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第一話 遥かな演劇としがなき覇者と

やっほー!!

そこの読者さん、こっち見てるね?

よしよし!


じゃあ――はいっ、おめでとう!

君は、もう仲間だよ!!


えっ、拒否権?ないよ!!

読んだ瞬間、もう仲間って決定だからねっ!

(安心して?責任は全部、綴り手、ルアンが背負うから!)


……なんでかって?


うん、わかるんだよ。

きっと君は、この物語と、何度でも出会い直す。

ページをめくるたびに、誰かの言葉が、誰かの想いが、君の心をノックしてくる。


だからようこそ。

これは、まだ何も知らない君自身が、世界の覇者となる物語。


笑って、泣いて、叫んで、

やがて――「誰よりも、この物語を好きだ」と思うようになる、その未来へ。


……さて、それじゃあ、準備はいい?


君の旅は、いま始まる。

誰にも止められない速度で――!

――世界を統べるもの、君でいう世界の覇者というものには何が必要だと思う?


低い、でも、暖かいような懐かしいような男の声が頭に響く。

頭ははっきりしているのに、目の前はぼやけていた。


柔らかな地面の感触と青々とした草のにおい――草原の中にいるのだろうか。

あたりが光と草で緑色にきらきらしていて、男の顔もよく見えない。


しかし、真っ青な水のようにしみこむ、そのすべてが。

声もぼやけた視界さえも、()()()()()()()といわんばかりに。


――地位、名誉、財力、美貌、カリスマ性、武力、いいや、そのどれでもない。それは……



言葉が続くよりも先に手を伸ばした。

()りたい、そのあとの言葉(しんじつ)を。


手をのばしてのばしてのばして伸ばし続けて、やっと、手が男をかすめた。


――けれど、届かない。


ふと違和感を感じ、下をむく。


すると、


手が、真っ赤に染まっていた。

驚いて、顔を上げた瞬間――


世界が変わった。


まるで劇の幕があがったように、視界が開ける。


だが、そこに広がるのは、希望でも光に満ち溢れた世界でもなかった。


ただ、真っ赤に染まってしまった世界。

光は血に沈み、空は赤く染まり、地は悲鳴を上げていた。


そして、その絶望感を体現するかのように、真っ赤な世界は徐々に体を蝕む。

ねっとりと、身体を取り込むように。


でも、そんなときでも、手を伸ばすことはやめられなかった。


そこで物語(ゆめ)は途切れた。

それはベールがかけられたような、墨塗りされたような遠い遠い記憶。


――少女に宿る、呪いの欠片。


****

 

青々と木々が繁茂している森に少女がひとり。


少女――エミレは森の中でひっそりと暮らしていた。というのも。

土煙とともにバーンと音が鳴り響く。


音の発信源は当然、エミレ。

彼女の目の前には三匹の哀れな生き物たちが並べられていた。


「ひゃっほーい、今日も大魚大魚!!

といっても、ペガサス!!イノシシ!!

そしてなんといっても目玉は…そう、まずそうな老いたドラゴン!!

うん、ぜーんぶお肉!!だから、大魚じゃなくて、多獣(たいじゅう)?」


紅い目を輝かせて、エミレは自慢げに仁王立ちをする。

ペガサス、イノシシはご想像にお任せしよう。普通のだ、そう普通の。


問題は、ドラゴン。

()ずそうな老お()たドラ()ン――略して、まいゴ。

その名の通り、わくわく老後のお散歩中にうっかり別の森に迷い込み、空腹のストレスで、ついうっかり暴れてしまった……。

そんなところを通りすがりのエミレによって、ちょうど狩られてしまった可哀想な子羊なのだ。


だが、問題は()()()()()()()ところ。


通常、ドラゴンは熟練の冒険者20人パーティでも狩るのが難しい、暴れている個体はなおさら。

そんなドラゴンを、エミレはたった今息継ぎをするように仕留めた。

そう――少女は強い。


それはまぁ、強い、残念ながら。

というのも彼女はそのせいで町から、見張りという名目で左遷を食らっているのだ。

 

「そろそろ、さつまいもも尽きてきたし、まいゴでも売って、買い出しに行くかぁ」


右おくれ毛だけが桃色に染まった特徴的なツインテールを風と遊ばせながら、つまらなげに呟く。


風に導かれ、彼女はまいゴを横目にみると――

まいゴの腹がボコボコと動いていた。


まるで、中から何かが押し出てこようとしているかのように。


「まさか、ドラゴンは卵で生まれるはずだし……え、新種?」


エミレは動揺を隠しきれず、でもどこか好奇心が抑えられないという様子でまいゴに近づく。


「新種のドラゴンかもしれない!!

 そうしたら私、新聞とかで載るのでは世紀の博士的なやつで!! 

 早速切ろう、そうしよう!!」


エミレはまいゴの腹に飛びつき、そのまま、まいゴを仕留めたナイフで彫刻を彫るように腹を裂き、解体する。

まだ見ぬ、世紀の博士という夢をめがけて。


だんだんと腹の中が見えてくる。


まいゴの腹の中に入っていたそれは思ったよりも小さく、細く、ぼろぼろで傷だらけの

 「人間?しかも、男の子……ショタ!?!?」

 だったのである。

この時のエミレの顔はまるで神がこの世に降り立ったといわんばかりの幸福と興奮に溶けた顔であった。

新種のドラゴンを発見した世紀の博士という名誉は消え失せてしまったが。


ショタ――といってもエミレと背丈は変わらない――もとい少年は、体の節々が傷だらけであり、状態があまりにもひどい。

鉄と泥水を混ぜたような鼻につくにおいが、あたりを漂う。

顔は伸びきった黒髪で隠れていたが、一目みただけでも首からは膿んだ切り傷、擦り傷、打撲、骨折と破壊のオンパレード状態である。


その上、おまけに何日間はまいゴの胃の中に入れられていたのだ。

いきているのも不思議なくらいである。


エミレは、面倒だといわんばかりに「しかたないねぇ、ショタに免じてだよ」と言いながらもせっせと小屋へ運ぶ。

少年の患部――特に膿のある部分を水で濡らした布で拭く。


さらさらと拭いていくと、だんだん少年の患部がよりはっきりと見えてくる。明らかに人がつけたような傷もあった。

か弱そうな少年が日常生活で受けていい傷のレベルではない、あまりの酷さに苛立ちのようなものがエミレを支配する。


(この子は何者?まあ、いい。それよりのこの子の傷が先だ。

 ……一応『専門家』が作った高級傷薬買っておいてよかった。

 これなら傷跡も残らずに済むだろうし。)


思考の中ではあれこれ話しながらも、黙々とエミレは現れ出た傷口に傷薬を塗り、包帯を巻く。




 (よし、身体はオッケー。んで最後に顔ね)


エミレは少年の顔にかかった髪を払おうと手を彼の顔に近づける。

と同時に、少年はスイッチが入ったように目を覚まし――


 「見るな!!」


と叫んだ。

まるで大事なものを守るように。


このことに、少年自身も驚いていたのか、固まっている。


「見てほしくないなら見ないけど……傷の手当てもしちゃったし、既に、じゃないかい少年?」


そんな彼の様子に、すこし驚きつつ、エミレは淡々と返事をする。内心は別として。


(おおおう、きました!!!

 反抗期のショタですカネ!?!? 

 おいしいぞ、これはケガの手当てをした甲斐が報われるってものよぉ)


……せっかくのすました発言が灰に還るようである。

少年はすかさず、「少年って背丈かわんないだろ」と突っ込みながらも、エミレの指摘には「まぁ確かに」と納得する。


だが、「でも、できれば顔はあんまり見てほしくない」と引き下がらない。


すると、エミレは色付きサングラスを取り出し、さっと少年に掛ける。


悪魔の羽が生えた禍々しい装飾なのに、『HAPPY』と書かれた文字が無遠慮に光るそのサングラスは、なんともダサかった。


「これでどうだい?この『専門家』お手製の色付きサングラスなら君の見てほしいところしか見えないぞ!!

 今目の前に私がいないように見えるだろう!!」


自慢げに胸を張ったエミレに、思わず少年は沈黙する。


実はこのサングラス、ただのガラクタではない。

『かけると相手が、見てほしい、と願うものだけが見えるようになる』という便利かどうかわからない効果のついた代物であった。


エミレはこのデザインに一目惚れし、衝動買いしたのだが、その性能ゆえになかなか出番がなかった。

故に、エミレは内心、やっと役に立ったとほくほくであった。


少年は、色付きのダサいサングラスを即座に出せる変人に驚きつつも――ふと気づく。


目の前にいるはずのエミレが見えない。


「……ダサいのに、すごい。」


少年は、仕方なく、ダサいと評したそのサングラスの株をあげる。


そして、すぐにサングラスをエミレへ返し、彼女にサングラスをかけるよう促す。

エミレが、サングラスをかけたのを確認すると、少年はさっと無造作に髪を上げた。


その瞬間――エミレははっと息をのむ。

久しぶりにここまで驚いた気がする。


少年の顔立ちは、彫刻のように整っていて神秘的であった。

あどけなさの残るその面持ちは、凛々しいというよりも美しいという言葉が似合っていた。


だが、それ以上に気になったのは――その瞳。

正確には、見えない。


きっと少年が、見られるのを拒んでいるのだろう。

だからこそ、エミレは悟った。


……彼の事情を。


 「……名前は?」


自らの頬を叩くような声でエミレがぽつりとつぶやく。


「シルア。」


「いい名前だ。シルア――君に()()()()だね」


エミレは見透かしたように笑う。

シルアは戸惑いながらも、信じられないものを見るようにただ見つめひとこと。


「……もう色付きサングラスつけなくてだいじょぶだから……えっと」

「エミレ。私の名前はエミレ、しがなき隠居中の覇者だよ。」


そういって、エミレはシルアの頭をなでる。

いたずらっ子のように、イシシとほほ笑みながら。

読んでくれて、ご覧いただき、ありがとうございます!

どうも、生涯厨二病JKのルアンです!

(君を強制で仲間にした犯人だよっ!!)←霊話からの人同じ流れ2回も付き合ってくれてありがとう笑╰(*´︶`*)╯♡


さて、本日紹介するのは――慣霊なれいのショーンくん!

物語のナレーターで、テンション強め&うっかりミス多め。

補足とか感想とか勝手にしゃべっちゃうけど、愛されキャラだと思って許してネ(*- -)(*_ _)ペコリ

(作者のせいではない決して……おほ。)


投稿はなるべく2日に1回目指してます!

ご感想・質問・誤字ツッコミ・ネタコメなどなど、大歓迎です!

ブクマ、リアクション、読んだよとか感想くれるとめちゃうれしいデス!


ちなみに、なんか展開遅いなって思う方。

大正解!

旅に出るのも遅い、けれどね、それにはちゃんと意味がある。

――すべてが揃ったときに、宇宙を焼くほど燃え上がるようにね。


あ、あとがき全文のリンク張っとくのでもしよろしければぜひぜひ!(もしくは上のシリーズ一覧から!)


https://ncode.syosetu.com/n9016kh/2/

じゃあ、次話にてお会いしましょ!またねっヾ(≧▽≦*)o

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― 新着の感想 ―
ゆっくりで助かります。ゆっくり入っていきたいタイプなので…
読み始めたらなんか癖になりますね笑 もう少し追いかけさせていただきます。
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