき混ぜて、渦をつくるように。


「だって、エミレは言ってたんだ……『行きたくない』って!」


「なのに、僕たちは。

 ――エミレは戦わされたんだ。」


大きく息を吸う。

新たな旋風を、心に巻き込むように。


「……お前が突き飛ばしたから!!」


想いでも、罪も、祈りも、全部。

――竜巻に乗せて、レシャミリアへと叩きつける。


感情が湧き上がる。

油のように、滑らかに、吐き気を催して。


さらに勢いづく、黒い奔流。

もう、僕にはどうすることもできなかった。


「きっと、エミレは……わかってたんだ。」


『いきたくない』って言葉を零した時の、あの横顔。

なにかを堪えるように、小さく握りしめていた拳。

唇をきつく結んで、それでも冗談だって笑ったあの顔。


――忘れられるはずなんて、なかった。


支えて、一緒に進もうって。

思っていたのに……。


なのに。


僕は。


「あのときから、こうなるって。」


思考の輪郭がぼやけていく。

次第に、確信が滲む。

だからこそ――言葉で噛みちぎる。


あの小さな背中の代わりに、叫びかったから。

理不尽だなんて言葉で、終わらせたくなかったから。


「それに。」


「専属冒険者にしたいだけなら、勝手に任命すればよかったじゃないか!!」


「あんな……くだらない大会なんて、開く意味なかっただろ!!」


ただ叫ぶ。

ただ言葉をぶちまける。


中身のない、虚像のように。

表面だけを豪華に彩って。


――紛らわすという単語ですら、誤魔化して。

無なんて脱ぎ捨てて、白く塗りたくった。


けれども、燻った虚空同士が――電撃を佩びて。

呼び寄せるように、縄を引きずり出して。


レシャミリアが……興す。


「ふざけるな!」


落雷のごとく、声が走る。

避雷針を手折るように――火花を熾しながら。


空気が弾ける。

視線が衝突し、空間ごと軋む。


「じゃあ、お前はあの時言えたのかよ!?」


「行くのをやめようって、言えたのかよ!?」


一拍、間が空く。

鋭い間が、声帯を啄み――張り付ける。


「……どうせ無理だろ。」


嘲笑とともに、彼は首を傾げる。


十字架を舐めまわす、飴玉みたいに。

嘲りと苦みを、転がしたまま。


「どうせ、シルア。お前のことだ。」


十字架に釘が打たれたように、呼吸が止まる。


「エミレが無理してるの、気づけてなかっただろ。」


――知ってた。


いきたくないって、言われたことだけじゃない。


薫鎧虚残(ザンファルネア)の操作だって、

あの複雑な連携に、どれだけの神経を使っていたか。


創無花(クレア・ニイロ)をあそこまで制御するなんて、

どれほどの重圧と静寂の中で、それを維持していたのか――


考えなかった。

いや、考えないようにした。


わかっていたのに。

見えていたのに。


笑ってごまかしてる姿に、気づいていたのに。


自分の中に生まれる違和感のすべてから、顔をそむけた。

見てしまったら、もう引き返せなくなる気がして。


そんな僕の気づきを、反芻するように、彼の声が響く。


「いや――気づこうとしてなかった。」


息が漏れる。

異様な速度で、拒否反応を示すように。


避けてきた核心が、心に棘を刺す。


――傷じゃない。


これは、罰だ。

自分自身で選んだ『逃げ』だったんだ。


自分で自分にさしていた、刃の存在を知らされる。

塗り固めた白さが、穢されていく。

本音という名の卑劣さに。


「信じてるって言葉を盾にして、目を逸らしていただけだ。」


視界が、歪み裂けた。


信じてる、なんて。

あれは……僕が、そうしていたかっただけなんだ。


支えるって、一緒に歩むって。

守るって言っておいて。


都合のいい、言い訳にすがっていたんだ。

手を引く覚悟なんてないことを、認めたくなかったから。


「せいぜい、そこで、ずっと座り込んでろ。」


瞬間。

ぷつん、と。

何かが――嘘が、途切れる。


もう、限界だった。

内臓を突き破るように、感情が爆ぜた。


ずっとわかっていたのに。


言えなかったのも。

止められなかったのも。


全部怖かったから。


怒ってるふりなんかじゃなかった。

それすらも、都合のいい言い訳だった。

本当は――叫ぶしかなかったんだ。


だから。


地面を蹴っていた。

思考よりも、心よりも俊敏に。


腕が、熱を帯びる。

肩が、怒りに裂ける。


そして、拳が――レシャミリアを選んだ。


「……黙れ!!」


張り詰めた空気を激流と化す、肉の衝突音。


鈍い音が、耳の奥に残る。

痛みが跳ね返る。

お相子だと、利口に告げるように。


レシャミリアが、後ろに軽く仰け反る。


「お前、やったな。」


口角を上げて滲む、意地の悪い声。

押し流すような底力を突き出して。


「俺様は、エミレのように優しくないからな。」


拳が、逆流する。


頬に、風を切る音が走る。

視界が弾けて、バランスが崩れる。


でも――すぐに。

僕も、腕を突き上げる。


顔なんて狙っていない。

ただ、ぶつけたかった。

心の奥でこびり付いた、情けなさと、怖さと、後悔を。


目の前の彼に。


――いや。

自分自身に。


レシャミリアの拳が肩に当たる。

僕の拳が、彼の腹に沈む。


息が漏れる。

視線が絡む。


殴るたびに、情けなさが暴かれる気がした。

殴られるたびに、何かを許される気がした。


訳が分からなかった。

それでも――止まらなかった。


「キャッケリ!?

 ケケッピピピ!!」


リュドエールルの甲高い叫びが、遠くで弾ける。

ぴょんぴょんと跳ねながら、周囲を走り回って。


「レシャミリア様!!シルア!!ケンカは、だめ!!」


ミカレの声が耳に流れる。

その小さな身体で、間に割って入ろうとするが

――足がもつれて、転がった。


「そうでごわす、ほらおいしい物でも食べて――」


ぽわタンが、焼き鳥の串を揺らす。

目を白黒させながら、真顔で。


誰も、間には入れない。


――入ってこれなかった。


止めようと『するだけ』で、止めに『来ない』。


わかってる。


だって、これが僕たちの贖罪(ケンカ)だから。


「……喧嘩でもさせとけばいいと思いますよ。今は。」


ノエルの声が、溶け込んでくる。

窓越しのように、くぐもらせながら。


「シルアさん、落ち込んでますし。」


「それに――」


「ここまで感情を露わにするクソギルド長なんて、めったに見れませんから。」


「……こういう時、人間って『本音』が出ますよね。」


「なぜなのか……本当に興味深い。」


淡々と、淡々と。


殴り合いの奥で、ノエルの言葉が記録されていく。

氷の上に、足跡を付けるように、冷気さえも流して。


「いっつもいっつも!!」


拳を掲げながら、叫ぶ。


「高みの見物ばっかり!!」


「お前だって意気地なしじゃねぇか!!」


レシャミリアが、腹をめがけて突いてくる。


「何かあったらすぐ怖がって、動けなくなって!!」


「ガキのくせに、いっちょまえに『わかったふり』してるんじゃねぇよ!!」


「八つ当たりしやがってよぉ!!」


何度も殴った。

何度も殴られた。


でも、これはただの暴力なんかじゃない。


――言葉じゃ届かなかったぶんの、心の衝突だ。


叫びも、怒りも、後悔も。

全部、本音だ。


熱と痛みで、思考の輪郭がぐちゃぐちゃになっていく。


なのに、心はやけに静かで。

思い浮かぶのは――エミレの事ばかり。


……あの時の顔。

震えて、それでも笑顔で。

だから、守りたいって思った。


でも、それだけじゃない。

――やっと気づいた。


僕は、シルアは。


――グガッ!!


脳天に、蹴り上げられた足が当たる。


感情と共に、視界が煌めく。

痛みを超えた、眩しさを伴って。


倒れる。


だんだんと意識が遠のいていく。

虚空へと再び、包み込まれるように。


重力のない深海。

音もなく、温度もない場所で。

感情のすべてがほどけていく、その瞬間……


――あ、負けた、な。


でも、いいや。


誤魔化さなかった。

真正面からぶつけられた。

怖くて、怖くて仕方なかったけど。

――全部吐き出せたから。


そして。

もう、気づいていた。


『守りたい』――あれは、たぶん最初の気持ちだった。

でも、今はそれだけじゃない。

その言葉じゃ、追いつかないくらいに。


やっと、わかったんだ。

君に届けたい思いが。


――ねぇ、エミレ。

この想い、受け取ってくれるかな。

ご覧いただき、読んでくださって本当にありがとうございます!

どうも、ルアンです。


まずは長いの本当におつかれさまぁ

深呼吸するべな

浸る人はここで浸りまくるだ

ルアンは夢の中でご一緒するだ


でさ。。

……あとがき、書こうと思ってたんだけど、

さすがに今日は、6000文字近く執筆したせいか、もう頭がまわらなくて……!(((おい


ほんとはこのあとの続きも書きたかったの

でも、描写もいまいちで。

うう、悔しい。ほんとに、悔しすぎる。。。。


正直、テスト前っていうこともあって……

色々と、どうなるか自分でも読めんのだよぉ( ; ; )


でも!次の話でいったん区切りをつけたいと思ってるので、

可能ならそこまでは、ちゃんと綴りたいなって思っています(๑•̀ω•́ฅ)☆


だから次の話もあとがきも語るつもりだったこと、どうしよう……悩む……。

うーん、追って連絡という形でもいいかな。ごめんね。


昨日?一昨日?投稿できなくて、待っててくれた人にはほんと申し訳なくて。

それでも、読んでくれて、待ってくれて、ありがとう。

ありがとう。何度でも言わせてください、ありがとう。


今のわたし、例えるなら……

「穴の空いたスポンジみたいなあのキャラ」状態。

あわわわわ〜って感じですわよんw


多分このあとがき、あとでこっそり直すかも。

(きっとちょっとずつ形になる……はず!)


とにかく、よく寝て、勉強して、

綴れるタイミングが来たら、しっかり綴ります!


次の話までは、絶対に行きたいところだから!


というわけで――おやすみなさい!!

またねっ

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