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第二話 覇者、しゃりしゃりと町へ行く

すみません、5月5日現在、気づいたけど、後半パートしか乗ってなかったです!

ちゃんと直しときました!

エミレがまいゴの腹から出てきた少年、シルアを拾ってから、3日経った。


あのあと、シルアは、それまでの疲れもあってか、すぐに寝てしまい、その後何日間も同じ状態が続いていた。



その一方でエミレはというと……

バーンという音が鳴り響くとともに小屋の窓から煙がたつ。

既視感(デジャヴ)が、過ぎる。


「うわーん、うまくいかなーい。なんでなのよぉ」


半べそをかいた状態の彼女の目の前にはなべと、その中に入った、こげた「物体」――おかゆだったものがあった。


エミレは、そう、ショタ……シルアが起きた時のためにおかゆを作りに勤しんでいた。

……が、見ての通り失敗続きなのである。


その数、なんと10回。


小屋の隅には、『炭になった元おかゆ』が9つ、山積みになっていた。

当然、小屋の中は、地獄のように焦げ臭い。



「……火を使うのはやめよう。んー、じゃあ、リンゴ?とかがいいかな。切るのは得意だし!!」


いつもはにおいなどにはつゆほども気にしない、エミレだが、

さすがに気を遣って、作る?食べ物を変更する。


「ッゲホッゲホッ」


そうこうしているうちに、シルアがベッドの上で目を覚ます。

……もちろん、あまりの臭さによって。


「あー、シルア少年!!3日ぶりのおっはよ!

 ごめん、起こしちゃった?一応リンゴ今切るから、水飲みながら待ってて!!」


タタタとエミレはシルアに駆け寄ると、水の入ったコップを渡す。


「あ、ありがとう、エミレ……その、それで、この匂いは?」


シルアは、そろそろとコップを右手で受け取り、掠れた声で尋ねた。


「おかゆ作ろうと思ってたんだけどさぁ、うまくいかなくて……なかなかに趣のあるにおいでしょ?」


「趣っていうか……くさっ。ゲホッゲホッ。」


りんごを切りながら、得意げなエミレをシルアは一刀両断する。


「まぁまぁ、そういわずに。

 はい、これ」


エミレは、ウサギ型に切られたリンゴをシルアに渡そうとするが、


「といっても、この状態じゃ、食べられないよね」


とシルアの姿を見て苦笑する。


(そういえば、この子、傷もひどいけど、()の傷――うなされてたけど、大丈夫なのかな。)


シルアは命の危機を脱した……といっても、傷はまだ完治していない。


左腕と右足骨折、お腹にやけど、その他全身に打撲、擦り傷、切り傷という満身創痍の状態だったので、エミレはシルアの全身をぐるぐる包帯で巻いている。

それゆえにシルアは、はたから見るとミイラの仮装をしたショタなのである。


ぐるぐる巻きにされた少年を見ながら、エミレは「……ふふっ」とにやける。


(かわいい――仮装をしているショタとか最高!!!)


彼女は、内心暴れながらも口では冷静を装う。


「あーんして、ほらほら」


片腕を骨折した少年にりんごを食べさせてあげるのもまた言うまでもない。


シルアは最初のころは真っ赤になって、抵抗していたが、今はしぶしぶという顔をしながらも、素直にりんごを放り込まれている。


ときどき自分の口にもりんごを放り込みながら、エミレは、


「あ、ほうほう(そうそう)

 そろそろね、あたひ(わたし)町に行かないとなのよね。

 ごくん。ほら、まいゴ――ドラゴンの肉腐りそうだから、その前に売りさばきたくて。」


と、少し申し訳なさそうにする。


「わかった、じゃあ、僕は留守番しとけばいい?」


要領のいいシルアは、エミレの言わんとしていることを察する。


「ありがと。それでさ、私あんなん(料理がど下手)だから

 ……何か食べたいものとかあれば買ってくるんだけど、どう?」


それを聞いたシルアはすこし顔を曇らせながら、不安げな顔をする。


「それについてなんだけどさ、僕は……記憶がない。

 好きな食べ物……どころか、自分の名前も思い出せないんだ。

 思い出そうとすると、頭にもやがかかって。

 ……怖いんだ。」


心なしか、シルアが怯えているように見える。


それはそうである。彼はおそらく、人にも危害を加えられていた。

ショックで記憶が断片的に抜けているのだ。


「そっか……」


エミレは、一瞬だけ沈黙して、それから声の調子をほんの少し柔らかくする。


「そっか、んじゃあ、おすすめ買ってくるからさ、好きなのあったらおしえてよ!!」


口調はいつも通り。けれど、その奥には子供をいつくしむ母のようなやさしさと温かみに溢れていた。


今、すがれるものは自分しかいない。

だからこそ――自然と、そうしていた。


すると、まるでつぼみから花が開くようにシルアは微笑み、頷いた。


穏やかな風がふたりの間をそっと撫で、薄雲の向こうから陽光が差し込む。

そんな静かな時間が、ゆったりと流れていった。


……そうして。


「行ってくるねー!」と手を振って、エミレは町へと向かい、歩き出した。


****


――のだが。


町に入ると、エミレをじろじろと見る町人たちの視線が突き刺さる。


「……やっべ、またなんかやらかしたっけ。」


一歩進むたびに、視線が鋭くなる。


何かを察したエミレはまいゴの入った袋を地面に置く。


そう、ここは、エミレに左遷を命じた町。


これは、明らかに『歓迎』ではない。

そう思った矢先に、じりじりと距離を詰めてきた彼らは一斉に――


「うわぉ、すげぇじゃねえかエミレ!!

 わははは、こりゃまずそうだが、装備にはもってこいだぞ!!」


「エミレぇ、よくきたじゃねぇか。お前さんまた、美人になってるのお」


「エミレねぇね、だっこだっこ」


「こらこら、おかえりぃ、エミレちゃん。うちの子さびしがっててね。抱っこしてやってくれんかい?」


一転して、きらきらとした目でエミレを見てくる町人たち。


ここ、エピネスの町人はいつだってフレンドリーだ。

特にいつも町の安全と恵みをもたらすエミレの存在は、――今や立派な覇者(ヒーロー)となりつつもある。


ちなみに、最初の無言タイムは、町独自の『エミレ判定タイム』。

万が一、なりすましだった場合、鋭い視線に耐えられず、逃げ出すからという理由らしい。(町人談)


エミレは駆け寄る子供たちをだっこをしたり、町人たちと話をしたりしながらも目的地である、武器屋へと向かっていた。

町人たちとの触れ合いに追われながらも、足取りは軽やかであった。


****


武器屋はレンガ造りの風情ある建物になっており、いかにも歴史を感じさせる。

そこに住まう店主もまた――風情と渋みを混ぜた女性で、エミレの恩人でもある。


扉を開けると、からん、と鈴の音色が響き渡る。

音色に気づいた店主は、エミレの姿を見るや否や、眉をひそめる。


「ああ、お前さんか。今度は何かね?

 ……まーた、面倒なものでも持ってきたんじゃないだろうね?」


ぶっきらぼうな口調ながらも、その奥にはエミレに対する親しみがにじんでいた。


「お、おばさんさっすが!!勘が鋭い……ご名答でございます。ほらこれ」


「まずそうだったから」とエミレはカウンターに解体したまいゴを置く。


店主はため息をつきながら、眼鏡をくいとあげて、面倒くさそうに鑑定をはじめる。


しかし次第に、彼女の視線は、真剣にまいゴに引き寄せられ――


「骨の硬さ、皮膚の頑丈さ――ふん、上出来じゃないか」


コーヒープリンのような声で、放つ。


気に入ってもらえたことを察したエミレは、ぱっと顔をほころばせる。


「これ、何ピグくらいになるかな?」


店主は、ふむと頷きながら、かちゃかちゃとそろばんを弾く。


「……これくらいはどうかね、200ピグが相場だが色を付けておくよ。

 250ピグだ。」


「ありがとうね!!おばさん」


「ほら、とっとと金受け取ったら、でていきな。

 こいつは孫の誕生日プレゼントにちょうどいいと思ってね。

 なに、あんたがきてイライラした気分が、普通にもどっただけだよ」


普段は無口な店主がぽろぽろと自分のことを話しだすあたり、よほどいい気分なのだろう。


エミレも嬉しくなって、お金を受け取りながら、ニマニマする。


その時ふと、シルアのことが頭をよぎった。


(なにか、この町のおいしい物でも買っていけば、あの子の気もまぎれるかな……)


気がつけば、エミレは尋ねてしまっていた。


「ねぇ、町のおいしいお店とか知らない?」


予想外の質問に、店主は目を丸くしながらも、


「あんたが、んなこと聞いてくるなんてめずらしいね……竜狩りの記念とかかい?」


と平然を装う。

しかし、その顔にはしっかりと、『明日には世界が滅びるんじゃないか』と書かれていた。


「なっ、めずらしいって私をなんだと思ってるのよ!!

 まぁ、なんとなくよ、色付けてもらったから、気分がいいだけだし」


そういいながら、エミレはふくれっ面をして、ふてくされる。

その様子に、思わず店主は吹き出す。


――口では反発しつつも、その実は心を見透かしたような少女のしたたかさ。


そんなところが、店主の心をくすぐる。


「まぁ、お前さんが、食事になんて興味持つなんて珍しいからね。

 そうだな、パパン堂はどうだい。角を曲がって、まっすぐ行ったらある。

 あそこのチョコパンは絶品だよ。」


「へぇ、そうなんだ。

 ありがと、早速行ってみる!」


エミレは、うれしそうに礼を言い、勢いよく踵を返す。

足どりは心なしか、いつもよりリズムよく刻まれていた。


――背後から、じとりと見つめてくる影に気づかずに。

読んでいただき、ご覧いただき、ありがとうございますm(__)m

どうも、ルアンです!

「ピグってなんやねん!?」という声が聞こえてきます!(セルフ)ので、お答えを。


ピグ=1ピグ=100円!

つまり武器屋のおばちゃん、超太っ腹だった…5,000円(ス〇ッチ2ではなく)!←こちら計算ミスです(後日気づいたw)

ちなみに、ス〇ッチ2は落ちました。ぴえん。


あと、1話ちょこっと修正入りました。

それと…**PV26!!**見てくださった皆さま、本当にありがとうございます(´;ω;`)✨

エミレが町の人に愛されてて、産みの親として号泣ものでした…。

ショタツッコミ担当・シルちゃんもこれからたくさん布教していくぞ〜!

それではまた次の話でお会いしましょ〜!

あとがき全文はこちら↓(もしくは上のシリーズ一覧から!)

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/3/

*˙︶˙*)ノ"マタネー

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