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第二十三話 覇者、鳩クッキーが食べたい(明日OR明後日投稿になります、申し訳ございません。。)

SIDE シルア


僕が、『英雄の卵』……?


エミレから放たれた台詞に、僕は若干の違和感を覚える。

その言葉は、僕には似合わないようで――


だけど、

エミレが『しがなき覇者』で、僕が『英雄の卵』。


その響きが、くすぐったくて、思わず笑みを深めてしまう。


――その時だった。

背後から、ふたつの声が重なる。


「ったく、わかったよ。」


「でも、ポリリ――」


「まだ、チャンスはある。

 ……が、今じゃない。諦めろ。」


「……降参する、俺たちの負けだ」


ポリリが手を上げると、リポポも同じく手を上げた。


静寂が、一瞬。


それを打ち破るように、観客席から大きな歓声が響き渡った。


「……やった」


確かに、勝ったんだ。だけど胸の奥に、ほんの少しだけ――釈然としないものが残る。


それが何かを問う暇もなく、声が響いた。


「勝者!!

 エミレ&シルアコンビだぁああああああ!!」


司会が、喉を咲かんばかりに吠え、会場を揺らす。

観客席は波打ち、歓声が爆発するように湧き上がる。


そんな祝福と興奮の渦に包み込まれ、僕は勝利に酔いかける。


そこへ――


「お疲れ様、エミレとシルア。

 そして、リュドエールル。」


……それは、まるで“勝利”にフタをするような声だった。

会場の空気を切り裂くように、悠々と歩み寄る、ひときわ派手な衣装が。

金糸の刻まれた黒い中華服に、灰色の髪――間違いない、レシャミリア(クソギルド長)だ。


刹那、歓声が一段と大きくなる。


「きゃあああああ!!」


「レシャミリア様、結婚してぇええ!!」


「こっちむいてえええ!!」


さすがは、ギルド長――人気がすさまじい。

観客席の中には、名を呼ぶ者、手を振る者、しまいには泣き出す者まで現れた。

まさに、神が降臨したかのような光景。


……クソ野郎なのに、だ。

安心しろ、あとで絶対に殴る。


微笑を浮かべ、熱烈なコールに応える彼の姿を目に入れながら、僕は強く決意する。


「そして――ちょっと、表に来い。

 確認したいことがある。」


突然放たれたその声は、静かだった。

だが同時に、騒がしい観客の熱気を一瞬で冷ますほどの圧を孕んでいた。


僕はゆっくりとレシャミリアを見据え直す。


――レシャミリアの目が、笑っていない。

彼の表情は、明らかに笑っているようで笑っていなかった。


そんな不気味な表情を張り付けたまま、彼は優雅に指先をくい、と曲げる。


「……えーやだー」


エミレは、口では反抗しつつも、歩き出す。

僕もそのあとに続いた。


すると、レシャミリアは、僕らに背を向けて歩き始める。

歩くたびに揺れるその黒色の中華服が――まるで処刑台に続く道のようだった。


****

SIDE ショーン


反才腕(アンチギフト)に、英雄の卵……盛大に嘘をついたな、エミレ。」


ぽつり、と石を穿つように、レシャミリアが、ひとこと垂れ落とす。


核心を突くようなそのひと言に、

その場の空気が凍りつき、歓声がまるで遠雷のように消えていく。


シルアが横目でエミレを見る。

彼女は何も答えず、ただ肩で息をしていた。


ノエルが一歩、後ろに引く。


――重い沈黙。

誰もが息を呑み、その時間だけが妙に長く感じられた。


「さて、どう釈明してもらおうか――」


……そう続くと思った、次の瞬間。


「ポリポリポリポリ……」


帰ってきたのは、踊るような咀嚼音。


「なぁ、エミレ?」


動揺が滲むその声に、反応したのは、


――ボーボッボ!!ボッーボッボー!!


謎の鳴き声であった。


……レシャミリアの思考のブレーカーが落ちる。


「いやっ、ちょ……返事してよ。

 さすがに、傷つくんだけど。」


「ん?なに?聞こえない。

 ……ちょっと今、鳩に囲まれてるからタンマ。」


「いや、みればわかるけど……どうしてそうなった?」


――ずどーん


そう、エミレは今、頭から足の先まで、鳩に覆われていた。

びっちりと、エミレの身体が、外から覗く隙間がないほどに。


その姿、まさに、(はと)に覆われた(エミレ)

遠くから見ると、雪だるまとも思えるその光景に、ノエルは吹き出す。


「……それは、僕にもさっぱり。」


呆れた声で、シルアが、代答する。

その目は、時代を超えるほど遠くを見ていた。


コロシアムの売店に行きたいと駄々をこねるエミレに、ポッポコーンを買い与えたがこの始末。


――本当に、どうしてこうなったのか、わからない。


ただ確実に、分かるのは……エミレがどちゃくそ食べるのが下手ということと、


「ねぇねぇ、コロシアム名物、鳩クッキーって、この子たち集めたらできるかな?」


彼女が、めちゃくちゃ鳩クッキーを食べたがっているということだった。


エミレは、きらきらとした目で、鳩を鷲掴みにして、レシャミリアに突き出す。


――グッググガ、ググガッ


鳩は、とても苦しそうだ。


「いや、ちょっと、ううん、うーん、絶対違うかな。」


鳩の顔が、だんだんと青みを増していくのと同時に――


「……生き物は、ほら、大切に、しような……エミレ。」


レシャミリアの声も、小さくなる。


「?大事にしてるけど……ほら!!」


エミレは、鳩を鷲掴みにしたまま、慈しみを込めて撫でる。

その無邪気な姿は、森に住まう妖精と、


――グギャ


ハンパなく、ずれていた。


(((絶対、今、この鳩……優しくする方向がそっちじゃないって、突っ込んだだろ!!)))


(キャルケ……)


「じゃなくて!!

 俺様の話を聞いて!!」


レシャミリアの脳にようやく、電源が入る。


「あっと、なんだっけ?」


対して、エミレは、鳩を片手に、必死に回想する。


「だから、反才腕(アンチシジル)の――」


「ああ、それね。

 ……大丈夫。

 私、覇者だから。」


エミレが鋭く、低く、レシャミリアの言葉を裂く。

その目には、ゆるぎない自信があふれ出ていた。


――パタタタタ


エミレの周りを囲っていた鳩が、飛び立つ。

その行く先は、湖か、ドブか……まだわからない。


けれども、彼らは、ただ真っ直ぐと、青い空に導かれ、舞い続ける。

たとえ、それがひと時でも。


「さっ!

 次の試合が、始まっちゃうよ!

 ほら観戦しないと!!」


エミレが、身を乗り出し、必死に目を凝らす。


「それもそうだな!

 ……次の試合もあるし。」


シルアは気を引き締めて、顔をあげる。


「ああ、負けてもらっちゃ困るからな。」


レシャミリアは、ノエルに視線を移しながら、つぶやく。


「そうですね。

 ……まぁ、だからといって、タダで勝ってもらうのも、つまりませんが。」


ノエルが、風に髪をたなびかせ、目を伏せる。

その顔は、無表情ながらもどこか柔らかかった。


会場に、重々しい鐘が鳴り響く。


「――第7試合、間もなく始まります。」


騒がしかった観衆に、再び、熱狂が宿る。


誰もが、次の試合へと期待を膨らませる中……


「まだ、暴れるには早い。」


闇に紛れるような囁きが、滲む。


コロシアムの最下段。

誰にも目につかないところに、黒いフードを被った者がひとり。


そして、その手には――禍々しい異形の装置が握られていた。


混沌の導線に、火がつくまで、そう遠くはない。

ご覧いただき、読んでくださり、ありがとうございます!!

どうもおおお、ルアンです(≧∀≦)ゞ


今日も今日とて、遅めの更新で申し訳ないデス

はい、というわけでね、

ドウア国、前半は、あと、残り、13話くらいかな……!!

まぁね、後半がね、長いのでね、どうしようかなって感じですねw

おほほ。年内には、いけるよたぶん。

そうだった!!ある程度、目途が立ったら(6月くらい)、また新たに、用語集とキャラ一覧、作り直しますね!


そして、今日のあとがきではね、なんと!!珍しく!!ルアンが!!怒ってるようで!?

というのをお送りいたします。(鳩クッキーの件にも、もちろん、触れるよww)

↓リンクはこちら(もしくは、シリーズ一覧から)

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/28/


前話から、43PV?いただいております!!

みなさま、本当にいつもありがとうございます!!

レビューから落ち着いたかなって思いきや、ちょこちょこ見てくださる方が増えていて、嬉しい限りです( ̄▽ ̄)

ふふふ、ようこそ、覇者仲間へ!!(毎度言っててごめんww 気にいってるんだww)


ではでは、みなさん、ルアンはテストに殺されないようにお暇しますわよわよ!!

じゃ、みんな、無理せずに!!

またねっヾ(≧▽≦*)o


追記

ルアン、ちょっと、壁にぶつかってます!

けど、だいじょぶ!それだけ、成長できるってことだから。

だから、待っててねっていうのを、あとがきで書いたので、もしよかったら、みてね。

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/29/

本当に、君たち、いつもありがとう。

おかげで、今日も歩めるし、明日も歩めるし、世界の覇者になるまで、いいや。

そのあとも、歩めて行ける。

たぶん、投稿明日か、明後日になるけど、ゆるゆる待ってて!!

だから、またねっ!

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― 新着の感想 ―
あぁー!もう笑った! なんかね、ポッポコーンとか私的にはパワーワード。 あとシルアってどこか情緒不安定ですよね〜 はぁ〜あのおばちゃんは今頃どうしているのだろうか……。 白銀鏡でした。
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