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第十七話 覇者、世界一のバカを見送る

SIDEショーン


どこか決意に満ちた空気感の中――


(くぅぅぅ……キマった。これは、かっこいい覇者感出せたんじゃないですか!?

 さすが、世界の美少女(エミレ)!素晴らしすぎる)


エミレはイタいほど自画自賛をしていた。

が、そんな上手くいくときは長く続かない。


「「「シルアさぁん~!!起きましたか!?」」」


そんな元気な声とともに――


バフーン!!


ドアが、爆ぜる。


(!?!?!?)


刹那、エミレの中で流れていた勝利BGMが、バフンと音の割れたヒーロ風のフリー音源へと成り代わる。


そんな爆音ミュージックと共に、木片と埃の煙から現れたのは……


「アフロと共に爆ぜろ、常識!!

 アフロの様に広がれ、社会迷惑!!

 内定だけは散らばるな、

 長男の――破爺(パヤ)!!」


「リーゼントと共に脱げろ、本能!!

 リーゼントの様に突き出せ、その首!!

 心も体も露出狂、

 次男の――裸爺(ラヤ)


「モヒカンと共に固まれ、脳みそ!!

 モヒカンの様に尖れ、腹痛!!

 トイレは流しても心は流れない、

 三男の――痢爺(リヤ)


「「「3人合わせて~~!!」」」


パヤが、ラヤとリヤの方の上に華麗にダイブ!

マントを妖艶に羽ばたかせながら、手を天へと掲げ、某戦隊もののポージングを取る。


すると、父と、耳と、阝が合体し、空中でキラリと輝く――


「「「参上!!われら、破裸痢爺(パラリヤ)(改)!!

  世界にはびこる悪を打ち消し、風紀を乱す者!!」」」


バフン……とどこからともなく効果音が響き渡る。


※どうぞ、脳内にフリー素材の宇宙背景でも添えて、お楽しみください。


(なんか、無駄にパワーアップしてる……。

 てか、ドア壊すな。誰が弁償するんだよ。)


(せっかく、覇者っぽくなったって、自己陶酔中だったのに……)


シルアとエミレは、心の中でツッコミをいれながらも拍手する。


「「わーすごーい

 ぱらりやだぁー」」(棒)


「……シルア、今完全に目が覚めたでしょ?」


「うん、完全に、現実に強制送還されたわ」


先ほどと、打って変わってにぎやかになり、雰囲気差で風邪をひきそうである。


自己紹介が終わると、破裸痢爺(パラリヤ)(改)はシルアに駆け寄る。


「「「シルアさん、無事で何よりです!!」」」


「ありがとう。破裸痢爺(パラリヤ)(改)も怪我の傷が治って何よりだよ。」


「「「いやぁ、ほんとにあれは……死ぬかと思いましたよ。

  でも、目が覚めたらきれいさっぱり傷がなくなってて、びっくりしました!」」」


(……もしかしたら、破裸痢爺(パラリヤ)(改)の傷、ハダカネズミが倒してくれたのかもな。)


破裸痢爺(パラリヤ)(改)と話しながら、シルアはハダカネズミへと思いをはせる。


「あ、そういえば!」


パヤが、はっと何かを思い出したかのように放つと、ガサゴソと服をあさり始める。


「「「これ、報酬です! 

  まじでありがとうございました!」」」


そういって、硬貨の入った袋をエミレに手渡す。

中身には――およそ800ピグが。


「え!?こんなにもいいの!?」


思わず彼女は驚きの声をあげる。

通常、ギルドで受けられる最高報酬が1000ピグなのだ。

それを踏まえるとかなりの額である。


「「「もちろんっす!

  俺らのリーゼントを見つけてくれましたし、何より……」」」


だが――その勢いは最後まで続かなかった。


ふと、破裸痢爺(パラリヤ)(改)の視線が下がる。

エネルギッシュな空気が、一瞬にして沈む。


「「「……俺たち、気づかされたんです。おふたりに。」」」


しんと、空気が沈み込む。


「「「――信念だけじゃだめだって!!」」」


その声には、いつものような張りがなかった。

けれども、そこには、伝えたいという真っ直ぐな想いが詰まっていた。


「「「……本当は、ハダカネズミに胸を割かれたとき、安心したんです。

  これが、何も考えずに行動して、

  エミレさんたちの足を引っ張った俺たちへの罰なんだって。」」」


気付けば、爪が食い込んで血が出るほど、拳を握っていた。


「「「でも、目が覚めたら、傷も治ってるし、生きてるしで――

  すげぇみじめで、恥ずかしくて、不甲斐なくて……怖かった。」」」


声が震える。

そのことがなによりも――自分たちを突き刺す言葉にならない感情を物語る。


「「「俺たち、バカだから、どうすればいいか、わかんなくなっちゃって。

  ――すべてが、うざくて、投げ出したくなりました。

  暮らしも、お金も、破裸痢爺(パラリヤ)(改)って名前も……相棒()たちさえも。」」」


ぽつりと床に涙が落ちる。

だが、3人は、前を見続けた。

……他人に涙を見られる以上の屈辱を味わったのだから。


「「「それでも!」」」


目に光が宿り、涙を照らす。

互いに肩を取り合い、支え合い、足に根を張る。


「「「ここで終わらせたくなんてなかった……。

  諦めきれなかった――俺たち自身を、俺たちの信念を。」」」


胸に手を当て、強く握る。


かつて、ネズミに砕かれた信念を、

いちどは零れ落ちた自分自身を、

恐れを振り払って、掴みなおすように。


自分たちの道に、新たに息吹を吹き込み、紡ぎ始めるように。


大きく息を吸う。

かつての辛酸と、期待を背負って。


「「「俺ら……破裸痢爺(パラリヤ)(改)は、旅に出ます!

  信念を貫き通す、力を手に入れるために!

  ――もう2度と悔しい想いをしないように!」」」


前を向きなおす。

視界は、涙であふれかえっていた。

鼻からも目からも、滝が流れ落ちて、もう何が何だかわからない。


けれど――目の前は、光で輝いていて、世界がより美しく見えた。


背中に風が吹く。


「「「だから!

  ……もし、どこかで、またおふたりに、会えたら。

  今度は胸を、張らせてくれますか?」」」


決意に満ちた表情で、問いかける。


「もちろん」「ああ」


(――キャルケイ!)


エミレたちの声は、穏やかで、どこまでも伸びていく。

その声に迷いはなかった。


シルアもエミレも、リュドエールルさえも隠れて、拳を握りしめる。

込み上げるもの()を抑えるために。

……目の前の勇者たちを引き留めないように。


だが、言葉を交わした瞬間――

破裸痢爺(パラリヤ)(改)の顔には、あふれんばかりの笑みと涙が浮かび上がった。


涙でぐじゅぐじゅになった顔は、きっと――人に笑われてしまうようなひどい有様だった。

でも、それでいい。


そんな顔になるほど、本気だったから。

そんな顔になるほど、魂が震えたから。

――そのことが、なによりも誇らしかった。


きっと、世界中探しても……あいつらのような最高にダサくて、かっこいいバカは見つからない。


3人は、ゆっくりと、嚙みしめるように、歩を進める。


「「「またな!!!」」」


マントが、風にたなびく。

導くは、どこまでも続く未来。


まっすぐと、信念を突き通すために。

盟友と再会したとき、胸を張れるように。


――彼らは、貫き続ける。



****


「……行っちゃったね。」


エミレの声が、風に溶ける。


3人の背中は、遠く霞んで、消えてしまっていた。


「うん……嵐みたいなやつらだったね。」


「……キャルルン」


前を見つめたまま、2人と1振は、しばらく立ち尽くす。


その声には、隠しきれない、寂しさが滲んでいた。

けれど――まったくと言っていいほど、心配してなかった。


きっと、彼らはこの先、何度くじけようとも、

そのたびに、立ち上がり、信念を深めていくのだろう。

そうして、本当の強さを手にしていくのだ。


……けれど、それは()()|の話だ。

この物語は、まだ始まりさえもしていない。



「……はぁ、やっと見つけたと思いきや。

 なに、呆けてるんですか。

 冒険者様。」


突然、すべてを凍らせるような声が響く。


当然この声の主は――


「わぁああああ!!

 ギルドのおねえさんじゃん!」


ギルドの受付嬢であった。


皺ひとつない制服、そして、書類をバインダーに挟んでもなお、ピンとのびた背筋。

その佇まいは、まさに――完璧な仕事の女王。


……なのだが、その特徴的な金目が、尋常でない鋭さを放っていた。


彼女は、興奮するエミレをそっちのけで、話し始める。


「クソチャラ――んんっ。

 クソギルド長より、直々に招集命令がかかっております。

 しかも、今すぐ。」


そう告げた彼女の群青色の髪は、激しく風に煽られる。

まるで、これから、訪れる波乱を暗示するように、激しく唸っていた。

……風は、しばらく止みそうにない。

ご覧いただき、読んでくださり、ありがとうございます。

どうも、ルアンです!!(20:30には出すつもりだったのにごめんよお)

ブクマいただいたです、人生初です。

まじで歓喜のあまり泣きました、モチベあがりました。

本当にありがとうございます。。。(´;ω;`)言葉じゃ足りない。幸せです。。

+600PV達成ということで!

記念イラストを今日は書いてきたのだよ!

挿絵(By みてみん)


「あ、そういえば、今日はショーンしてんだけど、1人称入ってない!?」

という方、わざとですので!お気にせず!


そして、前話から、35pvいただいております!!

本当にいつもありがとうございます!!これからも頑張りますので、うちのかわいいエミレちゃんたちをどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m(390度のお辞儀)

ではでは、また次の話にてお会いしましょ~またねっヾ(≧▽≦*)o


感謝をつづったり、ギルド嬢について書いたりしたあとがき全文はこちら↓(もしくは上のシリーズ一覧から!)

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/18/


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