第十八話 覇者、覇者のプライドを全力でへし曲げる
「ねぇ、エミレ。
なんか、僕たち……すごい注目されてない?」
「ん~、確かに?」
――ここは、冒険者ギルド。
受付嬢に連れられ、ギルド長のもとへと向かうエミレとシルア。
そんな2人に向けられていたのは、数多の冒険者たちの視線――
そのどれもが、鋭く、強く、そして……熱い。
かつてエミレが、大口をたたいた時のような冷笑や懐疑は、そこにはなかった。
代わりにあったのは、尊敬。
ある者は憧れを、ある者は畏怖を抱きながら、ふたりの背中を見送る。
焼くようなその視線に、思わずシルアは肩を震わす。
そんな彼らの間からは、興奮を帯びた囁きが漏れる。
「なぁ、あいつらだよな?」
「ああ、迷宮で、ハダカネズミの大群を倒したとかいう。
噂の2人組だよ。」
「なんと、討伐数は、軽く1000を超えていたとか!」
「ひょええ……まじかよ。
しかも、依頼者を守りながらだったよな」
「報酬額も、800ピグだったとか……」
「もしかしたら、あいつら、『ギルド長の専属冒険者』になれるんじゃねぇか?」
「いやいや、聞くところには、今のところ『ギルド長の専属冒険者』は3人しかいないとか。
さすがに、大物ルーキーでも無理があるだろ。」
その響きを、エミレは聞き逃さない。
「シルア、聞いた?
ギルド長の専属冒険者だって!なんかさ、響きよくない?」
「いきなりなんだよ。
まぁ、確かに特別感はある……」
「でしょう!ぼいん的な何かが――ある!確実に!
ほら、みて!我が崇高なるぼいんセンサーを!!」
エミレのアホ毛は、かつてないほど激しく、乱舞していた。
そりゃもう、引き千切れん限りに。
「いや、だから、エミレ――」
「無駄話はそこまでです。つきました。
……ひとつ忠告です。
うちのギルド長はクソ野郎ですが、大変残念なことに有能です。
余計なことは、考えない方が身のためですよ。」
呆れがちに言葉を発するシルアを、受付嬢は容赦なく阻む。
だが、その声には、どこか気遣いも感じられた。
目の前には、黄金に輝く重厚なドアが。
受付嬢は、ゆっくりとドアに手をかける。
――ギィィィ……
ドアの軋む音が、城へと向かう馬車のように響いた。
その先に広がるは、黄金の楽園。
床も壁も天井も、まぶしいほどの金箔装飾に覆われている。
目をつぶさんとするその光は、まさしく財力を象徴していた。
中央には、黄金のドラゴンの剥製がぶら下がる。
その口からは、咆哮を模した金箔が、雨のように降り注ぐ。
香水が咲き、その濃厚で甘ったるい匂いが、鼻腔を酔わせる。
絹に塗り込んだ媚薬のような香りが、鼻の奥に纏わりつく。
雅楽が反響し、黄金の空間に溶け込む。
踏み出すごとに、靴の下では金箔の擦れる音がさらさらと囁いた。
奥のラウンジでは――
艶やかな衣を纏った美女たちが戯れていた。
くすくすと笑い、爪を弄びながら談笑する様子は、しなやかで気まぐれな猫のように。
その瞳に浮かぶ笑みは、どこか本音を隠しているような、読めない薄さを帯びていた。
一方で、舞う者たちは、色とりどりの華を風に乗せ、幻を孕んで踊る。
その姿からは、選ばれた者という自信と孤高さを醸し出し、目を掴んで離さない。
そして、この空間を統べる者
――まさしく覇者がいた。
金色に眩い玉座の上。
深紅の絨毯が、君臨する者を際立たせる。
そこには、足を組み、頬杖をついた男がひとり。
その身を包む漆黒の中華風の長衣には、金糸の刺繍が息巻いていた。
灰髪から覗くその瞳は硝子のように透き通り、底がない。
だが、客人を――エミレとシルアをその視界に入れた瞬間、僅かに口元が綻ぶ。
そこから発せられる、琴をつま弾くような優雅なひとことが……
「よくぞ来た。俺様の定めた宿命のもとに集いし、ふたつのほ――」
「天国!!
私……今日からここの住人になる!」
「「「……は?」」」
ぶち壊された。
一同、石化。
受付嬢が、ふっと吹き出す。もう遅い。
刹那、笑いの嵐が部屋を襲う。
「ぷぷっ、いや、無理だろ。ぷぷっ。
……物理的に」
男が、必死に口を押えながら、突っ込む。
その目には、嘲りと回憶の念が宿っていた。
「はぁ!?そんなの関係ないし!!
レディに失礼よ、失礼!
それに……君だって、なにさ!そのくっっそダサい服!」
「いや、これはもう万人がひれ伏すほどかっちょいい装いだろう!
なぁ、ノエルちゃん?」
ノエルは、ギルド長の横に佇んだまま、ひとつも表情を変えない。
その涼し気な黄金の瞳で男を見下ろしながら、静かに言い放つ。
「いえ、それ、時代を四巡くらい逆行していますよ。
あと、何回言えばわかるんですか、ちゃん付けはキモいです。」
「そんな……ががーん……」
男は、地に落ちたガラスのように崩れる。
しょんぼりと萎れたその男には、先ほどまで漂っていた覇王の気配など、もう微塵もなかった。
だが、その沈黙を許すほど、エミレは甘くない。
「わぁお!おねえさんの名前ノエルっていうんだ!
これからも、末永~くよろしくね!」
彼女はノエルに手を振り、投げキッスをする。
その恨みを絞ったような明るい声は、揺らぎかけていた王の威厳を徹底的に踏み潰す。
これぞ、エミレ奥義、かかと堕とし。
よって、男の長たる尊厳と人望は、オーバーキル。
「ほら、ギルド長、さっさと続きを。
――もう、私帰りたいんで。」
時計に視線を奪われたまま、ノエルは一蹴する。
だが、その頬は心なしか緩んでいた。
「うう、ノエルちゃん、手ひどい。
……美女たち、癒して。」
対する男は、懲りずに黄金の猫たちに擦り寄る。
(――ちっ)
その様子を羨ましそうに眺めるエミレは、無視。
黄金の間に、一瞬の静寂が戻った。
やがて、彼はゆっくりと立ち上がる。
刹那、漆黒と金の刺繍……夜空のような衣が揺れ、周りの空気を飲み干す。
その目が、ふたりを鋭く射貫く。
まるで、己が望む宝を見つけたかのように。
「我が名は、レシャミリア――
冒険者ギルドの王である。」
レシャミリアに、重圧が宿る。
先ほどまでの軽薄さは幻のように消え失せていた。
――これが、長の器。
空気が変わる。
その場にいた誰もが、本能的に身を引き締める。
「……そなたたちに、尋ねたい。
いや、確認したいことがあってな。」
レシャミリアは、ゆっくりと階段を下りる。
……シャリン、シャリン。
彼の身に付ける鈴が、ふたりの心臓を軽く転がす。
けれど、その足音は、金箔の上でどこまでも重く響く。
シルアから汗が一滴、落ちる。
「――そなたたちは、何者だ?」
ご覧いただき、読んでくださり、ありがとうございます。
どうも、ルアンですっ!!
投稿遅れてしまい、申し訳ございません(*- -)(*_ _)ペコリめちゃ遅いよね、、本当に申し訳ない汗
比喩表現が今回は多いかな?味わっていただけたら幸い。
そしてそして、お知らせです!
えー、私の小説にサブタイトルがつきました。
『世界の覇者』になれと、神に呪われた僕らはーーって、タンマ!異世界征服してるだけなのに仲間がクセTUEEEEすぎて世界の方がギブアップしてるんですケド!?
です。
ながぁい、けど魅力伝わるかな?
あと、コンテストにもエントリーさせていただいたので、応援してくださると感激!!!(≧∀≦)ゞ
実は昨日からPVが増えていまして、、うれしい限りです!!
前話から120PV以上いただいております。本当にありがとうございます。
短編から来てくれた方、最近初めて来てくださった方、そしてずっと読んでくださった方!
ようこそ、覇者の世界へ!楽しんでいただければ、本望の限り、、まじでうれしいねん。
そして……やっと、一章のプロット立て終わったよ((
まぁ、そんなこんなをいろいろ語るのはあとがき全文にて!
リンクはこちら↓(もしくは上のシリーズ一覧からシクヨロ!)あとAIにもあとがきについて聞いてみたwので、その結果報告です
https://ncode.syosetu.com/n9016kh/20/
ではでは、みなさま!
また、次話にてお会いしましょ~またねっヾ(≧▽≦*)o




