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第十二話 覇者、ヒーロー……?に遭遇する

「「「おいおい、ツインテールのおじょおちゃん。ちゃっくら、俺らのマイハニーにならねぇか?」」」


「ん?」


エミレが謎の声に反応して、くるりと振り向く。


瞬間、ギルド内に、風が吹く。

エミレの目の前には――受付嬢を凌駕するほどの美貌とぼいんを兼ね備えた美男子が!!


――トゥンク


衝撃のあまり、エミレの胸は高鳴る。


そう……これこそが運命の出逢いだったのだ――!



なんてことは……まったくなく。


エミレの目の前に立っていたのは――


何故か、上半身裸。

にもかかわらず、サスペンダーという謎のファッションを誇らしげに着こなし、

右から、桃髪のアフロ、黄色のリーゼント、そして、緑色のモヒカンという奇抜な髪形を揃えた、

人衆みるからにやばいやつらがいた。


一方のエミレはというと――


「えっと、マイハニーにならねぇかって、マイ歯に?

 ……つまり、私があなたたちの歯になれってこと?」


などと盛大な勘違いをかましていた。


そんなエミレの発言に、3人衆は顔を見合わせ――


「「「もしかして、俺たちのこと知らないのか!?」」」


「「「ならば、教えてやろうっ!」」」


瞬間、3人衆はエミレたちに背を向け、握りこぶしを作る。

その背中には、それぞれ、右から順に『破父』、『裸耳』、『痢阝』と大きく刻まれていた。


「アフロと共に爆ぜろ、常識!!

 アフロの様に広がれ、社会迷惑!!

 内定だけは散らばるな、

 長男の――破爺(パヤ)!!」


「リーゼントと共に脱げろ、本能!!

 リーゼントの様に突き出せ、その首!!

 心も体も露出狂、

 次男の――裸爺(ラヤ)


「モヒカンと共に固まれ、脳みそ!!

 モヒカンの様に尖れ、腹痛!!

 トイレは流しても心は流れない、

 三男の――痢爺(リヤ)


「「「3人合わせて~~!!」」」


パヤが、ラヤとリヤの方の上に乗り、某戦隊もののポージングを取る。

すると、父と、耳と、阝が合体し――


「「「世界の風紀を乱す3兄弟、破裸痢爺(パラリヤ)ッッ!!!!」」」


バフン……とどこからともなく効果音が響き渡る。


※どうぞ、脳内にフリー素材の宇宙背景でも添えて、お楽しみください。


(いや、破裸痢爺(パラリヤ)って、誰だよ?)


そんな空気が、ギルド内を包む中、エミレはふむふむと頷く。


「ん、つまり、私、あの人たちの入れ歯になれってことだったのか!!

 納得納得!!でも、私は世界の覇者になるからお断りしないと、ね……」


しだいに、エミレの顔面が脱色される。


もちろん、彼女の隣には――シルア。

だが、その目は光をなくし――死んでいた。


「誰が、誰のマイハニーになれって?」


――ザバッ。


……次の瞬間、破裸痢爺(パラリヤ)3人衆の髪は無残に千切れ去る。

まるで、鬘が春風と共に舞い飛ぶように。


「あああ、俺のっ俺のっアフロがあああ!!」


「兄ちゃん、大丈夫かって……俺のリーゼント(青春)がッ!!」


「な、兄ちゃんたちの仇は取る……って、剝がれるな、俺のモヒ……カーン」



破裸痢爺(パラリヤ)の悲痛の叫びなどにはつゆほども気にかけず、

シルアは続ける。


「だからさ、誰が誰のマイハニーになれって言ってるのかって聞いてるんだけど」


シルアはリュドエールルを握りなおし、コツコツと破裸痢爺(パラリヤ)にゼロ距離まで迫る。


「おい、早く答えろよ?」


その姿、まさに天下無双。

対する破裸痢爺(パラリヤ)は、骨の髄から震えながらも必死に何かを伝えようとする。


「いや、違う、勘違いだってば……」


ぽつりと、パヤがつぶやく。


「あ"?」


さらにシルアが、パヤにガンを飛ばす。


「あ、すみません、えっと、その勘違いでございまして……」


そのあまりの圧に耐え切れなかった、ラヤがフォローする。


「あの、ほら、まずは楽しくお茶会で語らうとかどうでしょう?」


パヤは、シルアの剣幕に恐怖で脳が縮んだようで、目が往ったまま謎提案をする。


「おい、パヤ兄!!変に空気読めない真面目さここで出すなよ!

 ……死ぬから。」


シルアは、3人が小鹿の様にプルプルと足を震わせている姿を愉しそうに眺める。

そりゃもう、黒い笑み(アルカイックスマイル)で。


(おおう、なんか、やばそ……シルアがなんか怒ってるぞ。

 いや、そりゃ、人の入れ歯にはなりたくないか。

 あそこまで嫌がるなんて、シルアって潔癖症だったのかな?)


潔癖症のショタ卒業前の少年もいいぞ……などと、この空間で唯一呑気に思考を働かせているエミレは、遠い目をして、突っ立っていた。

――疎すぎる。


その間、破裸痢爺(パラリヤ)2人衆は、長男の意識をこの世に戻すため、

飛んで行ったアフロを拾ってきて長男の頭にのせたりと、悪戦苦闘する。


「ちょ、パヤ兄……俺たち、やらないといけないことあるじゃん!

 誤解を解いてさ、依頼の話しないと!!」


「リヤ、パヤ兄ちゃんのことはいったんあきらめよう。

 ……ほら、アフロが再生し始めてるから、たぶん、意識戻るよ。たぶん。」


すると、2人は、くるりとシルアの方へ向きなおす。


そして――


「「申し訳ございませんでしたー!!!

  実は俺たち、依頼しに来たんです!」」



ゴンッと盛大に、床に頭を押し付ける音が、鐘のようにズシリと響き渡る。


「依頼……?」


ぽつりとつぶやいたシルアの目の前に広がるのは――

髪はそげ、心もそげ、ただ命だけが残った3人の男たち。

……1人はどっか往ってるけど。


そこでシルアは、自分が犯した過ちに気づく。


(僕、盛大な勘違いを……ってか、エミレがプロポーズされようと、僕が別にキレる必要はなんて……)


――いや、でも。


(……嫌な思いはした。モヤモヤもした。けど、ここまでする必要はなかったはず。

 え、てかなんで、まずまず、僕、モヤモヤしてるの?)


リュドエールルさん……とシルアは、心の中で呼びかけるが、ぷいと無視される。


(――やらかした。でも、もうこの流れのままで行こう。

 ……ごめんなさい、えーとなんだっけ、なんとか爺さん?たち。)


「え、どんな依頼?

 それって、超かっこよく決まりそうなやつ?」


受付嬢のハートを射貫かんと必死に策をめぐらすエミレは、藁にもすがる思いで聞く。


「「ん~、それはやりようによるかもしれないですね。」」


「というと?」


「実は、俺の弟……ラヤのことなんだが」


突如、パヤの意識が、地上に戻る。


「「兄ちゃん!!……おかえりいい。信じてたよ、俺ら!!」」


うえーんと、ラヤとリラが、破裸痢爺(パラリヤ)復活のうれし涙を流す。


((……いや、さっき、めちゃあっさりとあきらめてたよね。君たち?))


一同が、冷めた目で感動的なシーンを流し見る。


「……ごめんけど、続けてもらっていいかな?」


エミレが、苦笑交じりに先を促す。


「「「あっはい!!それがですね。

  実は、ラヤ(俺)が!!リーゼントを落としちゃったんです!!」」」


一瞬、間が空くが、即座にエミレが聞きなおす。


「っと……それはつまりどういうことかな?」


(え、今シルアが、スパンって斬ったやつのことだよね?え、違うのかな。)


もちろん、困惑しながら。


「「「実はラヤ(俺)の真の姿はこれじゃなくて、リーゼントが2本ある姿なんです。

  それで、この間、ラヤ(俺)が、1本どこかに落としちゃったみたいで……

  一緒にリーゼントを探してほしいんです。」」」


(え、真の姿って、チョー気になるんだけど。なに、リーゼント2本ってどうやって頭に収まるんだよ。)


再び、空気は斜め上に行きながらも、即座にエミレが軌道修正する。


「ただの物探しなら、わざわざギルドに依頼する必要ってないよね?」


「「「そこなんです。」

  それが……もしかしたら、迷宮(ダンジョン)に落としたかもしれなくて」」


迷宮(ダンジョン)って――貴方たちはバカなんじゃないですか!?」


誰よりも早く、その言葉に反応したのは受付嬢。

先ほどのドライアイスのような態度を一変させ、その顔には動揺がにじんでいた。


と同時に、ほかの冒険者たちも騒ぎ出す。


迷宮(ダンジョン)って……」

「ああ、俺らでも早々いかない、魔物のたまり場だぞ」

「最近は、教会のおかげでその数も減ってきているといわれてはいるが……」


「それは本当に、ギルドに依頼してまで行く必要があるものなんですか?」


受付嬢が、鋭く質問をする。

すると、一気に冒険者たちの試すような視線が、破裸痢爺(パラリヤ)へと集まる。


「「「で、でも俺たちにとって大事なものなんです……!!」」」


破裸痢爺(パラリヤ)は、その雰囲気に気圧されつつも、先ほどとは打って変わってはっきりと答える。

その瞳には、髪を切り取られてもなお残る、信念があった。


「ならいいよ」


蜘蛛の糸の様に、すっと落ちてくる声。


「私たちが、その依頼、受けて立とう。」


その声の主――エミレは、にこやかに続ける。


「だって、もし、そのリーゼントついでに、

迷宮(ダンジョン)でなんか強そうなの取ってくれば!!

 覇者としての顔も立つしね!」


……あと、おねえさんのハートも欲しいしと、裏の声が聞こえたのは、言及しないでおこう。


「あ、あと、私たち、高いからね?

 報酬はたんまりともらうよ。」


「「「ありがとうございます!!では――」」」


破裸痢爺(パラリヤ)が深々とお辞儀をしようとした瞬間、


「交渉成立したなら、とっとと、依頼契約の書類かいてください。」


これ以上、ギルドで騒がしくされるのも困るので、と受付嬢は紙を突き出す。


破裸痢爺(パラリヤ)たちが契約書類を書いている間に、受付嬢はちらりとエミレを見る。


「危険って言いましたからね、死んでも知りませんよ。」


その言葉は相変わらずトゲトゲしかったが、その声色には心配が滲んでいた。


「もちろんだよ。ね、シルア?」


「ああ、初めての依頼、危険だらけの方が、覇者らしいもんな」


「お、シルア、覇者を目指すものらしくなってきたんじゃない?」


そんなエミレの指摘に、シルアはうるさい……と反発しつつも、内心誇らしく思っていた。


「……エミレ、初任務。がんばろうな」


「ふふ、もちろん!このしがなき覇者にまかせなさいな!」


そんなこんなで始まった、謎の裸3人衆破裸痢爺(パラリヤ)との迷宮(ダンジョン)落とし物探し。

――ほんの少し感じた違和感が、命取りになるなんて、この時思いもしなかった。


挿絵(By みてみん)

読んでくださって本当にありがとうございます!

どうも、みてみんの挿絵ができなくて半泣きしてた画伯ルアンです!


そして…300PV記念突破!と思ったら、今見たら400PV超えてて、はわわしてます。本当にありがとうございます…!感謝しかない!


さてさて今回、記念に描いたのは…

破裸痢爺(パラリヤ)三兄弟の三男・痢爺を、30分で描くという謎企画(笑)←下手ですまぬw

「普通エミレとシルア描けよ!」という声、聞こえます。でもルアンは描かないよ〜おほほ。

(実は素敵なイラストを依頼中ですのでお楽しみに…!ゆったりとお待ちを!)


さらに、X(Twitter)始めました!

→ @Sekai_No_Hasya で検索してね!

日常や小説情報、エミレたちの小ネタも投稿予定です!

(作者の呟きが今は多めですまぬな)


そしてそして……ついに、ドウア国編の全体像(の3割)が見えてきました!

なので、近々「第ゼロ話」的な導入編を出す予定です。ちょっとだけ未来のお話です。(ホント)

※ネタバレ苦手な方は飛ばしてね!読まなくても本編に支障はありませんのでご安心を!


ということで、今日もたくさん告知しちゃった!

次回は24日更新予定!遅め投稿かもですが、よろしくお願いします!

ではでは、また次のお話で~!またねっ(๑•̀ㅂ•́)و✧

あとがき全文はこちら↓(もしくはシリーズ一覧から飛んでね!)

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/13/

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